劇場公開日:

糸

解説

1998年にリリースされた中島みゆきのヒット曲「糸」をモチーフに、菅田将暉、小松菜奈演じる平成元年に生まれた男女の18年間を生活者からの視点から見た平成史とともに描いていく、瀬々敬久監督作品。平成元年生まれの高橋漣と園田葵。北海道で育ち、13歳の時に出会った2人は初めての恋をするが、葵は母親に連れられて北海道を去ってしまう。8年後、21歳になった漣は、友人の結婚式のため訪れた東京で葵との再会を果たす。しかし、漣は北海道でチーズ職人、葵は東京、沖縄へと自分の世界を広げ、2人は別の人生を歩み始めていた。さらに10年の時が流れた平成最後の年、2人は運命の糸によってふたたびめぐり会うこととなる。漣役の菅田、葵役の小松のほか、斎藤工、榮倉奈々、山本美月、倍賞美津子、成田凌、二階堂ふみ、高杉真宙らが顔をそろえる。

2020年製作/130分/G/日本
配給:東宝
劇場公開日:2020年8月21日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第44回 日本アカデミー賞(2021年)

ノミネート

最優秀主演男優賞 菅田将暉
最優秀主演女優賞 小松菜奈
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(C)2020映画「糸」製作委員会

映画レビュー

3.5名曲「糸」をモチーフにしようとした製作陣の胆力に敬服 榮倉奈々の役作りにも最敬礼

2022年3月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

地上波初放送のあったタイミングで、改めてこの作品を振り返ってみる。
菅田将暉と小松菜奈は実生活で結婚したわけだが、その事実を慮りながら観ると、また更に様々な感情が去来する点が実に興味深い。ふたりの熱演は、言うまでもない。
そして、今作における榮倉奈々の激烈な役作りには感服というほかない。病に倒れる役ということもあり、ここまでの減量をやってのける役者魂には敬意を表したい。
それにしても、中島みゆきのあの名曲をモチーフにしているわけで、劇中でも効果的に使われている。それだけで、今作のグレードを1ステージ押し上げているほどの効果があったのではないだろうか。

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大塚史貴

4.0平成から令和を駆け抜ける一本の長い糸。きっと「良い映画を見た」という気持ちになれる作品

2020年8月12日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

平成という時代は30年といった規模だったので、平成元年生まれの2人が10代で出会い令和元年では30代ということになります。
これまでの多くの恋愛映画では、ひと夏の経験など、ごくごく短い期間が対象だったり、10年だったりしたわけですが、恋愛模様としては、20年くらいの大きなスパンの方が面白いのかもしれませんね。
その意味で、特に日本では「時代とともに駆け抜けるラブストーリー」もアリだと思います。
ただ、この発想は「弥生、三月 君を愛した30年」とも重なり、もし新型コロナ騒動がなければ同じ東宝で連続公開状態だったので、結果的には公開時期がズレて良かったのかもしれません。

まず、本作は邦画にしては豪華な方で、俳優陣も菅田将暉、小松菜奈、榮倉奈々、成田凌、二階堂ふみ、斎藤工、山本美月、高杉真宙など錚々たるメンバーです。
しかもロケーションも北海道を拠点に、東京や沖縄、そしてシンガポールまで広がっていきます。
さらに、その豪華さに応えるように、瀬々敬久監督の演出も良く、ほぼ言うことのない完成度でした。(気になった2点は、最後に書いておきます)
一つ一つのエピソードは、どこかで見たことのあるシーンも少なくないですが、軸がしっかりしているので自然と物語に入り込んでいる自分を感じます。
新型コロナ騒動で、令和という時代をそれほど実感できずにいる私たちですが、改めて時代の軸を体感する意味でも、本作の意味は大きいと思います。
要所要所で中島みゆきが作った歌が流れ、少なくとも、私がこれまでに見た「歌をモチーフとした邦画」では、本作が一番出来が良かったです。

マイナス要素があるとしたら、以下の2点でしょうか。
1.最初の出会いの自転車が飛ぶところは良いとしても、あれだけ壮大に転べば周りの人が(親切な人の多い日本だと)もっと駆け寄ってくるはず、という点です。
2.ラストの小松菜奈が扮する葵の行動は、「情報の面で必然性が欠けている」ような気がします。(本作に限らず、なぜか携帯電話というツールが突如、物語から消え去るのは、王道的な恋愛映画の設定には厳しい時代なのかもしれませんね…)

細かい点ですが、最初と最後は一番力を入れてほしいところなので★4としますが、本作は、きっと「良い映画を見た」という気持ちになれる作品だと思います。

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細野真宏

4.0様々な糸で織りなされている布のような作品

2020年8月11日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:試写会

中島みゆきのヒット曲「糸」と言えば、「縦の糸はあなた 横の糸はわたし 織りなす布は いつか誰かを 暖めうるかもしれない」という歌詞が真っ先に出てくる。となると、2人が織りなす布(物語)を連想する。
本作では、織りなす布(物語)が主人公の「2人」だけでは成立しないところに意外性がある。糸と比喩される人は何人も存在し、縦の糸が誰で、横の糸が誰なのかという判断は、本作を見る者に任せる形になっているが、想像以上に後味が良い。
劇中では、中島みゆき「ファイト!」が度々出てきて、皆んなが励まし合う人間らしいドラマになっている。
番宣でも噂の菅田将暉と小松菜奈は、平成元年生まれの高橋漣と園田葵を演じており、2人の出会いのシーンは特に印象的で、その後、再会するたびに見る者にとっては心が揺らいでいく。
本作は、平成から令和まで「短いようで長い」スパンで描かれているところも見所で、時間の流れで変わる現実を実感し、終盤で初めて「縦糸と横糸で織りなされた布(物語)」に感動させられる。
葵の前向きである強さと女性らしい引きのシーンを演じた小松菜奈は、少し今までの役柄とは違う分、賞を狙える女優の1人だと感じた。

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山田晶子

4.5単糸、線を成さず

2024年4月6日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

時代遅れなラブロマンスを心配していた私は完全に杞憂だった。いや、ベタだよ?ベタはベタよ?
ただ、確実に2020年に公開される映画に相応しい、芯のある映画だった。いや~、良かった!
何だか、沢山泣いちゃった気がする。後半色々と畳み掛けてくるんだもの。

あらすじに堂々とラブストーリーと銘打たれているけど、実際は群像劇に近い。その中でもこの映画の芯になっているのが、菅田将暉演じる漣と小松菜奈演じる葵の「二つの物語」なのだ。
一本のラブストーリーと思わせておいて、実は二本の人生模様として紡ぎ出されていくのだから、なかなか心憎い。

みんな心に一本の糸を持っている。伸ばしたい先、未来がある。自分のか細い糸を必死に伸ばすけど、自分ではどうにも出来ない大きな力の前に断ち切られてしまうこともある。
それを表現する事象として「平成の出来事」が登場する。
一見関係ないようで、それらの事件や出来事は糸たちの結び目を変え、流れを変え、繋がる先を変えていく。

大小様々にスクリーンに映し出される登場人物たちのドラマは、それ単体でも映画に出来るほど濃密に感じる。
しかも演じるキャストが豪華!
例えば東京に出た葵を見初めて支える水島社長。彼が沖縄の浜で垂らす釣糸は、彼の持つ糸が繋がる先を求めて漂っているように感じる。
演じている斎藤工がまたカッコいい。あんな菅笠を被って似合うのは、斎藤工かベトコンくらいだよ(褒めてます)。

本当は榮倉奈々演じる香と香の父の行動について書きたい気持ちがあるんだけど、これは是非映画を観て体験して欲しい。
父と娘の仕草に、親と子の間に受け継がれる糸の存在を感じて、もしかしてこれがこの映画のベストシーンなんじゃないかと思ったほどだ。
あと、結ちゃんは卑怯。ホントにね~、結ちゃんのシーンで2回は確実に泣いてるね!

個人的に気に入っているのは、悲劇のヒロインのように登場した葵が「男に助けられなければ生きていけない」母親のような女の生き方ではなく、自分が誰かを助けるような人生を勝ち取ろうとしているところだ。
痛い思いをしたからこそ、痛みに寄り添える存在になりたいと誓い、苦難にあっても悔し涙を飲み込む小松菜奈の葵はカッコ良かった。

映画全体を通して、今までに起きたこと、出会った人、それらが何度も繰り返して繰り返して、変わらずに強調されていったり、あるいは登場人物の変化を促したりする演出がとても上手くハマっている。
糸が少しずつ太くなり、沢山集まって布になるような感覚が確かにある。

この糸がどうやって手繰り寄せられていくんだろう、と思って観ている私たちもまた一本の糸だ。
映画館に座って、彼らを見つめる糸たち。映画に登場するそれぞれの糸に、寄り添ったり離れたりしながら、エンディングを迎えたときに確かに自分もこの糸たちが織り成す布の一部になっていたのだと感じる。
「もしもあの時」や「たられば」の数だけ、織り上がった布の模様が違うだけで、切れたりほつれたりを繰り返しながら、やっぱり人生という布が織り上がっていくんじゃないだろうか。

何故巡り逢ったのかは、振り返ってみるまで誰にもわからない。でも確かに巡り逢ったからこそ、今の自分が存在している。
何かに失敗しても、離れてしまっても、降参するまで人生の勝負は決まらないし、勝つまでやれば絶対に負けない。
そしてその勝負を支えてくれるのは今までに出会ってきた人たち。
振り返って「仕合わせ」だと思えたとき、きっと自分の糸は色々な糸に巡り逢い、支えられていると気づけるのだ。

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つとみ
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