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◆フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法

アメリカの夢と現実の狭間に潜むもうひとつの世界 少女の熱演に圧倒される!
  フロリダのディズニー・ワールドは世界最大のアミューズメント・リゾート。しかし、その外側には、ホームレス寸前の社会的弱者が暮らすモーテルが立ち並んでいる。富裕層の笑い声が響く夢の世界と、貧困層の溜め息が渦巻く現実の世界。アメリカの格差社会を象徴する光景だが、ショーン・ベイカー監督は2つの世界を対比させず、夢と現実の狭間に潜むもうひとつの世界を6歳の少女の視点から切り取ってみせた。

  少女ムーニー(ブルックリン・キンバリー・プリンス)は、失業中のシングルマザーとモーテルに住んでいる。その日暮らしの毎日も、ムーニーにはワクワクの連続だ。牛のいる草原へ「サファリ」に出かけたり、トップレスの熟女の日光浴を見物したり。いたずらの罰としてやらされる車の掃除も、親友と一緒なら遊びに変わる。明日の食べ物に事欠く状況にあっても、心は幸福で満たされている。そんなムーニーの見たまま、感じたままの世界を、ベイカー監督はフロリダ独特のパステルカラーを使って表現した。うまい演出だ。

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  とはいえ、劇中のすべての物事がムーニーの視点から描かれるわけじゃない。時には俯瞰的な視点から社会の歪みが浮き彫りにされる。最も印象的なのは、ムーニーら子供たちがズラリと空き家の並ぶ住宅街に探検に出かけるシーンだ。住む家がなくモーテルで暮らすしかない人々がいる一方で、住む人がなく廃墟と化していく家々がある。需給のアンバランスが、何かがおかしいアメリカを物語っている。

  このシーンを境に、ムーニーのパステルの世界に少しずつ現実の黒い影が忍び寄ってくる。彼女が子供でいられる時間のカウントダウンが始まるのだ。それに気づいた母親ヘイリー(ブリア・ビネイト)の「見た目」から、無邪気にバイキングのごちそうを頬張るムーニーの「最後の子供時代」を捉えた場面が切ない。そしてついに訪れる大人への通過儀礼の時。「スタンド・バイ・ミー」の、あの名場面を彷彿させるブルックリンの熱演に圧倒された!

(矢崎由紀子)


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