菊地成孔、ビターテイストなW・アレンの近作は泥沼の離婚劇が原因と分析

2018年6月20日 13:00


ウッディ・アレン監督のフィルモグラフィを語った
ウッディ・アレン監督のフィルモグラフィを語った

[映画.com ニュース]ケイト・ウィンスレットウッディ・アレン監督の初タッグ作「女と男の観覧車」の公開を記念し、東京・新宿ピカデリーで開催中の特集上映で6月19日、音楽家・文筆業の菊地成孔氏、映画評論家の森直人氏によるトークイベントが行われた。

2010年以降に製作されたアレン監督の近作7作品を対象とした、公式サイトでのファン投票で1位となった「ミッドナイト・イン・パリ」が、この日上映された。菊地氏は「群像劇が巧みに描かれている作品、ノスタルジックな感じで人生はいろいろある……とか、ウッディ・アレンの作品はたくさんあるのでフォルダ分けしやすい」といい、「『ミッドナイト・イン・パリ』は、『カイロの紫のバラ』と一緒で、大きな魔法が説明されないままに出てくる。どこの時代の登場人物も、今の時代は最悪だと考えていて、全員が20年前に帰りたいと思っている話」と説明。森氏は「それがウッディ・アレンらしいシニシズムですよね」とその作風を褒め、菊地氏も「映画のバランスとして、娯楽作としてもすごくいい。場外ホームランのような作品。晩年のアレンの代表作と言われるのでは」とアカデミー賞でアレン監督が3度目の脚本賞を受賞したヒット作を絶賛した。

続いて、1950年代の米ニューヨーク、コニーアイランドの遊園地を舞台に、人妻がひょんな出会いから人生の歯車を狂わせていく姿を描いた最新作「女と男の観覧車」について菊地氏は、「『ブルージャスミン』と同じ系譜。“昔イケてた女の末路はひどい”という最近できたフォルダ(笑)」と分析。「見終わった後の苦味が半端ないけれど、ケイト・ウィンスレットの名演技が素晴らしい。どん底の生活をしていて、救いの手が現れるかも……というくすぐりがあるけれど救いがない」とプロットを紹介し、「脚本も巧みで、特にあのガキ」とヒロインの息子のおかしみのある行動を紹介した。

さらに、「ウッディ・アレンは、今ピチピチしている若い女の子を天使化して、昔ブイブイ言わせてたけど、いまちょっと落ち目になってしまった女性には冷たい。それは、ミア・ファローとの離婚劇が泥沼になったせいでは。『カイロの紫のバラ』の頃はミューズとして撮っていたけれど、泥沼の離婚劇を経て新しい作風が生まれていて、自分の恋愛や結婚、離婚を無駄にしない。それはゴダールにも似ている」と分析した。

なお、菊地、森氏のウッディ・アレンオールタイムベストは共に「マンハッタン」だそう。「ユダヤ人であることを表に打ち出した初期の作品の中のラブストーリーでは一番素晴らしい」(菊地)、「フォルダで言うと一番大きいフォルダに入る作品。長く撮っているので5年、10年と世代ごとに代表作が変わっていく映画監督」(森)とまとめた。

女と男の観覧車」は6月23日から全国公開。

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