劇場公開日 2019年1月18日

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「私は日本版より好きです」カイジ 動物世界 といぼさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0私は日本版より好きです

2019年10月29日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

福本信行先生による大人気漫画の中国版実写映画。
私はアニメ全話視聴済み・藤原竜也主演の日本版も視聴済みです。

私個人の意見ですが、中国リメイク版の今作は「日本版での不満点をおおむね解消している」と感じました。もちろん不満点が無いわけではありませんが、原作ファンの私でも楽しめる良作映画でした。

藤原竜也主演の日本版は、2時間ちょっとの上映時間に「限定ジャンケン」「鉄骨渡り」「Eカード」という3つのゲームを盛り込んだ内容になっていましたが、私はこれは失敗だったと思っています。3つのゲームを短い尺に収めるために非常に淡々と物語が進むせいで、この作品の面白さの肝である緻密な戦略や高度な心理戦が非常に薄っぺらく見えてしまったからです。アニメ版で20話以上掛けて描いたストーリーをたった2時間ちょっとの映画に詰め込むのはどう考えても無謀です。原作ファンだった私は日本版カイジを観た時に「限定ジャンケンだけで映画化すれば良かったのに」と心底ガッカリしました。

そんな日本版に対して中国版カイジは登場するゲームは「限定ジャンケン」だけで、2時間掛けて丁寧に丁寧に戦略や心理戦を描いています。ゲームの緊迫感やキャラクターの心理描写は中国版の方が勝っていました。過剰な演出が多用されるところは正直賛否の分かれているみたいですが、原作もあれくらい意味の分からない演出が多いので私は全く気にならなかったですし、むしろ「よくやってくれた!」ぐらいの感覚でした。

ただ、原作には無い「病気の母を助ける」「幼馴染とのラブロマンス」という改変部分が原作ファンとしては鼻に付いたところはあります。映画としてのまとまりやラストの感動を演出するための改変なので、「映画としての面白さ」は向上したと思いますが、「期待していたもの」とは違っていました。原作でもアニメ版でも日本版でも、徹底的にクズな主人公カイジが描かれていたので、それを求めていくと期待外れに感じます。

良かった点・悪かった点、それぞれありますが、映画としては本当に面白く観られましたし、原作に対するリスペクトを随所に感じられました。
藤原竜也主演のカイジ新作映画も発表になりましたし、この機会に是非ご覧になってはいかがでしょうか。

といぼ:レビューが長い人