欧州の少女売春の闇を描いたルーマニア人監督「報道が追求する真実が誰かを傷つけることもある」

2016年10月31日 20:15


アドリアン・シタル監督(右)と、 主演のトゥドル・アロン・イストドル
アドリアン・シタル監督(右)と、 主演のトゥドル・アロン・イストドル

[映画.com ニュース] 第29回東京国際映画祭コンペティション部門出品作「フィクサー」が10月31日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、アドリアン・シタル監督、主演のトゥドル・アロン・イストドルが会見した。

売春をしていた未成年の少女がパリからルーマニアに強制送還された。ヨーロッパにおける未成年の人身売買事件を取材するフランスのTVクルーを手伝うルーマニア人の中継者は、手柄を立てようと張り切るが、裏社会とつながった少女への面会は難航する。ルーマニア=フランス合作映画。

本作の撮影監督の実体験が基になっているそうで、「ジャーナリズムの名のもとに、真実を追求すると同時に、誰かを傷つけていることもあるという側面、そして、ルーマニアの今を描きたかった」とテーマを語るシタル監督。劇中では、スクープを狙う報道側と、つらい経験を再びカメラの前で証言させられる少女の姿が映し出される。「ジャーナリズムにおいて何が正しいのか、悪いのかは私にもはっきり言うことができません。作品のモデルになった彼も、もともとはジャーナリストを志望していましたが、少女売春の実態を目の当たりにして、映画の撮影監督に転向したのかもしれません」と自身の考えを述べた。

ヨーロッパの一流メディアの仕事に関わる責任感を持ちながらも、自国の貧しい少女たちの現状を知り、その姿を報道することに葛藤する主人公を演じたイストドルは、「自分自身でジャーナリストの仕事はどういうものかリサーチをし、主人公のモデルになった撮影監督に様々な話を聞きました。32歳という主人公と、30歳の私は年齢も近く、若くは無いが、その職業で独り立ちできるかどうかという状況も近いものがあったので共感できた」と役作りについて語った。

東京国際映画祭は11月3日まで開催。

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