劇場公開日 2023年2月10日

  • 予告編を見る

対峙のレビュー・感想・評価

全87件中、21~40件目を表示

4.5深刻で、濃密で、圧倒的な会話劇

2023年3月10日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

俳優のフラン・クランツが脚本を兼務した初監督作品…とのこと。
ちょっと、驚きの作品である。

とにかく、会話。
2組の夫婦による会話が延々と繰り広げられる。
加害者の両親と被害者の両親が「対峙」する物語であることを事前に知っていても、事件の内容や当事者の状況などは4人の会話を追っていかないと見えてこない。
説明的な台詞は一切なく、最初はどちらが加害者側かすら判らない。

一方から子供との思い出を話してくれと言われ、「なぜ?」と相手側が尋ね返すと、その妻が「ウチの子を殺したからよ!」と語気を荒げて言う。
静かに始まったこの映画で、最初に緊張が走る場面だ。
序盤、2組の夫婦と夫婦の間で、あるいはそれぞれの夫と妻の間で、牽制しあうような会話が展開し、それだけでは意味を理解できない。
そして、前述の会話の後、親たちの悲痛な体験が徐々に明かされていく。

狭い部屋の中で、基本的に4人はテーブルを挟んで対峙しているが、被害者側の夫がテーブルを回り込んで加害者側夫婦の後ろで水を飲んだり、その妻が部屋の端に寄せてある椅子に移動したりする小さな動きを計算されたカメラワークで捉え、4人の演者の表情を丁寧に構図を変えながら映し出す。会話劇を緊迫したサスペンスに仕立て上げる演出が上手い。

このリアルな脚本には何か下敷きがあったのだろうか…
この会話の内容も会談の成り行きも、簡単には思いつきそうにない。

当然、被害者側が「攻め」で加害者側が「受け」の体勢だ。
最初は妻を制しながら冷静に慎重に会話を進めていた被害者側の夫だが、糾弾するためにこの会談の場を持った訳ではなかったのに、相手の煮え切らなさに激昂してしまう。
それは、そうだろう。加害者本人ではないとはいえ、その両親なのだ。なぜ、事件に発展する前に手を打てなかったのか、糾弾せざるを得ないはずだ。
加害者側の夫には、少し不誠実な態度に見えるときがある。
それも、そうかもしれない。開き直った訳ではないが、相手に何を言っても言い訳にすらならないことが解っている。問われたことに淡々と事実を応えるしかないのだ。ただ、彼ら夫婦も我が子を愛していたことは伝えずには終われない。それが、被害者遺族を逆撫ですることになったとしても…。

「なぜ、息子は死ななければならなかったのか」
実際の事件や事故でも、被害者遺族がしばしば訴えかける言葉だ。
「真相を明らかにしたい」
「二度と同じ不幸を起こさせないために」

この迫真の会話劇にズルズルと引き込まれていきながら、終わりが全く想像できないでいた。
最後にこの2組の夫婦はどうやって別れるのだろうか…。
被害者側が「赦す」しか、終わらせる方法はないだろう。

そして、とうとう驚くべき終局を迎える。

この物語を作るにあたり、どうやって赦すのかが重要点だったはずだ。
そして、被害者の母親が出した結論は、誰にでも出せるものではないように思う。
神を信仰する者だからか、あるいは長い期間悲しみぬいたからなのか、仮に同じ経験をした人がいたとしても同じ結論に達するとは思えない。
この被害者の父母夫妻は、はじめからこの結論を目指してこの会談に挑んだのだろう。その目的がなければ、あのテーブルにはつけないだろうから。
だが、この夫婦は用意した結論にたどり着いたように見えて、我々には釈然としないモヤモヤが残る。
この映画は、そんな観客のモヤモヤに最後の最後に強烈なカウンターを浴びせ、カタルシスをもたらす。
彼らが顔を会わせた最初に、加害者の母親が被害者の母親に鉢植えを贈る。これが最後にキーアイテムになるのも見事だ。

赦すことは難しい。
だが、人の親なら、あの加害者の母親を責めることができるだろうか。

コメントする 2件)
共感した! 12件)
kazz

4.0絶望と憎しみの先に微かな光が見えた気がした

2023年3月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

高校銃乱射事件の被害者の両親と加害者の両親による密室での対話劇。

何れも命がある限り救われることはない。
その苦しみから逃れられることはない。

「許す」という言葉を発することで何かが変わるのか、前に進めるのか、それさえも定かではない。

観る我々はただただ彼らと苦しみを共有することとなる。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
エロくそチキン2

4.0期待通り!

2023年3月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

そんな対峙が実際にあったのかどうか知りませんが、あったとしたらこんな感じ?と具体的にイメージできていたわけではないのですが、ぎこちなくもああそうか、人は人を責めるよりも赦せることができればその方が幸せ、人は相手から何かを引き出すよりも自分のことを聴いてほしいものなのだということが改めて確認できたような気がする。
前座みたいに場所を貸す人・対峙のコーディネーターの人が段取りを打ち合わせしていたけど、そういう善意の人の何気ない準備ってやっぱり大事。
設定は映画というより演劇空間。集中して入っていけました。
キャスティング、リアリティーすごい!

コメントする (0件)
共感した! 2件)
Kumiko21

4.0I forgive you

2023年3月4日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

劇場の空気がずっとピーンと張り詰めていた。
疲れた……。
けど、事件の全ぼうを知った今、もう一度観てみたい。

ピンクテープ……はなんなの?

テープによって、(目に見えない)空気の動きが可視化されるように、悲しみや憎しみの感情や心も、「言葉」というテープによってその激しさが伝わってくる、ということか…

最後近くのゲイル(被害者の母親)の一気の発言に息をのんだ。『今の生き方を続けられない。このままではあの子を失う…』思わず背筋が伸びた。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
night runner

4.0被害者家族と加害者家族のキリスト教的な関係性

2023年3月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2021年。フラン・クランツ監督。男子高校生による殺人事件の被害者家族と加害者家族が救いを求めて対話する様子を描いた作品。教会の一室を借りて、第三者を交えず、お互いの思いぶつけあう。
ほぼ会話だけで成り立てっている動きの少ない映画なので、論理展開が勝負。当事者の家族としてお互いに傷ついた、お互いに子どもを愛してる、というところに設置するしかないのだが、明確に被害者家族の方に寄り添っていて、加害者家族および加害者本人を「赦す」という母親の発言が、その後のすっきりした表情とともに、山場となるようなつくりになっている。
まあそうだろうだなと思いつつも、加害者家族はすっきりしていはいけないかのようなつくりに違和感が残る。加害者家族は赦されなければいけないのだろうか。または、この会合をきっかけにすっきりしていはいけないのだろうか。
教会という場所。ラストの讃美歌。神から与える一方的な「赦し」を被害者家族が加害者家族にあ耐える映画だった。キリスト教圏では自然に受け止められるのだろうか。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
文字読み

4.5亡くした子供を思って生きることの重さ

2023年3月2日
iPhoneアプリから投稿
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 4件)
ニョロ

3.5なんだか微妙にピントが外れている教会の職員

2023年3月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 3件)
北枕寝二

3.5提案者は何者?その意図と勝算は?

2023年2月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

鑑賞前から大まかな内容は知って予想はしていたのだけど、予想を上回るド直球の超真面目映画でした。
しかしこれが日本の場合成立するのかなぁ~。いや、日本の場合というより現実的に成立するのかどうか、想像しようとしても頭の中で全くシミュレーション出来ません。
あくまでも、個々の性格的要素が大きく影響するので、本作の様なエンディングの確率は何万分の1の様な気もするのだが、それでもあの教会の施設の一室の様な場を日本に置き換えようとしてもイメージが湧かず、ひょっとしたらああいう場で奇跡は置き得るのかも知れないという気にも少しなりました。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
シューテツ

4.0見応えのある4人の会話劇

2023年2月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

1室4人の会話劇、迫真の演技で非常に見応えがあります。

銃乱射事件で息子を失った被害者両親と加害者両親の対話が描かれます。
重いテーマで精神的にくるものがあるので、よいコンディションでの鑑賞をおすすめします。

音楽も回想シーンもなく、ほぼ4人の会話のみなのですが、スリリングで緊張感にあふれています。
臨場感がすさまじく、肩を揺さぶりつけられるように訴えかけてくるものがあります。

舞台でも十分成立しそうではありますが、映像作品だから伝わってくるものがあります。
カメラワークがすくい上げる唇や指先のわななきが痛切です。

邦題は「対峙」ですが、原題の「Mass」はミサ(クリスマスのマス等)を指すそうです。
本作のテーマを狂いなく体現する邦題もすばらしいです。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
moro

4.0見届ける役割り

2023年2月26日
iPhoneアプリから投稿

冒頭に何の説明もない。いったいこの4人で何が始まるのか・・ゆっくりと静かな波が徐々に心の奥底から浸透していきとてつもない渦になっていく。その模様をこちら側から身動き一つできずに見守るだけ。
4人の言葉に嘘はない。
もうこれ以上ないだろうというセリフの応酬。いったいどういう風に撮影したのだろうか?この難しい感情を何日間かけて・・観る限り1日で撮影しなくては無理じゃないかと思う。それくらい役者さんたちのテンションは守られていないと無理だと思うのだが。
ラストには涙が出て止まらなかった。安堵なのか何なのかはわからない。

コメントする (0件)
共感した! 5件)
ノベコ

4.5モキュメンタリーっぽいかと思ったらちゃんと映画だった。

2023年2月25日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

大事な息子を銃で失った両親と
その息子を撃った息子の両親。
その事件から6年後の今。

もし、自分からだったら
何を話す?
何を聞く?
何をしても子供は帰って来ないのに。
この4人の会話は
深く
重く
辛く
そして、人間だ。

題材が題材なので
モキュメンタリー的で
よくある“この会話劇を楽しむ”だけでも
充分素晴らしいのですが
今作はちゃんと映画になっており
物語としてちゃんと解決してくれる。
4人の会話劇なのにカメラワークも
画角も凄い考えられてる。

素晴らしい時間でした。

コメントする (0件)
共感した! 3件)
溶かしバター大盛りポップコーン

3.0役者が全て

2023年2月23日
iPhoneアプリから投稿

キャストは少なく安上がりにできてる感じです。
被害者、加害者の両親の心情を感じ取ることができると思います。
だから役者が下手だと全く伝わらない作品になってしまうのですがその心配はあまりありませんでした。
できたらもう少し映像に力を入れて欲しかった。
観て良かったかと言われたら別に…ってなるかも?
気になる方は観てください。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
883HT

4.0死ぬまで自分の中の「想い・感情(苦しみも含めて)」と“対峙”していかなければならない四人の人々。

2023年2月23日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 2件)
もーさん

3.0日本であれば許されないであろう

2023年2月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 1件)
てつ

4.0愛していたのは真実

2023年2月20日
Androidアプリから投稿

演劇がオリジナルではないようだが、堂々たる会話劇作品。攻守が丁々発止、というダイナミックさはないが、静かに「起きてしまった」悲劇と向き合っていく。千々に乱れた親としての感情が交差し、互いに腑に落とすために、語り合う緊張感。なかなか息詰まるスクリーンだ。

コメントする (0件)
共感した! 5件)
t2law

2.0私には無理

2023年2月19日
スマートフォンから投稿

銃もそうだし、赦しもそうだし、こういうアメリカ人の習慣だったり感情だったりは見ていて不快でしかない。

日本人だったら。。
人の子を殺しておいて、許してほしいだなんて思うだろうか?
自分達に非は無いだなんて発言できる?
そしてその場を満足そうにセッティングする偉そうな女。

私には相変わらずの偽善で図々しいアメリカ人の典型ともいえる作品にしか思えませんでした。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
やみくろ

4.5心に沁みる作品

2023年2月18日
iPhoneアプリから投稿

正直どう言葉にしていいかわらない。
鑑賞中は映画であることを忘れてドキュメンタリーなのではないかとすら思わされた。
キリスト教への知識の不足からか、何ヶ所か理解できてなさそうな部分もあるが、迫真の4人の会話劇は内容の重さと相まって、非常に心に沁みる作品でした。
ぜひまた見たい作品です。

コメントする (0件)
共感した! 5件)
よして

4.5米国の田舎町、そこにぽつんと建つキリスト教系の教会。 牧師の妻が対...

2023年2月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 1件)
りゃんひさ

2.0睡魔との対峙

2023年2月17日
iPhoneアプリから投稿
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 3件)
ジョージ

4.0知的好奇心を刺激した

2023年2月17日
PCから投稿

密室での4人の会話劇が、こんなにヒリヒリ緊張感に溢れていて、怖いとは。
そして、この作品のすごかったところは脚本や役者の演技に加えて、撮影でしたね。
登場人物の心境によって、寄りになったりするのは普通ですけども、お互いの理解が深まるごとに、レンズにどんどん広角を多用。
最後には画角(縦横比)が変化し、超広角レンズを使用するという。
見ている景色が変わっていくことを見事に表現していました。

2018年のフロリダ州パークランドのM・S・ダグラス高校乱射事件を知った監督が、アメリカで加害者と被害者(または本作のように加害者の親族と被害者の親族)同士で語り合う「修復的司法」を取材して作り上げたもので、リアリティに溢れたものだったのですが。
私には未知の、そんな司法制度の「新しい知識」を得られて、また『ヒトラーのための虐殺会議』の真逆な人間の共感・理解を深める感情のキャッチボールを惜しまない会話、そして「優れた表現」を観られました。
面白いとかつまらないとかの話ではなく、知的好奇心を刺激してくれて、観ておいてよかった作品だったな、と思いました。

コメントする (0件)
共感した! 4件)
コージィ日本犬