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◆スターリンの葬送狂騒曲

ロシアを怒らせた黒い笑いの政治風刺劇。隠し味は民主主義の斜陽感
  ロシアの歴史の1ページを切り取った映画だが、同国政府は国内での上映を禁止した。一体どういうことか。

  「スターリンの葬送狂騒曲」は、ソ連を20年間支配した独裁者スターリンが1953年3月に死去した後、国葬の裏側で側近たちが繰り広げた後継者争いを描くブラックコメディで、基本的には史実に基づく。映画化の経緯もユニークだ。2014年にフランスでファビアン・ニュリ作、ティエリ・ロビン画のグラフィックノベルが出版され、その映画化権をフランス人プロデューサー陣が獲得した。彼らは、英国で辛口政治ドラマの作り手として実績のあるアーマンド・イアヌッチに監督を依頼。主要な登場人物のキャスティングは英米の俳優でほぼ固められた。全編英語の台詞で語られ、屋内シーンが多いことも相まって、豪華な舞台劇のような趣もある。

  後継者の有力候補である第一書記フルシチョフを演じたのは、「ファーゴ」などコーエン兄弟作品の常連、スティーブ・ブシェミ。お調子者のようで狡猾さと気弱さが見え隠れする役作りが絶妙だ。最大の政敵、秘密警察NKVDの責任者ベリヤを、シェークスピア俳優として知られる英国の名優サイモン・ラッセル・ビールが憎々しく演じる。優柔不断さにつけこまれベリヤの傀儡となるマレンコフには、ジェフリー・タンバー(「ハングオーバー!」シリーズ)のにじみ出る滑稽さがうまくはまった。

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  コント的な笑いも多少はある。スターリンが寝室で倒れ失禁した場所に、時間差で駆けつけた側近たちが一様に足を踏み入れたり、閣僚会議で互いの出方をうかがって手を挙げたり下げたり。だがより強烈なのは、スターリンのために医者を呼ぼうにも良医は処刑されヤブ医者しか残っていないという話や、時局に翻弄され命を奪われる人々など、恐怖政治が生み出した不条理でシュールな状況の数々。実話に基づく仰天エピソードを俳優たちに大真面目に演じさせ笑いを誘う演出が秀逸だ。ロシア政府が国民への影響を懸念して上映を禁止したのも、まあわからなくはない。

  半世紀以上も前のソ連の出来事を、西側の視点で映画化した点も、本作を一層感慨深いものにしている。排外主義が勢いを増し、自国ファーストを説く独裁的な手法の政治家が大衆に支持され、民主主義の"終わりの始まり"のムードが漂う昨今。そんな民主主義のたそがれ感が醸し出す苦さが隠し味となり、今の時代を生きる私たちにしみじみと響くのかもしれない。

(高森郁哉)


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