劇場公開日 2023年8月25日

  • 予告編を見る

エリザベート 1878のレビュー・感想・評価

全42件中、41~42件目を表示

4.0シシィを自由にしてあげた映画!

2023年8月25日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

悲しい

楽しい

声は再現されないとカメラマンから聞いたから、(多分)罵り言葉を叫んでジャンプして沢山動いている自分を撮影させたモノクロ動画の中のシシィが愛しい。シシィという愛称にも彼女はうんざりしていたかもしれない。お土産物で映画でミュージカルで博物館で、そして今もストリーミングで消費し尽くされ続けているエリザベート。ハイネを尊敬し詩を書き文学を愛し運動神経に恵まれ外国語習得能力が高く、いとこであるルートヴィヒⅡ世は心の友、そもそもが野生児でお転婆でワイルドでエネルギッシュで知的なエリザベート。その天分が生かされず飼い殺しの見世物状態、何のための人生かと誰が思っても不思議でない。

当時の平民女性の平均寿命は40才だとシシィの主治医は言った。拒食で過度な運動をしてひたすらウィーンから離れる旅を続け、スイスのレマン湖畔で本来のターゲットでなかったにも関わらずエリザベートは暗殺された。60才で。この映画を彼女が見たら笑って喜んだと思う。思う存分泳ぎ馬に乗り、大好きなケーキを食べ、人前でお構いなく煙草を吸い、失神する演技をするお茶目、そんな笑顔の彼女は自由で心から幸せそうだ。

シシィを演じた女優を見て思ったが、ヨーロッパの俳優には色んな側面があって普段の顔もあることを自然に示すから面白い。ハリウッドの女優は皆が24時間「ザ・女優」業をしてます!に見える。

この映画は「バービー」同様、監督は女性で主演女性が製作に入っている。軽やかで自由で音楽がいいし、楽しんで映画を作ったんだろうなと思った。

コメントする 6件)
共感した! 18件)
talisman

5.0外は白鳥、内は虎

2023年8月25日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

40才という設定が絶妙!
「同じでいること」に相当努力が必要となってくるお年頃です。
たとえば暴飲暴食をして体重が増えても、1〜2日節制すれば元に戻っていた筈が…
暴飲暴食をしなくても体重が増えていくのが40才。
確実に代謝が悪くなっているので、今までと同じカロリーを摂っていてはダメ。
つまり“同じ”を保つ為には、これまでと同じことをしていてはダメになってくるお年頃なのです。
見られることが商売ではない私なんかは、抗わずに老いを受け入れておりますが。暴飲暴食最高!笑
エリザベートのように、国の広告塔として美しさを外交に利用している立場としては、美しくなくなる=存在価値が無くなるという恐ろしいことに…
は、なりません!

我らがエリザベート1878は、ムカついてます。
中指立ててファッキューです。
“美しさよ永遠なれ”なんじゃそりゃ?
美しさを褒めるしか能のない奴らとは話す価値ナシ!
でも、老いたと思われるのも癪にさわるし、政治の話しができないと思われているのにも腹が立つ。
みんなおべっか使いの嘘つきばかりで、自分の美しさがまだ保てているのかどうかすらわからなくなるから、本心しか言えない相手を探すしかない。

物語のキーとなる挿入歌が、いちいちかっこ良いです!
言葉にしないエリザベートの苛立ちや憤りが伝わるうえに、伏線にもなっています。

伏線と言えば…試写会に参加された方のなかには、舞台ミュージカルのエリザベートのファンも多いようでしたが、私にとってのエリザベートはビスコンティ監督の『ルードウィヒ 神々の黄昏』なのです!
騎乗の姿も麗しい。
あの映画の中では、ルードウィヒの一番の理解者であり同類。唯一彼が渇望した存在として描かれていましたが、本作はそのイメージをエリザベート側から更に強く裏づけてくれました。
少ないセリフのやり取りですが、濃厚で痺れます。

ビッキー・クリープスが流石の演技で、国王との心のすれ違いが本当に辛い。
双方の気持ちが理解できる丁寧な心理描写に心が痛かったです。
レモンティーとウィンナコーヒー(?)も対照的。

お衣装に調度類に建物にうっとりして、見どころ満載。

でも一番の見どころは、全てを自分でコントロールして完全なる自由を手に入れた瞬間の清々しさ!!
外では白鳥。内では虎。
女性に外見しか求めない奴らへの復讐。
見事に欺いた後には、誰にも手の届かないところで得意げに語る彼女がいる。

コメントする 4件)
共感した! 7件)
shiron