劇場公開日 2019年3月22日

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ブラック・クランズマン : 映画評論・批評

2019年3月19日更新

2019年3月22日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー

メッセージ映画であると同時に極上のエンタメでもあるスパイク・リーの会心作

1970年代に、黒人でありながら白人至上主義の過激派団体KKKを潜入捜査するという困難なミッションに挑んだ元刑事ロン・ストールワースによる回顧録「ブラック・クランズマン」の映画化権を当初獲得したのは「ゲット・アウト」の監督ジョーダン・ピールだった。だが彼は「自分よりも相応しい人物がいる」と尊敬してやまない大先輩に監督の座を譲った。スパイク・リーである。

ピザ屋が舞台の「ドゥ・ザ・ライト・シング」から伝記映画「マルコムX」に至るまで、リーは様々な視点からアメリカ社会における黒人の苦闘を告発し続けてきた映画作家だ。バラク・オバマが黒人初の大統領に就任して以降は、こうした姿勢がしばしば時代遅れと批判されていたものの、ブラック・ライブズ・マターの高まりや、人種差別を隠そうともしないドナルド・トランプが大統領の座についたことで状況は一変した。そう、今こそスパイク・リーの怒りが求められているのだ。

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期待に応えてリーは、KKKの醜悪さと黒人運動のクールネスを対比し、ハリウッドにはびこる差別意識を皮肉りながら、KKKの大幹部デヴィッド・デュークが劇中で繰り返し唱える「アメリカ・ファースト」が国家の政策となってしまった現在のアメリカを叩いてみせる。

しかし本作は決して硬直したメッセージ映画ではない。物語の基調はストールワースと相棒の白人刑事フリップを核にした熱血バディ・ムービーである。さらにリーはそこにアクションやサスペンス、ロマコメの要素をも盛り込んだ極上のエンタメ作として映画を仕上げているのだ。

ストールワースを演じたジョン・デヴィッド・ワシントン(デンゼル・ワシントンの息子)をはじめ、フリップ役のアダム・ドライヴァーやヒロインのローラ・ハリアーらキャストは総じて好演。個人的にはKKKの構成員に扮したポール・ウォルター・ハウザーにヤラれた。悲しいほど頭が悪い小悪党ぶり、「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」で彼が演じていた役とキャラが全く同じなのだ!

長谷川町蔵

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