劇場公開日 2023年12月15日

ポトフ 美食家と料理人のレビュー・感想・評価

全95件中、61~80件目を表示

5.0流麗カメラによる圧巻映像を堪能

2023年12月20日
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鑑賞方法:映画館

興奮

知的

 これぞ映画です! 映画の持てる利点をフル活用、めくるめく映像体験を静逸に仕上げたトラン・アン・ユン監督は流石の名匠である事を証明した。彼のそぎ落とした流儀をわきまえた撮影監督のジョナタン・リケブールがまた圧巻です。

 冒頭の30分に及ぶ調理のシーン。無理に無理を重ねたノーカットではないけれど、人物の動きに寄り添い複数の人物に次々と乗り換え追うカメラ。人物から料理へ、鍋の中まで覗き込むスムースな移動撮影。しかもカメラマンが追う事による画面ブレが一切ないのが驚愕です。多分、一挙の撮影の上で無駄な余白はカットしたのでしょう、あの調理場の中だけで30分を費やす暴挙をやってのけ、それが映画的カタルシスまで昇華しているのですから凄いとしか言いようがありません。

 この方の前作を調べましたらなんとフランス版「キャメラを止めるな!」の撮影をなさっていたとか、あの地獄の撮影が本作で実を結んだと言って構わないでしょう。しかしそれにしても湯気でカメラが曇らないのも素晴らしく、食材の色彩の変化、調理の音、食器の音、外から聞こえる鳥の鳴き声までも収める。しかも19世紀末の設定で照明も最小限に絞った自然のまま。

 なによりキッチンのど真ん中に鎮座する巨大なテーブル然とした何口もあるコンロ? あの分厚い鉄板の下は薪?石炭? あの全面が熱いのか丸く印のある所のみが熱くなるのか? まるで分かりません。少なくとも日本の「かまど」とは大分様相が違いますね。いずれにしましても変な例えですが、日本の部屋毎暖房に対し、欧米ではセントラルヒーティングの贅沢と一緒ですね。

 対する役者さんも凄い意気込みで感服です。ジュリエット・ビノシュはもちろん、超イケメンも老けてしまったブノワ・マジメルもフランスを代表する大スター。普段はきっとあんな料理をいつも召し上がっているのでしょうが、ここでは調理する側に挑戦です。一歩間違えれば大火傷やケガのリスクを乗り越えての役者魂には感動すらしてしまいます。そしてさらに美少女が機敏に調理のサポートをする、「青いパパイヤの香り」の無垢な少女を否応なく連想させる。セリフは最小限で、総ては料理に奉仕のスタンスだからこそ成し得た領域でしょう。

 お話はなんてことなく、美食家の神髄極めに尽きますが、ラストで圧巻のカメラの回転(パン)撮影により、主人公2人の結びつきに収斂させる技は素晴らしい。多分貴族の末裔なのか、大金持ちなのは確かで、領土内の菜園やら家畜を抱え、自然の恵みを最大限に活かす。まるで素材と対話するが如く。その自然の命を頂く人間の崇高なまでの探求心こそが本作のテーマでしょう。

 ソースを一口味見して、その沢山の素材から調味料までも言い当てるなんざ人間業とは思えない。よく言いますよね「日本人の繊細な舌に・・」なんて言う日本人の優越感をくすぐる低能な表現。フランス人の極めもとんでもないレベルなんです、ワインやらシャンパンへの蘊蓄も日本人の理解を超えている。すなわちどんな民族でもそれぞれの味覚を有する当たり前を、受け入れリスペクトしたいものです。

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クニオ

4.0絵画みたいな映画

2023年12月20日
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鑑賞方法:映画館

美しかった。傑作!
「静謐」という言葉を思い浮かべながら鑑賞。
光とフレームが、絵画みたいでした。
ひとつひとつのシーンに見惚れる感じ。
冒頭、畑から食材を取り、丁寧な下拵えから調理までの一連を約20分。
観ながら「腹が減った」となる、快感を伴う怒りと焦燥と欲望。
その調理作業の姿すら美しい。

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コージィ日本犬

4.5食と人生の悦び

2023年12月20日
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鑑賞方法:映画館

食と人生の悦び、そして喪失と回復(の予感)を美しい映像で描き切った作品だった。
冒頭のシーンから4人でまるでダンスするように料理し、映像からもゲストたちの表情からもその愉悦と官能を堪能できる。上映時間長いなと、見る前は思ったがこれならいつまでも観ていたい。
その官能はウージェニーのための食事のシーンで最高潮に。洋梨のコンポートの官能的な様といったら…(パンフで見たら「ベル・エレーヌ」という料理でした…)
まだ幼いポーリーンの美しさにも恐れ入ったが、ジュリエット・ビノシュはもう神懸かってましたね。女性の美を若さばかりに求めないフランスの面目躍如、って感じ。
あと素晴らしかったのが撮影で、現代化されていないフランスの光景はとにかく美しいし、料理や屋内のシーンは被写界深度をごく浅くして回りを美しくボカしているにも関わらず、その都度必要なところにビシッとピンが決まってて技術的にも素晴らしかった。
コレもっと宣伝して広く観て貰うべき傑作だった。お薦め。

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ぱんちょ

2.5料理は爆発💥だ‼️

2023年12月19日
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悲しい

単純

寝られる

料理は芸術なんだろうけど…
20年間ひとつ屋根の下で暮らした料理人(女性)と美食家(男性)の話
料理はとても美味しそうで、食べたくなるんだけど、下ごしらえをあそこまで撮るのは…
折角料理人と美食家は結ばれるのだが、料理人が…
絶望に苦悩する美食家は、料理人との一緒に過ごした時間を忘れる為に…
料理は奥が深いな〰️とは感じたが、だからなに❔と最後もよくわからん😵🌀終わり方 ポトフは食べて〰️

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ろくさん

3.5洋梨とジュリエットビノッシュのオシリ

2023年12月19日
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それにつきる
ラ·フランスよ
だが、それだけじゃ身も蓋もない。
かつては本物の夫婦だった彼らが演じた濃厚ソースドラマ。
冒頭から、魚の肝をソテーにして、アラを野菜とともに煮詰めて、何度もグリルにいれる仔牛肉にかけるソース。
コテコテやん。
ちょっと食傷気味に
ジュリエットビノッシュは背中とオシリ健在でした。
ジュリエットビノッシュはいつまでたっても夏の女でシュ。

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カールⅢ世

3.5東洋思想とフランス流ガストロミが融合した奇妙な味わい

2023年12月19日
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エスコフィエが38歳、というセリフが出てくるので1884年か1885年の設定ということが分かる。
清仏戦争がありベトナムがフランスに割譲された頃。ひょっとしたらトラン・アン・ユンは意図してこのセリフをはめ込んだのかもしれない。
冒頭、延々と美食家と料理人が友人たちとの午餐のための料理をするシーンが続く。スープからデザートまでコース一式が出てくる。場内ではいびきかいてる人もいたし後でロビーでそこが長いって文句を言ってる人もいたけどここは料理の個性というか思想を紹介しようとしているところなので映画の肝になりますね。ただ年代的には当然なのだけど、彼らの料理はトラディショナルなフランス料理の範疇で、バター、クリームとフォンを多用した重厚なものであることは変わりはない。新鮮な野菜をドッサリ使っているところとフォンが魚ベースであるところが魅力なのかな。
ユーラシア皇太子(これがどこの人なのかよく分からない。モンゴル人っぽいから中央ユーラシアのウズベキスタンとかトルメキスタンあたりか?)のお招きのメニューのバルザック流というか満漢全席のえげつないものに比べればモダンなんだけど。ちなみにユーラシア皇太子にポトフを供するプランは料理人が死んだので実現しません。もしやってたらちゃぶ台ひっくり返されていたかも。
美食家が最後の方で、自分の料理について、言葉で説明をします。これが調和に重きをおく東洋的な思想に彩られているようでした。最後の「料理人か妻か」っていう問いも禅問答みたいですね。
ヨーロッパでは絵とか音楽が19世紀末に東洋の影響を受けたことは確かです。でも料理までそのような流れがあったのかどうか。多分にトラン・アン・ユンの創作によるものとは思いますが。そういう意味では、この映画は「バベットの晩餐会」や「ショコラ」のようなガストロミ(食文化)系というよりは「ディーバ」とか「キッス・オブ・ドラゴン」などと同じフランスを舞台とした東洋趣味の作品だと思うのです。(長々書きましたが私は嫌いではありません)

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あんちゃん

4.0料理は文化だ、芸術だ

2023年12月19日
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鑑賞方法:映画館

大半が調理シーンとそれを食べるシーンというユニークな映画だが、十分に楽しめた。ワンカットで丁寧に描かれる調理シーンに関心を持てるかどうかで、評価は左右されるだろう。ストーリーはシンプル。「ポトフ」という題名から誰もが予想する展開は、肩透かしをくうので減点。
光と影の屋内シーン、たまに挟まれる屋外シーンの美しさには魅了された(監督は「青いパパイヤの香り」のトラン・アン・ユン)。ブノワ・マジメルが魅力的だった。

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ファランドル

3.5料理愛

2023年12月19日
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幸せ

寝られる

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マリエル

2.5妻?料理人?ポワール?

2023年12月19日
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悲しい

単純

幸せ

19世紀末のフランスの田舎町で女性天才料理人のウージェニーと共に暮らす美食家のドダンの話。

使用人のヴィオレタが連れてきた少女ポーリーヌの資質がなんちゃら言いながらコース料理の調理と食事の様子から始まって行くけれど、なんだか料理のシーンが長い。

その後も突然具合が悪くなりつつも料理を続けるウージェニーとか、ユーラシア皇太子の晩餐会招待とかみせていくけれど、やはり一つ一つのシーンが長かったり、そもそもこれいりますか?なシーンがあったり。

いよいよポトフまでも非常に長いし、と思っていたら、あっという間に…。

ストーリー自体は悪くないけれど全体的に長くて冗長気味だし、最後はそんな中途半端な…。

もう30分短くて良かったかな。

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Bacchus

4.0映画はいいが、タイトルで誤解する

2023年12月18日
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鑑賞方法:映画館

序盤は少ない情報、少ないセリフ、冗長とも取れる長回し…、これが中盤以降の山場への下ごしらえなのかなと思いました。

2人の愛の絆を凛とした空間で描いていて、邦画にありがちな哀しいシーンでのドアップや号泣など一切なく、うるうるもの。

引っかかるのは原題でもあるポトフ、観客は当然最後にポトフ作りでもうひと山あると期待するのに、回顧的なシーンで終わったときはポトフはどこと探してしまう(笑)
冷静に考えれば十分だったのだが、そこだけ減点。

他の方も書いてたが、ポーリーニが後半で(ポトフ作りで)輝いていたら。

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JAG

3.0寝落ち……

2023年12月18日
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予備知識ほぼゼロでしたし、劇場の静けさやほんのちょっぴりの暖かさが加わったし……
言い訳ばかりになりますが、冒頭部分寝落ちしてしまいました。
その結果、時代背景や主人公二人の置かれている社会的な地位を理解できず、それなのに眼に飛び込んでくる映像は極上の美味であることをビンビンと伝えてくる。
でも、でもですよ、きっとあの二人は有り余る予算を料理にかけられているはず。だとしたら美味しくって目に麗しくって当り前じゃないの!
ウージェニーがこの世を去ってからあれだけ沈み込んでいたドダンがやる気をもたげてきたモチベーションは何だった?
なんて、自分が寝てしまって観られなかったくせにちょっとスネてみました。

フランスを舞台に、民間初のレストランを創り上げた「デリシュ!」の爽快感とは全く異なる作品ですが、ワタシの個人的好みはデリシュだなぁ。

それはそうと、コロナ以後、撮影の問題や俳優組合のストなども影響しているのか、ハリウッド作品を鑑賞する機会が減って、フランス映画やインド、中東地域のものを目にすることが増えたのは寂しい反面自分の視野が広がった気もして嬉しい事なのかもしれませんね。

さあて、来年も(まだ今年ももう少しあるけれど)映画にドキドキ・ワクワクしようっと🎵

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ニコラス

4.0美しく、優しい映画。

2023年12月17日
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暇があれば、食べ物のことばかり考えている私には、至福の映画。調理シーンは飽きないし、無駄な音楽はなく、小鳥のさえずりのほかは、食器や調理器具がカチャカチャと触れ合う音のみ。映像も美しかったー、さすが、トランアンユン監督。

料理って、日常であり、愛情だなぁとしみじみ。
ラストシーンのカットも素敵でした(涙)

羨ましすぎる広ーいキッチン、窓の外に広がる自然、大きな鍋、大きなおたま、新鮮な食材、水や油を派手に飛び散らせながら作る料理、一度やってみたい!

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Sakiko

4.0香る画、音。

2023年12月17日
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泣ける

知的

幸せ

今にも香ってきそうな芳醇な画と音に包まれる2時間。
寡言であってもひしひしと、確かに感じる二人の親愛と信頼の情。
「無邪気な夏と堅実な冬、その間が人生の秋」というような台詞が特に印象に残る。

23' No.124

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Marlowe

3.0皇太子を迎えることがメインかと思った…

2023年12月17日
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料理で結ばれたふたり、ただひたすらそれだけの流れだった…。料理作って、食べて、愛を確かめ合って。料理見習いとか友人達とかいろいろ登場するけど描き方が淡いからのめり込めず…ただ、料理や草木は美しかった?

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peanuts

4.0わたしはあなたの妻?それとも料理人?

2023年12月17日
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美味しいものが分かるだけでなく、料理が作れてワインに詳しくて、言葉で表現するのに長けて、営業的政治もできる。それが美食家。

美食家と料理人の関係ってプロデューサーとディレクターに似てる。お互いをリスペクトしつつ、お互いを補完し合う。まさにパートナー。

料理シーンはワンカット、bgmの音楽もなし。料理の音と自然の音が背景として映画を引き立ててる。
美しい自然の中のお城で、探究心のままに料理を考案し、作り、食べる。そんな幸せな時間をただただ眺めていられる。

「人は持ってるものを求め続けることが幸福なんだ」
「わたしはあなたの妻?それとも料理人?」
「料理人さ」
最後の回想で流れてきたこの会話がずっと頭にこびり付いてる。パートナーとしての最高の関係を崩したくない、一方でそれを超えた関係を望む。その両方を求めたくなる相手といれることが幸せなんだろう。

物語的には、もう少しポーリーを引き立てたり、ストーリーを設けても良かったのではって思うけど
この料理の数々が観れただけで満足です。

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ひろみちゃん

3.5既に持っている物を求め続けるのが幸福

2023年12月17日
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登場する料理がどれもこれもあまりにも美味しそうなので、途中からストーリーがどうでもよくなりかけたが、最後の一言でやられた!

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ひろちゃんのカレシ

2.5罪作りな映画だ。観客は見ているだけで食べられない

2023年12月17日
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 正直な私の感想。延々と美味しい料理が作られる描写の連続で、私は2回眠ってしまった。それで、ユーラシア大陸皇太子に招待された晩餐会を見ていない。その他重要な場面があったかもしれない。しかし、人間によるドラマ部分が少なくて感動することが出来ない。この監督は描いていない部分は、想像してくださいと言っているみたいだ。まぁ、そんな作り方があってもいいと思う。わかる人はカンヌ国際映画祭で監督賞も納得だろう。だが、私みたいな凡人には理解できない。

 映画ではフランス人のフランス料理に対するプライドを感じる。私は年に片手ぐらいしかフランス料理を食べる機会がない。この映画の料理を監修したピエール・ガニェールは食べたことがあり、えらい繊細な味だった。ディナー3人で料金は15万円くらいだった。

 20年間も求婚しながら、何故拒み続けるのか。また、なぜ受け入れたのか。最期に美食家は妻ではなく料理人だと発言するのか。考えると面白いかもしれないが、見ているだけで美味しい料理が食べられないなんて、罪作りな映画だと思う。よって、0.5減点した。ちなみに、今日は二本の映画のハシゴで、昼食はセブン・イレブンで買ったおにぎりだ。減点は仕方がないと思う。

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いなかびと

5.0料理は芸術であることを教えてくれた作品

2023年12月17日
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知的

幸せ

東京国際映画祭でも公開されたが、映画館で実際観ルト素晴らしかった。
料理は芸術であると教えてくれたし、フランス料理の奥深さを知った。
ストーリーも見事だし、文句なし。
来年のアカデミー賞外国語作品賞候補に入るのではと言われているが、まず候補作になる。
日本映画PERFECTDAYにとっては強敵だろう。
今年ももうすぐ終わるが、2023年ベスト映画作品候補に入れてもおかしくない作品。

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ナベウーロンティー

3.5美食は

2023年12月17日
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ごっとん

4.0食は糧、美食は享楽、そして生甲斐

2023年12月17日
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泣ける

楽しい

知的

舞台は19世紀末のフランスのシャトー。
主人の『ドダン(ブノワ・マジメル)』は名だたる美食家。

それも単に食べるだけではなく、自身でレシピも考案、
下ごしらえや調理にも参加。

そんな彼を支えるのは、天才料理人の『ウージェニー(ジュリエット・ビノシュ)』。
屋敷に住み込み、彼とその美食仲間のために腕をふるう。

二人は美食を仲立ちとした良きパートナーに加えて恋人同士。
しかし、二十年に渡る長い付き合いにもかかわらず『ウージェニー』は
『ドダン』の求婚を受け入れようとはしない。

冒頭三十分の厨房内でのシークエンスが兎に角、圧巻。
声掛けは最小限、なのに絶妙のチームワークで
流れるように料理が次々と出来上がる。
以心伝心とはこのこと。

スクリーンを通して観ているだけなのに、
香りが漂い、食感までもが伝わって来そう。
まさに垂涎。

それにしても、とりわけ西洋料理は体力勝負と
改めて痛感させられる。
知り合いの料理店のシェフが「身体がきつくなった」と、
引退を決意したのも良く判る。

『ドダン』の名声は「ガストロノミー」として国内に鳴り響き、
ある日「ユーラシア皇太子」から晩餐会への招待を受け
美食仲間とともに参加。

しかし、彼はその内容に満足をせず
(ここでの宮廷付きの料理人を
本作の料理監修もしている『ピエール・ガニェール』が
演じているのは笑える)、
逆に皇太子を自身のシャトーに招き、
田舎料理の「ポトフ」をメインにもてなそうとする。

が、ここで悲劇は起きる。
示唆されてはいたものの、あまりに唐突に。

『ドダン』の美食家としての名声は、
単に美味しいものを食べる機会が多く、且つ健啖なことが理由ではない。

なぜに美味しいか、美味しくないのかを
科学的に、時として芸術的に
他の人が聞いても理解できるよう言語化できるから。

ため、料理を音楽や美術の域に高めたと評され、
多くからの敬愛も受ける。

失意の『ドダン』を救うのは
一つには美食仲間の友情、
そしてもう一つは、尽きぬ食への執念。

傍目には、それで悲しみが癒えるの?とは思えるが、
ラストシーンは原題にもある「情熱」に収斂させる流れは鮮やか。

自分が観た『トラン・アン・ユン』の監督作は
(勿論、脚本も彼自身だが)、
熱さを内に秘めつつ、重要な場面の描写はあくまでも静謐。

それは本作でもきっちり踏襲されている。

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ジュン一