「ボス・ベイビー」の日本人クリエイタートリオ、こだわり抜いた製作過程を明かす

2018年3月19日 18:00


キャラクターや画面に命を吹き込む作業を担当
キャラクターや画面に命を吹き込む作業を担当

[映画.com ニュース] 全世界興行収入4億9800万ドル超を記録中のアニメーション映画「ボス・ベイビー」の製作に携わったドリームワークス・アニメーションの日本人クリエイター、中村創(ライティング)、森廣康二(キャラクターリギング)、武広修(ライティング)が、それぞれの立場から舞台裏について語った。

ユニバーサル・スタジオとドリームワークス・アニメーションが初タッグを組んだ本作。パパとママ、息子ティムの3人のもとに“新しい家族”としてやってきた、大人と変わらぬ知能を持つ赤ん坊が、騒動を巻き起こすさまを描く。

森廣は、「人形劇で例えると、元の人形を作るのがモデリングといって、人形を舞台の上で動かすのをアニメーターというのですが、リギングではモデリングの人が作ったキャラクターに関節を入れたり、アニメーターの人が動かせるような状態にする仕事をしています」と解説。本作では、ティムを中心とした4キャラクターを担当したという。

一方、中村によれば「ライティングという、まさしくライトを当てる仕事をしています。もちろんライティングがメインの仕事なのですが、ライティングはデパートメントの最後の部門なんですよ。だから、色々な部門からデータがやってくるんですね。そこで最終的にレンダリング(コンピュータ上で絵を作ること)をかけるのもひとつの仕事なんです」とのこと。

「でも、必ずしもデータが綺麗にくるわけじゃなくて、大体が何かしら問題があるんですね。どこに問題があるのかを見極めて、テクニカルな部門であればテクニカルサポートの人に手伝ってもらったり、簡単なことであれば自分で直したりとか、もしくはモデリングの人に直してもらったりしてレンダリングできる形に持っていきます。レンダリングをかけた後にコンポジティングという、レンダリングしたコンピュータで作った1枚1枚のレイヤーを最終的に合わせる作業がありますが、ここ(ドリームワークス)ではそこまで含めてライティングの仕事です」(中村)と業務内容は多岐に渡る。中村と武弘は、映画の後半の舞台となるラスベガスのシーンを主に担当したという。

ドリームワークスの屋台骨を支える3人が、本作でこだわったのは、どのような部分なのか。「『ボス・ベイビー』のテーマとしては、あえて昔の2Dのアニメのような絵柄をCGでやるっていうのがあって、キャラクターに関してもシンプルだけど印象が強いようにしました。シンプルだけど絵的に印象があるっていう監督なりのこだわりを自ら注文して作業させていただいたので、そういう意識を持つようにしていました。意図しないところでシワや表面のヨレがでないように、常につるんとした感じを保ちました」(森廣)。

「普通はディレクターの方はあまりアーティスティックなインプットはせず、アートディレクターの方がするのですが、このボス・ベイビーのディレクターはライティングまですごいこだわりがあって、かなり細かいことまで指示を出してきます。そういうビジョンを我々が実現するっていうのが目標ですね」(武広)、「ライティング部門ではみんな髪の毛をこだわってやったんじゃないでしょうか。『(ボス・ベイビーは)こういう金髪がいい』というのがディレクターの中で決まっていて、例えばラスベガスに行くシーンでカラフルなネオンの光があるのですが、光に当たっても金色に光るのはあり得ない。そんな環境でも金髪に見えるようにするなど、細かいところにトリックを入れていたので、そういうところがある意味こだわりですね」(中村)。ディレクターのビジョンを理解し、自らの技術で任務を遂行する姿は、“仕事人”そのもの。3人の言葉からは、職人としての自負がにじむ。

ここまで、本作における中村、森廣、武広の仕事ぶりについて紹介してきたが、3人は“職場”としてのドリームワークスについても言及。武広は、「僕は映画の会社でVFXをやって、この会社にやってきたんですが、実写のCGだと夜中まで働くという状態がずっと続いていました。でも、この会社は遅くとも19時くらいには帰れるので、私生活と仕事のバランスがすごく取れているので働きやすいです」と労働環境の快適性について明かす。

森廣は、「ランチタイムに“フィギュアドローイング”っていう、モデルさんを呼んで1時間から2時間スケッチするっていうのが毎週あるんです。また時々、スペシャルゲストとして解剖学の専門の教授が来てレクチャーしてくれたり、直接仕事に関わらないことでも研修という形で我々に提供してくれます。だから、良い影響を受けて仕事に反映させることができるんだと思います」、中村は、「ドリームワークスはプロジェクトとプロジェクトの間に時間が空いたときは“ドリームタイム”という、色々なアーティスティックな講座を開いてくれるんです。デッサンを勉強したり、美大を出た方が講座を開いて絵画の理論を教えてくれたり、そういうのに出席して、給料の範囲内で勉強ができるんです」と語る。社名の通り、作り手の“夢”をかなえる最適な環境といえるだろう。

ボス・ベイビー」は、3月21日から全国公開。

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