劇場公開日 2019年2月1日

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「2ペンスを鳩に」メリー・ポピンズ リターンズ bellさんの映画レビュー(感想・評価)

0.52ペンスを鳩に

2019年2月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

もうこの世界にメリーポピンズはいないんだ。そのことが痛感させられてしまう映画で、観終わった後、ただひだすら悲しかった。

前作は何度観返したか知れない。
「ひとさじのお砂糖」というメリーポピンズの言葉に、これまでの人生で何度救われたことか。
続編が作られたと聞いて、
「メリーポピンズが戻ってきてくれた!」
「社会に疲れた私たちのために、メリーポピンズがまた来てくれた!」
そう思っていたのに。

前作での「2ペンス」のエピソードを思い出す。
大聖堂の階段で鳩の餌を売るおばあさん。彼女は毎朝そこにいるけれど、周りの大人たちは誰も彼女に気付いていない。
だってずっと下向いて速足で歩いてるから。
でもメリーポピンズは知っている。おばあさんが何を語りかけているか知っている。

「2ペンスで鳩に餌をあげませんか。
巣では小さな雛たちがお腹を空かせて寒さに凍えてる。
たった2ペンスでいいんですよ。
あなたのその2ペンスで、鳩に餌をあげませんか。」

メリーポピンズの歌を聴き、ジェーンとマイケルは2ペンスを握りしめて大聖堂に向かう。
鳩に餌を買うために。凍えた空腹の雛を救うために。

それなのに、お金を増やすことにしか興味が無い彼らの父親は、銀行員と一緒になって2人に詰め寄って、
その2ペンスを無理やりもぎ取ってしまった。

続編の感想でよく耳にする。ネットでたくさん書かれてるこの言葉。
「あの2ペンスの伏線回収がすごかった!」「2ペンスの使われ方に感動!」

続編を作った人たちも含めて、前作の何を観ていたのだろう、と思う。

結局、お金が一番。金儲けが全てを救う。
2ペンスは汚い鳩なんかにやらず、やっぱり銀行に預けるべきだったんだね!

メリーポピンズが鳩のおばあさんを通じて、私たちに優しく語りかけてきたこと。
ひとさじのお砂糖が、心と人生に深い色どりと幸福を与えること。
今のこの社会には何も伝わっていなかったんだなと思った。
あんなに素晴らしい前作なのに、何ひとつ伝えることができていなかった。

続編を見て、何がこんなに私をさびしく、悲しくさせるのだろうと考えた。
前作メリーポピンズが厳しく、静かに、さりげなく私たちに示し続けてきてくれたこと、
そのことは現代に何も受け継がれていなかった。
あのディック・ヴァン・ダイクにさえ。
そのことがただひたすら、さびしくて悲しい。
こんな事実、知りたくなかったのに。

受け継がれていてほしかった。
メリーポピンズは、ちゃんとメリーポピンズであってほしかった。
本当のメリーポピンズはもうどこにもいない。
前作が前作のまま、私の思い出の中で美しく輝き続けるためにも、この続編は見るべきじゃなかった。

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bell