劇場公開日 2019年5月17日

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「いただきます。」リトル・フォレスト 春夏秋冬 KinAさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0いただきます。

2019年5月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

眩しいくらいの田舎で繰り広げられる緩やかで穏やかで小さなドラマと、超絶飯テロ連発の腹ぺこムービー。

手間暇かけて食材を育て、日々の糧を丁寧に作り上げ、一食一食を心から楽しみ自らを労るへウォンの姿があまりにも素敵で綺麗で、なんてことないシーンで涙ぐむこと数回。
自炊能力高すぎ、羨ましい。
手摘みの山菜もトマトもキャベツもキラキラ輝いていて、栄養の偏りがちな最近の身体にビタミン補給されるようだった。
お花のパスタとキュウリの冷麺と激辛のトッポギが美味しそうすぎる。私にも食べさせておくれ。

ソウルの街に夢を中途半端に置き戻ってきたへウォンの若干の気まずさと、そこに土足でズカズカ入り込んでくる友人二人の言葉のやり取り一つ一つが可愛らしい。
伯母さんや郵便配達のおじさん、もちろんウンスクとジェハも、何だかんだへウォンと姿なき母を優しく見守ってくれる周りの姿勢が心地良い。
ジェハの想いの先が気になって仕方ない。

春夏秋冬と過ぎ行く季節と共に装いを変える村の景色と、少しずつ進んでいくへウォンの心。
大きなドラマは無くても、常に引っかかる母への意地っ張りな想いがツンと刺さる。
料理を作るたびに蘇る思い出の形がまたノスタルジック満載でグッと来ることこの上なし。繋げ方も至高。

へウォンの母親は相当変わっていると思う。
いくらなんでもそりゃ無いじゃない、ねえ。
幼い頃の記憶と受験後の唐突な行動のギャップは同一人物とは思えないくらい。
プライドの高さは母譲りか。
そんなこともこれからゆっくり紐解いていけばいいのか。

一旦セーブ、リセット、そしてまたリセットして帰ってきたへウォンの最後の表情がもう良すぎて良すぎて堪らない。
その視線の先に何があるかなんて、きっと私の期待通りであるはずなのに見せないつくりが憎いったら。
自分の母親に会いたくなった。(今は徒歩15分圏内にいるしそもそも映画の後会う約束してた。一緒にうどん食べた)

全編通して良き良きの連続だけど、お金はどうしていたんだろうと細かいことが気になってしまう。
大学進学にも一人暮らしにもまず初期費用は相当かかるし、ソウルから田舎へ戻るときに部屋は引き払ってきたんだろうか。
まあその辺はふんわりさせておけばいいのか…。

少々お綺麗すぎる描写には若干のあざとさを感じることも。
食べるときにわりとがっつくかんじとか大好きだけど、もう少し生活感なんかも肌で感じたかった。
キム・テリはめちゃくちゃ可愛いけど、泥臭さも似合う人だと思うので。しかし本当可愛いな。出演作は必ず押さえるぞ。

「素敵だ!素敵すぎる!私もこうなりたい!」と「でもスーパー無いし映画館無いしTSUTAYA無いし普通に無理だ…」の気持ちが交互にやってくる。
便利に染まり文明に依存し趣味を充実させた生活はなかなか快適なもので。すまないが。

しかし何にせよ、そんな私の心と身体にも沁み入る美味しい映画だった。
ごちそうさまでした。

KinA