MONOS 猿と呼ばれし者たち

劇場公開日:

MONOS 猿と呼ばれし者たち

解説

半世紀以上にわたって続いたコロンビア内戦を背景に、ゲリラ組織の少年少女たちを描いたサバイバルドラマ。第35回サンダンス映画祭ワールド・シネマ・ドラマ部門の審査員特別賞をはじめ、世界各国の映画祭で数々の賞を受賞した。南米の山岳地帯で暮らす8人の少年少女。ゲリラ組織の一員である彼らはコードネーム「モノス(猿)」と呼ばれ、人質のアメリカ人女性を監視している。厳しい訓練で心身を鍛える一方で、10代らしく無邪気に戯れる日々を送る彼らだったが、組織から預かっていた乳牛を仲間の1人が誤って撃ち殺したことをきっかけに亀裂が生じてしまう。そんな中、敵から襲撃を受けた彼らは、ジャングルの奥地へと身を隠すが……。出演は「キングス・オブ・サマー」のモイセス・アリアス、「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」のジュリアンヌ・ニコルソン。「コカレロ」のアレハンドロ・ランデスが監督を務めた。2019年・第16回ラテンビート映画祭では「猿」のタイトルで上映。

2019年製作/102分/R15+/コロンビア・アルゼンチン・オランダ・ドイツ・スウェーデン・ウルグアイ・スイス・デンマーク合作
原題:Monos
配給:ザジフィルムズ
劇場公開日:2021年10月30日

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(C)Stela Cine, Campo, Lemming Film, Pandora, SnowGlobe, Film iVäst, Pando & MutanteCine

映画レビュー

5.0猿と人間の違いはあるか

2021年12月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

これはすごい。社会の外に広がる荒涼とした世界で生きる若者たちの物語だが、悲惨で過酷なだけの話ではない。「猿」と人に向かって言うのは、侮蔑的な意味合いだろうと普通は思う。実際、この映画では過酷な戦闘員として山岳地帯で非人間的な扱われ方をする若者たちが出てくる。まさに獣のような残虐性を秘めた少年・少女兵に鍛えられた者たちなのだが、そこには人間社会が失った原初的な感性があるのも確か。殺風景な山岳地帯にモノリスのような石がそびえたち、どこか異空間につながった世界のような場所で展開される物語で、彼ら・彼女らは強烈な生の輝きを放ってしまっている。
人の本性は動物であるとするなら、本作が描く人間の姿は現代人が喪失した人間性(動物性)を確かに有している。後半、舞台が深い森の中に変わると、さらに登場人物たちは動物的になっていく。森での中で動物的な人間性が立ち現れる様は、アピチャッポン・ウィーラセタクンの映画のようでもある。
猿と人間の間にどれだけの差があるのか。実はないのではないかと思わされる。

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杉本穂高

4.0内戦が続いたコロンビアで実現した野心作の光と影

2021年11月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

怖い

興奮

本作については当サイトの新作評論に寄稿したので、ここでは補完的な視点で書いてみたい。

まず目を引くのは、雲海が眼下に広がりセメント鉱山の廃墟が残る高地や、うっそうとしたジャングルと滝や濁流の川など、手つかずの自然が残ったロケーションだ。特にジャングルや川の付近は、最近までゲリラ組織と民兵集団の戦闘があったせいで一般の人々は近づけず、おかげで開発から逃れていたのだとか。

主要キャストも、博士役のジュリアンヌ・ニコルソンやビッグフット役のモイセス・アリアスを除き、ほぼ全員が演技未経験だという。メッセンジャー役の男性は実際に反政府ゲリラ組織FARCで部隊を率いたそうで、小人症で筋肉質の指導教官というキャラクターの異様なリアリティも納得だ。

ストーリーにはとても引き込まれたのだが、モノスの数人が土色に濁った急流を泳ぐ(というより、溺れないよう必死に浮かんでいる状態に近い)シーンでは、よくこんな撮影ができたなと驚く一方、発展途上国の貧しい若者たちを先進国の娯楽である映画で危険な目に遭わせて“搾取”しているという側面はなかっただろうかという懸念も残った(本作はコロンビアをはじめ欧州と南米の計8カ国の共同製作)。プレス資料でも、ジャングルでの撮影の準備中に斜面を巨木が転がり落ちてきて、キャストにぶつかる寸前で止まったという話を監督が明かしている。荒々しい自然環境だからこそ迫力ある映像が撮れるというメリットはもちろん認めるが、組合やエージェントのしっかりした米国の撮影現場並みに、キャスト・スタッフたちの安全の確保と心身のケアがしっかり行われていただろうかと気になった。

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高森 郁哉

4.5我々は見つめているのか、見つめられているのか

2021年10月31日
PCから投稿

コロンビアのゲリラ組織に生きる少年少女たちの物語。と書くと、かなりシビアな作風のように聞こえそうだが、その実、本作はディテールを削ぎ落とし、冒頭から我々を幻想的な”状況”へといざなう。どこか文明を否定したかのような人気のない高地で、駆け足、整列などの規律訓練を受けつつ、緊張から解放されると途端に無邪気な表情をあらわにする彼ら。その任務は、人質を見張ること。後の細かいことは、彼らが何者で、どこから来たのかも何一つわからない。そんな中で不測の事態が重なり、運命は彼らを予期せぬところへと押し流していく。終始、動物の鳴き声のごとき音色が耳を支配し、「2001年宇宙の旅」の猿たちや「地獄の黙示録」や「蝿の王」を思わせる”物語を超えた深淵”に暗闇から見張られているかのよう。もしくは人間であるのをやめ、猿へと進化を遂げようとする子らの物語なのだろうか。その不気味さと底知れなさが観る者を虜にしてやまない。

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牛津厚信

4.0体感するサバイバルドラマ

2021年10月29日
iPhoneアプリから投稿

怖い

コロンビアのジャングル深くに潜入し、コミュニティを形成している若いゲリラたちが、密林の中で常軌を逸し、次第に野獣化していく。実際に南米コロンビアで半世紀以上続いた内戦を背景にしているという。閉ざされた空間に閉じ込められた子供たちのサバイバルという意味では、他でも指摘されているように、太平洋上の孤島に漂着した少年たちの豹変ぶりを描いた『蠅の王』('63、'90)の系譜に属する作品なのかもしれない。

しかし、『MONOS』の舞台はゴツゴツとした岩山がある山岳地帯と、主な背景になるジャングルだ。物語の設定とは裏腹に美しく濃厚な緑に覆われた世界は、見るからにじめじめしていて、あちこちでアブのようなものが飛び交っている。場所によってはビニールを頭から被らないと寝られない。そこを絶妙なサウンドエフェクトがカバーしていく。夜のしじまから聞こえてくる虫の音、木の葉を揺らす風、川のせせらぎと水中で水が渦巻く音etc。また、ティンパニーやガラス瓶に息を吹き込む音を合成したという"映画音楽"が、それら効果音と見事に一体化して、観客をジャングルのど真ん中へ引き込んでいく。

戦争の残酷を少年たちの肉体で表現した本作は、衝撃的な映像と音によって脳裏に焼き付く、体感するサバイバルドラマだ。

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清藤秀人
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