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◆未来のミライ

お兄ちゃんの自覚、という小さくて偉大な一歩を刻む4歳児の大冒険
  細田守監督は一貫して自らの家庭体験を描く人だ。結婚してたくさんの親戚ができたら「サマーウォーズ」を作り、子どもが生まれ、子育てする母親を目の当たりにしたら「おおかみこどもの雨と雪」を発表し、男の子が生まれたから「バケモノの子」を作った。今回も例に漏れず細田監督自身の家族体験が発想の元となっている。

  今回細田監督が描くのは、4歳の長男がお兄ちゃんだと自覚する瞬間だ。立ちはだかる壁は、狼と人間の種の違いや異世界のバケモノでもなく、自らの嫉妬心である。今まで両親の愛を一身に受けていた4歳の子どもが、ある日突然やってきた赤ん坊に親の愛を奪われてしまう。

  4歳の子どもにとって初めて訪れた人生の試練。細田監督はこれを時空を飛び越えるダイナミックなファンタジーとして描いてみせた。妹のミライ(黒木華)が成長した姿でくんちゃんの前に現れ、母親の子ども時代やさらに過去、そして未来へと旅をし、多くの出会いを経て成長し、「お兄ちゃん」としての自覚を身につける。小さな男の子の小さな冒険を、家族の歴史とリンクさせることで大きな歴史の中の1ページとして提示したことで生命のつながりのかけがえのなさも描いている。

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  細田監督は、娘が生まれ、4歳の息子に妹ができた時、彼が親の愛を奪われ泣き叫ぶ姿を見て、愛を失う人とはこういうものか、と感じたと言う。人生は愛を巡る物語で、ときには失い、時に得たりしながら人は成長していく。その成長の瞬間を愛情たっぷりに描いてみせた。

  本作は、子育てするお父さんの奮闘記としても面白い。主人公の家庭は、フリーの建築家のお父さん(星野源)が家に残り子育てをし、お母さん(麻生久美子)が会社へ出勤する。くんちゃんが赤ん坊の時は、「仕事に逃げて」子育てに参加していなかったお父さんは、そのことを悔いている。

  育児という「当たり前」のことを母親に押し付けていたことへの自責の念とともに描かれるお父さんの姿は、細田監督自身が投影されているのだろうか。そこには女性の社会進出と男性の子育て参加という現代的な問題意識も見て取れる。

  自身の私的な領域にとどまらず、現代社会を広く見つめる細田監督の眼差しが本作に大きな普遍性を与えた。細田守の作家としての成熟を感じさせる、快心の一作だ。

(杉本穂高)


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