ダニス・タノビッチ監督が語るロマ系ボスニア人の現状「90%以上が正規雇用を得られない」

2013年11月30日 13:05


ティーチインに出席した ダニス・タノビッチ監督
ティーチインに出席した ダニス・タノビッチ監督

[映画.com ニュース] 東京・有楽町で開催中の第14回東京フィルメックスで11月29日、特別招待作品「鉄くず拾いの物語」が上映され、来日したダニス・タノビッチ監督が観客とのティーチインを行った。

2013年ベルリン国際映画祭で銀熊賞など3冠に輝いた本作は、ボスニア・ヘルツェゴビナに住むロマの女性が、貧困のなか保険証がないために手術を受けることができなかったというある家族の実話を基に、当事者たちの出演により自主製作として9日間で撮り上げたドキュメンタリータッチのヒューマンドラマ。

新聞記事を読んだことがきっかけで、当事者であるロマ系一家に出演の打診をして本作を撮ったダノビッチ監督は「一種実験的な作り方をして、それが成功したと自負しています」と手ごたえを語る。そして、ロマ系ボスニア人の現状について「90%以上が正式な雇用を得ておらず、映画の主人公の鉄くず拾いのようなその日暮らしの状況です」と厳しい生活であることを観客に説明する。

劇中では、ボスニア紛争の傷跡を思わせる場面があるが、「20年も前の話になりますが、今も人々の生活の中に色濃く残っています。その理由は勝利者不在で、経済危機から脱することができず戦後復興が進まなかったこと」と描かずにはいられなかった理由を挙げる。

タノビッチ監督は「世界中の問題はお互いを理解しないことだと思う」と主張する。ベルリンで最優秀男優賞を受賞した夫役のナジフをはじめとした一家を「尊厳のある素敵な人々」と紹介し、「彼らは貧しいながらも愛情ある家庭を築いていること、そして皆が良き人間であれば悪いシステムを倒せるのではないかということを描きたかった」と作品に込めた思いを語った。

鉄くず拾いの物語」は、2014年1月11日から新宿武蔵野館ほか全国で公開。

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