劇場公開日 2018年6月8日

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「スイミーの強度、儚い個の集まり」万引き家族 nagiさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0スイミーの強度、儚い個の集まり

2018年8月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

スイミーは何故、仲間と集まったか、知ってる?

この祥太の言葉が、この作品の本質を表す。
スイミーを読み返してみると、スイミーは、外界の脅威に怯え小さな洞穴にじっと身を潜めて暮らしていた仲間に、自らが外の世界で見てきた美しく、雄大な光景を見せてあげたい、その思いで集まって大きな魚となる事を提案していることがわかる。

繋がっていないからこそ繋がろうとするのである。
血の繋がりはない。だが、似たような境遇で、1人では世の中から掻き消されてしまうような儚い存在...そんな彼らだからこそ、互いに繋がろうとし、自分だけでは知り得なかった世界を経験する(させる)のである。そのつながりである「悪」によって、彼らの「善」が明るみになるのである。

個では何とも儚い存在である彼らが、集まって擬態することで、実際以上の強度(繋がり)を持つ...これがスイミーの主題であり、『万引き家族』の主題である。

家族より家族らしいなら異常だっていいじゃないか。

幸せすぎては見えない、明るすぎては見えない。異世界における豊かさ、陰の中にポツンと煌めく幸福こそ、平和すぎて盲目となっている現代に響く普遍的主題だ。

nagi