峠 最後のサムライ

劇場公開日:

峠 最後のサムライ

解説

幕末の動乱期を描いた司馬遼太郎の長編時代小説「峠」を、「雨あがる」「蜩ノ記」の小泉堯史監督のメガホン、役所広司、松たか子、田中泯、香川京子、佐々木蔵之介、仲代達矢ら日本映画界を代表する豪華キャストの共演で映画化。徳川慶喜の大政奉還によって、260年余りにも及んだ江戸時代が終焉を迎えた。そんな動乱の時代に、越後長岡藩牧野家家臣・河井継之助は幕府側、官軍側のどちらにも属することなく、越後長岡藩の中立と独立を目指していた。藩の運命をかけた継之助の壮大な信念が、幕末の混沌とした日本を変えようとしていた。「蜩ノ記」に続いて小泉監督作に主演する役所が主人公となる継之助に扮し、継之助を支え続ける妻おすがを松が演じる。

2022年製作/114分/G/日本
配給:松竹、アスミック・エース
劇場公開日:2022年6月17日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第46回 日本アカデミー賞(2023年)

ノミネート

最優秀監督賞 小泉堯史
最優秀脚本賞 小泉堯史
最優秀撮影賞 上田正治 北澤弘之
最優秀照明賞 山川英明
最優秀録音賞 矢野正人
最優秀編集賞 阿賀英登
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(C)2020「峠 最後のサムライ」製作委員会

映画レビュー

4.0ある意味でこれが「最後の日本映画」になるかも知れない。

2022年6月28日
PCから投稿

小泉堯史監督といえば、黒澤明監督作品の助監督を務め、黒澤組のスタッフを引き継ぐように監督デビューした人物。作風や作家性が同一ではないにせよ、画作りや演出におちて、確実に黒澤映画のメソッドを受け継いでいるし、小泉組の常連スタッフたちも、もはや日本映画史の伝説と言っていい。

司馬遼太郎の同名長編小説を原作に、長岡藩家老・河井継之助を主人公に描いた本作は、正直、前知識がない人にはキツイ、というか、限りなく不親切設計だと思う。例えるなら、MCUの知識が一切ないまま『アベンジャーズ エンドゲーム』を観るのに近い。河井継之助という破天荒で矛盾に満ちた人物の、最後の一年間にだけ焦点を絞り、滅びの美学に殉じていく姿を静かに見つめる。そんな構成は、いきなり最終回一回前から見るのにも似ているかも知れない。

サムライの美学、滅びの美学といった、いささか人迷惑な陶酔に溺れすぎているきらいはある。しかし、ちゃんと画面の内外に人を配し、ロングのカメラ複数台で撮影していくというもはや滅びつつある映像はずしりと腰が座っていて、そこで詩のように紡がれる「滅びの一歩手前の静かな時間」は、上品なエモさであふれている。

モブの顔つきがみんないいのもこの映画の長所であり、いずれにせよ手間と暇をかけることを厭わない姿勢に感心すると同時に、こういう豊かな映画作りは今の疲弊した日本では消えていくしかないわけで、最後のサムライならぬ最後の日本映画になるのではないか、とそんな感慨にとらわれた。人は選ぶが、題材に興味がある人にはおすすめです。

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村山章

4.5「司馬遼太郎」×「黒澤明組スタッフ」が総力を挙げて作り上げた「サムライ(武士)」の最後を描く本格的な時代劇映画。

2022年6月17日
PCから投稿

本作のメインとなる舞台は、現在の新潟県です。
なぜ新潟県なのかというと、実は新潟県は明治初期の段階では「全国の都道府県で人口が最多の県」であり、日本のメインでもあったのです。
本作は、徳川家によって統治された260年余りにも及んだ江戸時代が終わりを告げる「大政奉還」から始まります。
この最後の将軍・徳川慶喜による「大政奉還」のシーンは、もはや映画の現場ではほぼ見かけない「フィルムカメラ」で、2,3台という体制で7分間を超えるような長回しをしています。
本作のメガホンをとったのは黒澤明監督に師事し、黒澤明の遺作シナリオ「雨あがる」でデビューを果たし、日本アカデミー賞で最優秀作品賞をはじめ総なめにした小泉堯史監督です。
本作は「黒沢組スタッフが集結した集大成のような作品」となっているのです!
そして本作の主役は、越後の長岡藩(現在の新潟県長岡市)の家老である河井継之助(つぎのすけ)です。
「大政奉還」により❝平安の時代❞が訪れるはずが、新政府を樹立する薩摩・長州を中心に「徳川慶喜の首が必要だ」となり、国が「東軍(旧幕府側)」と「西軍(新政府を樹立した明治天皇側)」に二分し、「戊辰戦争」という日本最大の内戦に至ります。
この最後の動乱を経て、サムライはいなくなりますが、まさに「サムライとは何だったのか」を象徴する人物が、司馬遼太郎の長編時代小説「峠」で描かれた河井継之助なのです!
「忠義は重んじるものの、無用な争いが起こらないように死をも恐れず誠心誠意を尽くす」姿は、今の世の中に響くものがあります。
そして、この国の行く末を考える際に、福沢諭吉が説く「教育」の重要性が出てくるなどキチンと本質を洞察していた人物であることが分かります。
主演の役所広司の渾身の演技は言うまでもなく、妻役の松たか子はナレーションも上手く、時代劇が無くなりつつある今、見るべき本格的な時代劇となっています。

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細野真宏

4.0新選組のように有名ではない幕末のサムライ。戦略を立てながら平和を願う彼の姿にサムライの在り方を改めて考えさせられる

2022年6月16日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:試写会

司馬遼太郎の「坂の上の雲」「竜馬がゆく」などは大河ドラマなどで有名だが、彼が書いた「峠」については知らない人が多いのかもしれない。
1977年の大河ドラマ「花神」の原作の1つとして採用はされたが、あくまで1部であり、本作の映画化により初めてその全貌が映像化された。
映画化された本作は、幕末に生きた河井継之助の話で、戊辰戦争前後の長岡藩の話である。
そもそも長岡という地名も新潟県民でないとピンとこないのかもしれない。
しかし、司馬遼太郎が「侍とは何か」を考えるべく白羽の矢を立てたのが河井継之助であり、「峠」により越後長岡藩の家老・河井継之助を世の中に知らしめることとなったのだ。
それは「藩」や「武士」などという仕組みから解放を模索し続け、時代の先を読んでいた人物だからだ。
「侍は民のために存在する」と、戦いのない世を願ったにもかかわらず、時代の転換期による動乱に巻き込まれていく悲劇は「最後のサムライ」の姿を見た思いだ。
幕末の風雲児・河井継之助を演じた役所広司と、その妻を演じた松たか子は、文字通り夫婦そのもので、その凛とした夫婦関係が心に染みた。
この2人以外のキャストも豪華で、「もっと出て欲しい!」と名残惜しく思うほど贅沢な使い方であるが、主役(役所広司)を中心に描くべき作品のため、この思いっきりも潔い。
本作は、徳川幕府の終焉と、あまり知られていない幕末の風雲児と越後長岡藩を改めて学ぶ大事な機会であり、歴史を大局的に把握し、人情的に見ると、より作品の良さが伝わる。

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山田晶子

2.5貴重な題材を扱った意欲はともかく

2024年1月28日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

原作既読。

難しいのよ、河合継之助は。
地元長岡ですら好悪両論ある人物で、例えば映画でも描かれる長岡城陥落の際も、陥落した途端一揆が相次いで対応に追われたことで奪還が遅れたことから分かるとおり、当時でも領民からの評判は決して良い人物ではなかった。
戊辰戦争後に長岡に継之助の墓が移された後も、何度も墓石が倒されていて、彼が買った恨みも相当深かったことが伺えるし。

司馬遼太郎の原作ですら、彼を手放しで褒め讃えているわけではないし、自分にも当時のこの情勢で「中立」を模索することはかなりの無理筋であったように思えるし。
ちなみに原作では継之助は長岡藩を中立独立国にすることを目指していたような書きぶりだけど、それはいくら何でも…って思う(^-^*)
それで長岡を焦土にしてしまったのなら、そりゃ恨まれて当然でしょ。
当時の奥羽越列藩同盟の諸藩では、結局寝返って新政府側についた藩の方が多いほどで、戦力分析からも大義名分からも無理もない、とも思える状況だったわけで、その情勢で「中立」を唱える時点で新政府側からは敵と見なされて当然だったわけで。

なのでその河合継之助をどう捉えるか?というのは彼を主役に据えた作品を創るにはとても重要。
司馬遼太郎の原作はそれを成し遂げていたからこそ、一定の評価を受けているわけなのだけど、この映画の製作陣に果たして明確なコンセプトがあったのか?

製作陣が河合継之助という人物をどう評価するのか、その明確なコンセプトがないまま、原作のほぼ下巻だけを無造作につまみ出して映像化しただけ、という印象を受ける映画だったな。
なのでどうにも焦点がぼやけたお話になってしまっている。

役所広司という名優の無駄遣い。

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