溝口、小津が天才と呼んだ清水宏監督を語るシンポジウムが開催

2008年4月17日 12:00


(左から)石井克人監督、マイコ、佐藤忠男氏
(左から)石井克人監督、マイコ、佐藤忠男氏

[映画.com ニュース] 巨匠・溝口健二をして「清水君は天才です。僕や小津(安二郎)君は努力家にすぎない」と言わしめた日本映画界の隠れた巨匠・清水宏。「風の中の子供」(37)、「花形選手」(37)、「按摩と女」(38)、「簪(かんざし)」(41)など163本もの作品を残していながら、これまであまり知られることのなかった清水監督の初DVD集の発売を記念して、4月16日、東京・有楽町の東京国際フォーラムにて「“ニッポン・ルネッサンス” 昭和初期の巨匠・清水宏監督 復興」と題したシンポジウムが開催。清水監督の「按摩と女」のリメイク「山のあなた 徳市の恋」を完成させた石井克人監督(「桃尻女と鮫肌男」「茶の味」)と出演者のマイコ、映画評論家の佐藤忠男氏が出席し、清水宏の世界について語り合った。

「清水宏の再評価は非常に嬉しい」と語る佐藤氏は清水監督について「自然でリラックスした映画を作っていたが、ユーモラスでスタイリッシュなシーンも上手いテクニシャンでもあった。今でこそ多くの個人的な映画があるが、70年以上も前から、会社で個人映画を作り、わがまま勝手に自分の世界を遊んでいる人だった」と述懐。また、清水監督が隠れた巨匠になってしまった点については、「同じ松竹の小津が親子の愛情を大真面目に描いている一方で、清水は遊んで作ってるんだか、真面目に作ってるんだか分からないようなものばかり作って変人扱いされ、なんとなく忘れられたということでは」と分析していたが、「今になってみると、大会社の中で平気で遊んでいる奴っていうのはヒーローだなあ」と笑顔で振り返り、戦前の日本映画史に多大な足跡を残した巨匠を改めて讃えていた。

一方の石井監督は、今回の「按摩と女」のリメイクについて、「この映画に色がついたらどうなるんだろう?というところから始まった。稲穂の揺れるシーン、女性の襦袢の色など清水監督もカラーで見たかっただろうと思われるところをいかに再現するかが大変でした」と苦労を語り、常に色を意識して撮影したことを明かした。そして、最後には「基本的に(台詞の)イントネーションや所作に関してはオリジナルと同じなので、おじいさん、おばあさん、ひいおじいさん、ひいおばあさんをお誘いの上、見に来て頂けたら」とリメイク版をアピールして、シンポジウムを締めくくった。

清水宏監督のDVD集は「按摩と女」「簪」を含む第1集が、4月25日に発売され、6月27日には第2集が発売予定。また、石井克人監督による「按摩と女」のリメイク「山のあなた 徳市の恋」は5月24日より全国ロードショーとなる。

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