劇場公開日 2018年9月15日

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「多様性」西北西 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5多様性

2018年9月15日
iPhoneアプリから投稿

多様性や多様な価値観という言葉は、僕たちの社会が世界に向けて広がりを持つと同時に、言葉の持つ意味は軽くなってしまった。多様性や多様な価値観を理解していることを、当たり前のよう要求されて、そこに至る葛藤や焦燥感といったものが、軽んじられてるからだろうかと感じた。LGBTも同様だ。普通に人と接するよりも、腫れ物に触るように気をつけなくちゃいけない特別感が抜けない。ナイマが、ケイと一線を越えるんじゃないかと感じた場面があった。僕は、あっ、これは僕が異性を好きになる瞬間と同じだと思った。つまり、LGBTも特別なことはなくて、人として人を好きになることは、当たり前の自然なことなのだと。そして、人が人を好きになって、恋愛が始まった後は誰もが大変だ。別の個性をもっと深く理解したいが、よく分からない事柄も増えてくる。ぶつかり合いながらも、多くの人はそれを乗り越えようとする。ケイやアイのぶつかり合いや葛藤、焦燥感の揺らぎを、ナイマが好むと好まざるに関わらず、複雑にしていく。そして紆余曲折しながらも、理解が少しずつ深まって行く。実は、これこそが、僕たちが、謀らずも安易に使うようになってしまった、多様性や多様な価値観を理解するということと同じではないのか。そして、きちんと向き合わないと、本当は理解に至ることはないのではないか、また、恋愛でだって、人ひとりを理解するのは難しいのだから、理解の程度は深まっても、実は完全には理解することはないのではないかという謙虚さも必要なのではないのか、など、色々考えされられる映画でした。

ワンコ