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◆メアリーの総て

文学映画というより青春映画。傷つき抑圧された少女が怪物の物語を生み出す
  1816年、スイスに雨が降り続いた夏。詩人バイロン卿が借りていたレマン湖のほとりの別荘で、退屈しのぎに客人たちが怪談を書いてそれぞれ見せ合う約束をしたことは「ディオダディ荘の怪談談義」として文学史に刻まれる出来事となった。この時に生まれたのが、ホラーの名作として名高い「吸血鬼」であり、「フランケンシュタイン」である。後者を書いたのは詩人のパーシー・シェリーの妻として別荘についてきたメアリー・シェリーだった。メアリー・シェリーの異母姉妹であるクレア・クレモントはバイロンの愛人であり、彼の子を妊娠していた。この時、バイロンは28歳、パーシーは24歳、そして妻子あるパーシーと駆け落ちし、彼の子供を妊娠して失うという経験をしたばかりのメアリーはまだ18歳だった。

  「メアリーの総て」ではまだ若い俳優たちが自分たちと実年齢の近い文豪たちを演じている。メアリー・シェリーに扮するのは、まだ幼さの残る顔立ちのエル・ファニングだ。映画は文学史の重要人物ではなく、十代の傷ついた少女としてのメアリーを描こうとしている。作家である父と早くに亡くなった思想家の母の名前の重圧から逃れようともがき、文章を書くことに夢中になり、恋に落ちて悲しい経験をする主人公を、エル・ファニングは等身大で演じている。

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  抑圧された少女が怪物の物語を生み出すという筋立てに、サウジアラビア出身の女性監督ハイファ・アル=マンスールらしい視点と現代性を感じる。二人の詩人、バイロン卿とパーシー・シェリーはトム・スターリッジダグラス・ブース。キラキラと魅力を振りまき、少女たちを誘惑する彼らは十九世紀のヨーロッパにおいてはアイドルのような存在だったのだろうと思わせる。

  「フランケンシュタイン」という物語が生まれるまでの内幕を知りたい人には物足らないところもあるかもしれない。しかし、これは文学映画というよりも、青春映画なのだ。「フランケンシュタイン」の内容よりも、羽根ペンを持ってそれを必死に書いているメアリーを見せることに、この作品の意義がある。

(山崎まどか)


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