「きっと、うまくいく」ラージクマール・ヒラニ監督、新作「PK」を語る

2016年10月28日 17:00


ラージクマール・ヒラニ監督
ラージクマール・ヒラニ監督

[映画.com ニュース] 日本でもロングランヒットを記録したインド映画「きっと、うまくいく」のラージクマール・ヒラニ監督と、インド映画界のスターであるアーミル・カーンの再タッグ作「PK ピーケイ」が公開する。本国インドでは「きっと、うまくいく」を超える興行成績を記録し、全米公開もされた本作について、来日したヒラニ監督に話を聞いた。

留学先のベルギーで大きな失恋を経験したジャグーは、いまは母国インドのテレビ局で働いている。そんなある日、ジャグーは、地下鉄で黄色いヘルメットを被って大きなラジカセを持ち、あらゆる宗教の装飾を身に付けてチラシを配る奇妙な男を見かける。男は「PK」と呼ばれ、神様を探しているということを知ったジャグーは、男になぜ神様を探しているのか話を聞く。

「私は子供の頃から神や宗教に興味があって、神は実際に存在するのか、宗教は人間が作ったものではないかと考えてきたので、それをもっと深く掘り下げて、伝えたかったというところから始まりました」と、本作のテーマを語る。

演劇に没頭した大学生時代から俳優を目指していたが、卒業後に編集や広告制作に転向、現在はボリウッドを代表するヒットメーカーとして知られる存在だ。「映画を作る上では、必ず笑いと涙を盛り込みます。あとは、人を魅了するようなユニークなトピックを探すようにしています。脚本には自分の経験を反映させ、そこから自分の信念が徐々に現れていくのだと思っています。私は脚本家で、監督ですが、ある意味ちょっとした活動家のような存在かもしれません」

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本作の劇中では、インドの宗教観を様々な角度から見ることができる。ユーモラスに茶化すような表現も見られるが、このように軽いタッチで神や宗教を描くのはタブーではなかったのだろうか。

「これまでの作品で脚本を書くのが一番難しい作品でした。メッセージを伝えすぎると観客を退屈させてしまうかもしれませんし、伝えすぎないと中身がなくなってしまうのでそこのバランスが難しくて、フィクションを作る限りは観客を笑わせたいという思いがあるので、こういう構成になりました。ただ、もっと宗教や神について伝えたことはたくさんあるので、フィクションではここが限界でしたが、いつかはこれに対するドキュメンタリーを作りたいと思っています。上映禁止を求める人もいましたが、ほとんどの人が映画をサポートしてくれました」

インドが誇るスーパースター、アーミル・カーンを起用した理由は“顔”だという。「子供っぽい、純粋な感じがあって、宗教や神に対する前持った知識が無いという役なので、ぴったりだと思いました。また、体を鍛えているので、脱いでも見ごたえがあります。彼自身、役者として、人間として映画で言わんとしていることを、共感できる人物なのです」

ヒラニ監督自身の宗教に対する考えを聞いた。「何か神に名前をつけるとしたら、私は自然だと答えます。虫や動物や植物や魚と同じように、人間は自然から生まれてきて、自然に戻るものだと思っています。ですから、天国や地獄、輪廻転生というのは人間が死んでいくという事実を受け入れられないので、作り上げられた話だと考えます。動物でそのようなことはあまり言いませんよね。ねずみが天国に行くか地獄に行くかなどとは。そういうことは人間が作り上げたこと。だから宗教ごとに、概念が違ってくるのであって、神が我々の上に立って、判断しているのではなく、我々がこの中にいる自然そのものが神なのではないかと感じています」

きっと、うまくいく」「PK ピーケイ」がともに世界中でヒット。インドの現代社会を映した作品でも共感を得られた理由を、どのように捉えているのだろうか。

「やはり、自分の生活がスクリーン上に反映されていると感じると共感できるのと、あとは何か新しい考え方とか、新しいセオリーや生き方など、新鮮なものが目の前に映し出されると、人々は興味を持つのではないかと思います。『きっと、うまくいく』が成功したのは、教育で重圧を感じているような国ですね。中国が良い例でした。『PK』も、同じようになぜ自分がこの世にいるのか、神は何なのか、と考えさせられる作品なので、世界中で受け入れられているのかなと思います。これは僕の推測で、確かなものではありませんが」

「PK ピーケイ」は、10月29日全国公開。

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