ブリグズビー・ベアのレビュー・感想・評価
全127件中、1~20件目を表示
人が物語を必要とする理由
人が生きていくために、物語が必要なんだと思う。本作はそんな物語の力を信じている。外界から隔絶された環境で、ニセの番組を観て育った主人公にとってその番組は世界の全て。その番組の作られたいきさつはどうあれ、主人公はその番組から人生の大切なことを教わった。
人はこの世界を物語を通して学ぶ。ギルガメシュ叙事詩の頃から人は物語を通して世界と人生について学んできた。この映画は、そんな人と物語の関係についての深い洞察がある。
フィクションは事実ではない。しかし人はフィクションから世界の真実を学ぶ。偽物の両親が作った偽物の番組であっても、そこには何かの真実が宿っている。
良くも悪くもスターウォーズという映画史でも一際有名なフィクションに人生を変えられたマーク・ハミルがこの映画にキャスティングされているのは大正解だと思う。役から発する彼のセリフは彼自身の人生も投影されているような説得力がある。
こんな映画だとはつゆほども思わなかった、意外と深くて刺さる掘り出し物の一本
実に奇妙な一作だ。可愛らしいクマさんをめぐる冒険活劇かと思いきや、冒頭からすでにコメディともシリアスともつかぬ線上を綱渡りするかのような、なんとも言えない妙味が炸裂。序盤は『トゥルーマン・ショー』などでおなじみの「メタ・フィクション」というテーマを濃密に描き込み、中盤からは『桐島、部活やめるってよ』のような「自分の手で映画を撮ろう!」的な高揚感あふれるダイナミズムを発動させる。かくも一粒で二度おいしいではないが、一本の中にいくつもの趣向やテーマ、メッセージ性が内包され互いに影響を及ぼし合うのを堪能することができる。
作り手によると「『自分にとっての全て』と思い込んでいたものが突如終焉を迎えた時、人は一体どうするのか?」に焦点をあてた作品でもあるとのこと。人間の生活、人生、暮らしのみならず、宗教、国家、文化に置き換えたとしても多元的で複層的な解釈ができる、極めて現代的な作品と言えそうだ。
二律背反の窮屈さからグレーゾーンへの脱出!
幼児誘拐と拉致監禁、本来ならものすごくどんよりするテーマだが、尾の映画はふんわりと優しいコメディ仕上げ。しかし決してキレイごとではない。
善か悪か、本物か偽物か、現実かファンタジーか。二者択一するにはこの世界は複雑で曖昧に過ぎるし、ムリに切り分けるとこぼれ落ちてしまう大切なことがいっぱいある。この映画は、そんな二律背反の堅苦しさから、キャラクターを、映画を、人生を解き放ってくれる。
清濁併せ吞む、というほど大仰でなく、ただ目の前のできること、やりたいことを積み上げていけば、幸せは見つかるのではないか。
もちろん現実はこの映画よりどす黒く、汚いかも知れないが、この映画程度のささやかな善意や希望は望んでもいいのではないか。
ネタバレが怖くて曖昧なことしか書いていませんが、本物の「いい映画」に出会えて本当に嬉しい。
『コカイン・ベア』もいいけど、全然別物
テレビ番組『サタデー・ナイト・ライブ』のスタッフが集まって作った作品で、監督のデヴィッド・ローレンス・マッカリーは今話題の『哀れなるものたち』(2023)のエマ・ストーンの旦那さん。
ジェームスの「好きなこと」は
やっぱり一番すごいのは、この設定なら普通はこんなストーリーになるんじゃ?みたいな、ある意味常識といってもいいようなことを吹っ飛ばしてちょっと違うストーリーにしているところだよね。
とはいっても完全に無視しているわけではなくて、ジェームスはもちろん、本当の両親も、偽の両親も、痛みや苦しみは節々からみてとれる。ただ、強調して描写することがなかっただけでさ。
痛みはあるけどあえて見せない優しさがいいよね。
ではどんな物語だったかというと、勇気と、好きなことを諦めない気持ちと、最終的にはジェームスが現実という光の国で生きていく立ち直りの物語だったよね。
ジェームスの好きなことというのがブリグズビーベアだと思うかもしれないけど、ブリグズビーはジェームスが自分を投影した勇気の形、自分を表現し伝える手段というだけで、彼が本当に好きなことはもう少し先にあるのもいいよね。
ラストシーンでブリグズビーが手を振ったあと、ジェームスの中の光の国と現実世界が同一になり、更にもっと「好きなこと」に邁進するのかなとか考えると自然と笑みがこぼれるよね。
スターウォーズ・ファンをやめてしまう前に
これはどう見てもジョージ・ルーカスの生涯を意識した映画だろう。
彼が映画作りに情熱を傾けて「スターウォーズ」で成功を収めるまでにたどった数奇な運命を、ジェームズ青年に重ね合わせて描いてある。
個人的な出来事で恐縮だが、「最後のジェダイ」はひどかったと今でも思う。それでも劇場に3回見にいったし、今年予定されている新作も楽しみにしている。しかし、友人の一人は、もうファンをやめてしまった。レイアの「あれ」を見てしまった後に、何とも言えないむなしさを覚え、熱心に集めてきたフィギアなんかも手放し、「ハン・ソロ」も見たいとも思わず、何を話してもなしのつぶて。実に残念なイベントだった。ライアン・ジョンソンは罪作りなことをしたものだ。
そう考えると、この映画は、ファンにとっては刺さりまくる演出が、そうじゃない人にはただのガラクタに見えるし、実際にガラクタなのだと知らしめてくれる。そして、ジェームズ青年の育ての親、マーク・ハミルも、ファンタジーな設定を奇妙なほどピタリとはまって演じている。彼がいなければ、この映画は本当に成立しない。
友人にもう一度言いたい。「せめて、ファンをやめる前にこの映画だけでも見てよ」と。
2019.6.10
安心して観られるし、ちゃんと笑える暖かいコメディ!
ストーリーの大筋は知っていたけど、ジャンルはコメディだと思ってたらから、前半のエモーショナルな雰囲気に驚いた!
音楽も画もしっとりとしていて、「バカコメディではないんだな〜」と。
最初の、「空気が汚染されてるから〜」とかのところは、大筋知っていてもうまいことミスリードされて、「どんな世界線なんだ…!?」とグイグイ引き込まれたので、前情報なしで見る方が面白かったかも。
ホームパーティ(?)のシーンは、世間知らずな主人公がなんか若者に陥れられたりするのかなぁと思ってビクビク観てたけど、みんなほんとに優しい人たちでよかった。笑
刑事さんから、ベアの頭や小道具を受け取るときの、「本物だ!これはアツすぎる!」とウキウキしてるのが、クマガチ勢って感じで面白かった!笑
友達に布教してビデオ貸して、2人で「あのシーンやばいよな!!」と言い合って…少年って感じでよかったし、作品を共有できて嬉しそうな主人公の表情がよかった。
友達くんが、古いSF好きっていうのも納得できるところだったし、ブリグズビーベアのビデオの感じや設定もめちゃくちゃそれっぽくて面白かった!
劇的な状況に置かれてたのに主人公が終始あっけらかんとしているのも、ほんとにクマのことしか考えてないのも可笑しかった!笑
周りの友達や昔の家族や今の家族が、総じてみな優しかったのが良くて、安心してみられる作品だった。
主人公が、「昔のパパ」と呼ぶのがよかったし、刑事さんや新しい両親も、主人公との付き合いが深まるにつれて主人公の心情に寄り添って、「誘拐犯」ではなくて「昔の両親」へと認識を変えていくのがとても柔軟で優しかった。
新しい世界
25年も外の世界に触れず、両親(実は血の繋がってない誘拐犯!)と3人だけで暮らしていたジェームス。周囲には人も住んでないし、家の外は空気が汚れていると教えられている。友達もいない彼は、週に一度渡されるビデオテープを楽しみにしていた。そのビデオのタイトルが、「ブリグズビー・ベア」。
誘拐されて、25年何事もなかったのがすごい。病気になったら。けがしたら。天災に遭遇したら。ジェームスが反抗したら。巧妙に様々な困難をクリアした、テッドとエイプリルは、ある意味すごい。しかも、体操させたり、道徳を植え付けたり、架空ネット上とはいえ人と交流させたり、教育プログラムは侮れないレベル。このエネルギーをもっとまともな方向に使えば良かったのにねぇ。
突然環境が激変して、相当困ったであろうジェームス。一方探し続け、待ち続けた息子でも、変わった言動に戸惑う両親。妹だって突然兄と言われても、ついていけない。こういう場合、他人の方がけっこう付き合いやすい。ジェームスにとって、世界の全てだったブリグズビー・ベアを、面白いと言ってくれたスペンサー。映像方面に進学するスペンサーの助力で、ブリグズビー・ベアの続きを、自ら作ろうと決めた。さあ、ここからまっしぐらに青春ストーリーへ!
ニセ父テッドのファニーボイスを聞けるだけでも、見ごたえのある作品(笑)。じんわりほんわか、笑って泣ける小品。
フジテレビの放送を録画視聴。
ヴィジュアルからもっとポップでファンシーな物語だと思ったら拉致監禁...
ヴィジュアルからもっとポップでファンシーな物語だと思ったら拉致監禁逮捕など結構ダークな題材だったけど
ブリグズビーベアと主人公の温かみのある明るさで
ダークさは全く感じることなく見れまっせ
大人のNHKおかあさんと一緒って感じ
[個人的には] 面白かったです
[個人的には] 面白かったです。 物語も すてきでしたし、 何より主人公に感情移入できた事が良かったです。 ただし、 [好き嫌いが わかれる作品] だとおもいました。 エロ グロ バイオレンス がなく、 最新技術の CG もなければ、 派手なアクションも有りません。 明らかに低予算作品でした。 これで喜ぶのは私くらいでしょう。
また、 幾つかの疑問点もありました。 作品内で [しろうとが作った番組を多くの人が しちょうした事、 そして高評価した事] が不自然でした。
創作活動をしたくなる
海外の映画館で鑑賞。
監禁モノにおける話のメインは脱出になりがちだがそうではない作品もある。
「ルーム」は中盤で脱出し、本作では開始5分で救出される。「ルーム」では脱出後の世界も地獄だったが、本作の主人公はそれまで暮らしていた両親が誘拐犯だったと知るところからのスタートになる。それも25歳で。
自分の好きな物語が突然終わってしまった、なら自分の手で続きを作ろう!となるオタク根性が素晴らしい。
役者になりたかったと語る刑事に、なぜ夢をあきらめたのかと言うジェームズの無垢で残酷な問い。
人はいつ自分の創造性に見切りをつけるようになるのだろうか。ジェームズに協力することで生き生きし始める刑事が良い。
クリエイターの端くれなら、観た後に創作活動をしたくなる一作。
なんじゃこの映画
心の底がいやされる‥‥
「なぜ やめたの」
「芝居か? ‥人間、年を取れば変わるものさ」
「‥好きなことをあきらめるなんて」
長く偽りの世界(軟禁状態)で無垢なまま育てられた主人公の正直なまなざしが、関わる人たちの心の古い角質みたいなものを剥がしていく。
そんな彼に育てあげたのが誘拐犯夫婦だという不条理の複雑快感というか、少々ご都合主義でもこの際ずっと癒やされて浸っていたい作品世界というか。
期待値が高過ぎたのか、あんまりだった。 主人公が大人だからというの...
期待値が高過ぎたのか、あんまりだった。
主人公が大人だからというのもあるかもだけど、「ルーム」とか「八日目の蝉」のほうが面白かったかな。
【”僕は初めての友人達と一緒に広い世界で”ブリグスビー・ベア”を作りたいんだ!”幼き時に誘拐された青年の”ブリグスビー・ベア”に対する熱い思いに打たれた人々の、愛と友情、適応と人生再生の物語である。】
<Caution! 以下、内容に触れています。>
ー 幼き時に、テッド(マーク・ハミル)と妻、エイプリルに誘拐されたジェームズは、彼らが製作したVHSに録画された”ブリグスビー・ベア”を地下室で見ながら、独りで育った。
そして、その”ブリグスビー・ベア”はテッドが、彼のために制作した作品だった。-
◆感想
・今作は、「ルーム」のような作品構成である。
が、ジェームズを幼き時に誘拐したテッド(マーク・ハミル)と妻、エイプリルの行為は許されるものではないが、彼らはジェームズをとても大切に育てていた事が分かる。
・そして、二人が検挙され、本当の両親、妹と20年振りに出会い、ジェームズは初めて広い外の世界を体験する。
- ここの描き方が、良い。
本当の両親、妹や、新しく出来た友人達、そして元役者のヴォ―ゲル刑事。皆、無垢な彼に優しい。
そんな中、映画を大スクリーンで観たジェームズは、自分自身のオリジナル”ブリグスビー・ベア”の制作を始める。
絵コンテを書いて、ストーリーを練って・・。-
・”夢を諦めたのか!”と言われた元役者のヴォ―ゲル刑事が、彼のために押収品を提供するシーンも良い。その中には、”ブリグスビー・ベア”の頭もある。
・そして、ジェームズが訪れた人。それは、”ブリグスビー・ベア”を長年担当していた、拘束されていたテッドだった。彼も又、ジェームズのために”ブリグスビー・ベア”の声を担当する・・。
<ジェームズのオリジナル映画”ブリグスビー・ベア”が上映されるシーン。彼は緊張の余りトイレで吐いているが、友人スペンスはその姿を優しい目線で見ながら劇場に戻る。
恐る恐る劇場に戻ったジャームズが観た、満場のスタンディングオベーション。
今作は、ジャームズの”ブリグスビー・ベア”に対する熱い思いに打たれた人々の、愛と友情、適応と人生再生の物語である。>
ブリグズビーとの友情
偽親や本当の家族の細かい葛藤など必要最低限にして
語りすぎることなくどこまでも優しい世界をみせてくれた
ブリグズビー
異常者の作った洗脳番組、キャラクター
一般的に見たら気持ちが悪いもの
ジェームズは外の世界に出ても
ブリグズビーの素晴らしさを信じた
ジェームズからすれば現実の世界への解放は
宇宙人に捕獲されたようなもの
この世界が正しくて
間違った世界で生きていた
押し付けられるジェームズが辛かったけど
実の家で育っていたら全く違う人間になったはず
もしかしたら真面目なお堅い仕事をしていたかもしれない
この世界の多くの大人は夢を捨てて生きていく
この世界をジェームズには理解しがたいけど
色々と理解しようとした上で
それでも諦めず物語の先を、夢を掴もうと
作ることを心から楽しんでいるジェームズに
周りの皆は心を動かされる
理解しようとする周りの人が沢山いたから
こんなに優しい作品に仕上がったのだと思う
ジェームズがブリグズビーと目を合わせ頷くラスト
君を信じて良かった
そうお互いを称えあってるように聞こえた
温かい作品。
みんな良い人すぎてリアリティはないけれど、ただただ見ていて温かい気持ちになる映画も大切だなと思う。
25歳で初めての世界にすぐ適応したのも上映時間から仕方ないかな。自分を作ったブリグズビーの続きがないのであれば作ってしまおうという発想は凄く良い。あれだけ賛辞を得れるかは別として、ジェームズの心の整理のためにも必要なことだった。スペンスの友達の理想像感がかなり最高。
元父との再会に冷たすぎる感は否めない。誘拐犯でもジェームズの中では育ての親になるはずなのでもう少し何かあってもいいような気はした。
もっと子供向け映画だと思っていたから、良い意味で裏切られた。逆に子供と見るには難しいけど、どこか希望を持たせてくれるような作品。
全127件中、1~20件目を表示