「ロイヤル・ナイト」監督が語る、英国王女の“夏の夜の夢”のような一夜

2016年6月3日 20:00


メガホンをとったジュリアン・ジャロルド監督
メガホンをとったジュリアン・ジャロルド監督

[映画.com ニュース] 4月に90歳の誕生日を迎え、英国史上最高齢・最長在位の君主となったエリザベス女王。国民から愛され続けるクイーンが、19歳のプリンセス時代に体験した最初で最後のお忍びの一夜を描いた映画「ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出」が6月4日に公開される。メガホンをとったジュリアン・ジャロルド監督が、映画.comのインタビューに応じた。

脚本家のトレバー・デ・シルバから題材となるエピソードを聞いた時、ジャロルド監督は実際に起きた出来事だとは信じられなかったが、「ウインザー家として育った王女が戦勝記念日の夜というクレイジーな日に外出することはコメディとしても面白い」と思ったという。魅力あふれる物語の中で、「戦争が終わり、自分たちの生活を作り直していこうという、ある種の楽観的な感覚の始まり」や「マジカルで何でもありな“真夏の夜の夢”の感じ」も描きたかったと明かす。

1945年5月8日、ヨーロッパ戦勝記念日の夜。19歳のエリザベス王女は妹マーガレットとともにお忍びで外出し、長かった戦争の終わりを国民たちと祝福することを許された。ところがマーガレットがお付きの目を盗んで街に繰り出してしまい、その後を追ったエリザベスは、ある秘密を抱えた空軍兵ジャックと出会う。庶民が肩を寄せ合うパブで、父である国王ジョージ6世のスピーチに耳を傾け、バッキンガム宮殿の前に押し寄せた群集の中で市井の人々の思いに触れる。

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この夜がエリザベス女王の君主としての在り方を決定付けたというのが、今作のエッセンスだ。「実際に王女たちは、ホテル・リッツでワルツを踊り、バッキンガム宮殿の外で人々と国歌を歌った。そのあとは、わからないことも多い」とジャロルド監督が明かすように、劇中では史実にインスパイアされたストーリーが展開される。「陶酔した人々がキスし合ったり、いろいろな感情がはじけた世紀の大騒ぎ」は、「王女にとってパワフルな出来事」であり、戦地で苦難を味わったジャックのような人間との出会いは、「人々の人生を垣間見るいい機会」だったと想像を膨らませる。「女王になったとき、今まで通り宮殿の中で閉じこもって生きていくのか、外に出て人々とつながる女王になるのか、どちらを選択するのか考えたでしょう」。

エリザベスを気品たっぷりに演じたのは、カナダ出身のサラ・ガドン。ジャロルド監督はバッキンガム宮殿前のシーンが特に印象的だったという。冷え込みの厳しい夜に300人のエキストラを動員しての撮影は大変だったようだが、「サラが周りを見回しながら、顔を輝かせていく。群衆が喜んでいることをエリザベスが理解した、物語のキーになるシーンでした」と語り、クライマックスのリンディホップダンスの場面での「喜びの表情も素晴らしかった」と惜しみない賛辞を送った。

ロンドンの古い街並みに、クラシカルな衣装、そしてグレンミラーサウンド。70年前の風景が再現される中で、ストーリーは現代的な視点で進んでいく。エリザベス女王が即位してから、旧態依然として保守的だった王室がかなり現代化されたと、ジャロルド監督は考えたからだ。「1945年は社会的変化があった年で、兵士が職場に戻り、国民保険など社会民主主義的なものが求められた。エリザベス王女は、群衆に飛び込んでいくことで変化を感じたのではないか。女王になったら、格式ばらずにやっていこうと思ったのではないか。映画では、現代的な感覚とともに、昔ながらの品位、公務を大事にする責任感を同時に描きました」。

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