劇場公開日 2018年12月21日

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「過去のスタア誕生を上書きして21世紀に生きる私達のスタンダードとなって長く記憶に残るだろう」アリー スター誕生 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0過去のスタア誕生を上書きして21世紀に生きる私達のスタンダードとなって長く記憶に残るだろう

2019年2月13日
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鑑賞方法:映画館

心が震えました
そして泣きました

4度目のリメイク、翻案作品は数知れず
もはや日本でいえば忠臣蔵並みに世界中の誰もが筋書きを知っています
どう展開して結末はどうなるのかも私達は知り尽くしているのです
しかし、それでもなお感動するのです

あのジュディ・ガーランドという天才の名演と歌唱が多くの人々の記憶に刻まれています
彼女を基準に比較されてしまうが故にこのスタア誕生という古典に挑戦することは物凄く大きな勇気が必要なはずです
それでもなお果敢に挑戦した、レディ・ガガの気概たるや恐るべきものです
そして、その挑戦に勝利していると断言して良いと思います

レディ・ガガは21世紀のジュディ・ガーランド足り得る実力を示して見せたた思います
芸のレベルでいえばまだまだ及ばないかも知れません
しかし彼女の表現力と実在感はジュディすら凌駕していると思いました

音が素晴らしい
ロックの音がしています
ミキシングとトラックダウンにロックの事を分かっている人が関わっていることが、冒頭いきなり分かります

ジュディ版と比較したときに、本作はジャクソンに焦点が多く当てられています
それは冒頭のステージでの歌詞、アリゾナでの話と重層的に彼の人格と人間性の成り立ちをしっかりと描かれています
それにより鏡の向こう側のアリーの姿が一層際立つことになりました

ガガの等身大の姿とステージ立つスターとなる虚像との乖離
ジャクソンの心との距離を楽曲とダンスのシーンで見事に表現しています
サタデーナイトライブのアクトは売れ線でありマネージャーが代表する音楽産業的には全くの正解であって正しい方向です
しかしそれを見て落胆するジャクソンの気持ちが痛いほどに伝わる名シーンでした
彼もそれが正しいことは十分に承知して理解しています
しかし違うものは違うのです
決定的瞬間でした

ジャクソンとアリーの森の中の家
ジュディ版の海を望む全面窓が多用された家のイメージを継承していました

1976年版と比べると本作は完璧にこれを下敷きにしています
ジャクソンは姿形、楽曲まで似せています
バーバラストライサンドは流石の歌唱でした
けれどハッキリいって本作の方が上です
ガガの表現力はとんでもないレベルということが
良く理解できます
脚本も1976年版で描き切れなかった部分を完全に補完してくれています
改めて本作の素晴らしさを実感しました

スターは世代交代を繰り返し、時代は流れて行きます

ガガ版のスタア誕生は、過去のスタア誕生を上書きして21世紀に生きる私達のスタンダードとなって長く記憶に残るのではないでしょうか
それ程の名作だと思います

あき240