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◆ライオン・キング

高度な写実性が放つ"王位継承"の説得力よ。これぞ映像技術の勝利!
  ジョン・ファブローといえば、「アイアンマン」の運転手兼ボディガード役・ハッピーを演じて厚かましい存在感を放っているが、監督として映画撮影の革新に寄与したゲームチェンジャーだ。ことに前作「ジャングル・ブック」(16)は、スタジオにオンタイムでグラフィックを提供してVR(仮想現実)空間を構築し、役者の演技やカメラモーションを得る「ヴァーチャル・プロダクション」を用い、フォトリアルな密林世界を創り出した。

  そんなヴァーチャル・プロダクションをさらに発展させた彼の新作「ライオン・キング」は、3Dでモデリングした自然環境に、キーフレームアニメの動物だけを配したフルCG作品となり、そこにはもはやナマの人物や風景を直に捉えた撮像はない(なので「実写版」という呼び方は不正確)。にもかかわらず、動物たちが人語を発し、いい歌声を聴かせる状況を除けば、まるで「アース」(07)のようなネイチャー・ドキュメンタリーを見るかのごとき現実の野生そのものである。

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  そうした成果によって、本作は1994年版以上の何を得ることができたのか? ひとつは「ハムレット」にも似た王位継承と内部闘争のドラマに写実性が与えられることで、セルルックな前回をしのぐ威厳と説得力がもたらされている。そしてもうひとつは、94年版がこうした映像表現へと変質・進化しても、テーマが普遍性をもって現在の観客に訴えかけてくることの実証がなされているのだ。

  また本作は、ナラやシンバの母親サラビなど雌ライオンたちの描写が増しているところに、94年版との違いが見られる。これは実写版の「アラジン」(19)が王女ジャスミンの自立心を追補して賞賛を得たように、女性の権利に目配りする現代ハリウッドの流動に沿ったものだろう。そんな彼女たちが劇中で一石を投じることによって、シンバが王たる存在としての自覚をうながされていく。94年版の彼はどこか歌って踊って悩みなく成長してきた印象があり、こうしたアレンジはオリジナルが抱えていた弱点の補強ともいえる。

  なにより幼少期のシンバの可愛らしさは、誰彼かまわず観る者のハートを射抜く。特にネコ動画を眺めてニヤニヤが止まらなくなる人は、劇場で萌え死ぬかもしれないのでご注意を。実際のライオン以上に感情表現を演出した、まさにデジタルのなせるワザ。今年だけで「ダンボ」(19)「アラジン」ときて本作と、ディズニークラシックのリメイクが供給過多だと敬遠してはいけない。ここ数年の商業映画において「ライオン・キング」は、技術的な成果があまりにも飛び抜けている。

(尾崎一男)


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