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◆セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!

分断と対立の現代に、はぐれ中年たちの願いと絆(とSF愛)が時空を超えて届く
  冷戦終結期の実話に奇抜な創作を織り交ぜ、時代に翻弄されながらも助け合う人々の姿をユーモアと風刺を効かせて描き、SF映画へのオマージュも添えたコメディが、キューバから届いた。

  タイトルロールの一人であるセルゲイのモデルは、"最後のソビエト連邦国民"と呼ばれた宇宙飛行士セルゲイ・クリカレフ。ミール宇宙ステーション滞在中にソ連が崩壊し、帰るべき国がなくなってしまう。彼が地上の民間人たちと無線交信していたエピソードをヒントに、キューバ人監督のエルネスト・ダラナス・セラーノが、生活苦にあえぎつつも家族と幸せに過ごした当時の自分を主人公セルジオに投影して脚本を書いた。

  社会主義陣営解体の余波を受け、経済危機に苦しむ1991年のキューバで、大学教授のセルジオ(トマス・カオ)は年老いた母と幼い娘(ダイナ・ポサダのキュートで自然な演技!)の食費もろくに稼げない。趣味の無線で国外の情報を探っていたある日、ミールに単身滞在するセルゲイ(ヘクター・ノア)との交信に成功。夜な夜な語り合ううち、激動の時代から取り残された二人はいつしか親友になっていた。

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  セルジオのもう一人の無線仲間は、ニューヨークに住むジャーナリストで、「アポロ計画の陰謀」の本を書いたピーター。演じるロン・パールマンは、キューブリックがアポロ11号月面着陸の映像を捏造したという陰謀論をネタにしたコメディ「ムーン・ウォーカーズ」でCIAエージェントに扮していたし、ピーターの台詞には「カプリコン・1」も出てくる。SF好きならニヤリとさせられるキャラクターだ(SFつながりでもう一つ、ある人物が空中浮遊するマジックリアリズム風味の爆笑シーンの背景で「美しく青きドナウ」が流れるが、これはもちろんキューブリックの「2001年宇宙の旅」)。

  祖国のゴタゴタで宇宙に取り残されたセルゲイを何とか帰還させようと、セルジオとピーターは国も立場も越えて協力する。この展開には、オバマ政権下で「キューバの雪解け」と呼ばれる米国との関係改善が進んだのに、トランプ政権によって関係が冷え込みつつある現状を憂う思いが読み取れる。宇宙から地球を写す映像、街の俯瞰ショットの多用も、国境や制度で人を分け隔てるのはちっぽけで愚かしいことだと諭すかのようだ。

  映画には、政府や不況に苦しめられても、知恵と力を出し合ってがんばれば何とかなるさ、というラテン気質のポジティブさがある。ラム酒を自宅で密造してひと稼ぎしたセルジオ一家が、キューバ音楽に乗って踊るノスタルジックな多幸感たるや。経済事情ゆえ限られた予算でも工夫次第で、壮大な構想と詩情あふれる映像によって人と人の絆を描く作品ができることを証明した、ダラナス監督の人柄と生き方が伝わってくる。

(高森郁哉)


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