東出昌大&唐田えりかに大きな変革をもたらした「寝ても覚めても」

2018年9月3日 16:00

取材に応じた東出昌大と唐田えりか
取材に応じた東出昌大と唐田えりか

[映画.com ニュース] 東出昌大は、「僕の中で、かなり特別な位置にある作品」と強い思いを口にした。唐田えりかは、「この作品のおかげで、前向きになれました」と喜びをかみしめた。2人に大きな変革をもたらしたのは、濱口竜介監督の商業映画デビュー作「寝ても覚めても」だ。

芥川賞作家・柴崎友香さんの原作小説、濱口監督の存在、そして脚本と、「寝ても覚めても」は東出にとってどれも魅力的に映ったが、脚本(濱口監督と田中幸子の共同)に心を奪われた。

「原作ものを映画化するに当たって物語の要素を減らしたり、分かりやすく増やすといった改変がある中で、この映画の脚本にはものすごく興奮しました。本当に宝箱のようで、言いたいセリフがいっぱいあるし、他の人のセリフも素晴らしい。この脚本で撮るのが楽しみでした」

初めての1人2役には、どのように挑んだのだろうか。

「濱口監督が事前のワークショップで作為的な演じ分けをしないでくださいとおっしゃったんです。だから撮影中は、濱口監督の独特の演出方法もあって、タイトルもスタッフも一緒だけれど2本の作品を縫っているような、同じ撮影期間で全然違うものをやっている意識でした」

一方の唐田も、オーディションの後に脚本を読んで気持ちが一変した。

「お芝居が苦手で、できないし向いてないしといったマイナスなことばかり考えていたんです。でも、朝子がまるで自分のように感じられて、脚本に感情移入ができたのは初めてでした。結果を聞いた時はうれしさで頭が真っ白になったのと同時に、なにか変われるかもと思いました」

ヒロインへの大抜てきというプレッシャーは、「なかったです」とさらりと言ってのけるほど肝が据わっている。一方で、その素直な感情表現に初々しさをのぞかせる。

「私はただ、ずっと皆さんに甘えていました。無の状態で現場にいたんですけれど、濱口さんが言ってくださったように、周りの皆さんのお芝居をちゃんと見て聞いていたら、自分の中から出てくるものがありました。本当に皆さんが支えてくださったからです」

東出は出演作が続々と公開され、その度に自らの殻を破っているように映る。特に意識はしていないそうだが、とりわけ「寝ても覚めても」に対しては特別という言葉を何度も使うほど思い入れが強い。

「まだそしゃくし切れていない特別な位置にあるので、クランクアップの時も極限の言葉ってなんだろうと思って、この作品が完成するまで死ねませんって言ったんです。僕のフィルモグラフィの中でも、転機や仕事観といったところで大きな出発点かターニングポイントなのかは分からないですけれど、それくらい特別な作品です」

唐田にとっても、「この作品に出合っていなかったら、多分この仕事をやっていない」と言い切るほどの大きな財産となった。

「ガラッと変わりました。自分の中から出てくるという感覚が初めてだったので、この感覚をこれからも忘れずにやっていきたいとすごく思います」

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