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◆君の名前で僕を呼んで

ティモシー・シャラメの輝かしい魅力に満ちた主演デビュー作
  「君の名前で僕を呼んで」を観て、この映画の脚本を手がけたジェームズ・アイヴォリーの監督作品「眺めのいい部屋」(1986)を思い出した。あの映画の舞台は20世紀初頭。イギリスの上流階級の少女がフィレンツェの陽光のもと、頑なだった自分を捨てて恋に落ちる物語だった。今回は80年代の北イタリアが舞台。そこで両親と長いヴァカンスを過ごす少年エリオが出会ったのは、年上の青年オリヴァーだ。

  熟れた果物に歯を当てた時に飛び散る汁のように、夏の光が二人に降り注ぐ。青い湖のせせらぎが、風が、ピアノの音が、エリオを官能へと誘う。我を忘れるような最初の恋の感覚が観る側の身体になだれ込んでくるような、センシュアルな映像が素晴らしい。そしてこの恋の描写はとてもデリケートだ。オリヴァーはエリオの思慕を利用して、彼を支配するようなことはしない。ゆっくりとエリオの真意を確かめるように、彼の無垢を慈しむように、青年は少年に近づいていく。だからこそ、二人が結ばれるシーンは美しいのだ。十代が年上の人間とひと夏の恋を経験して、大人になっていくというプロットの映画は沢山ある。だけど、この映画のエリオほど大事にされた主人公はいない。このデリカシーは「君の名前で僕を呼んで」が普遍的でありながらモダンな作品である証のひとつになっている。

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  溶け合うように肉体的に結ばれた時、オリヴァーはエリオに「君の名前で僕を呼んで」と囁く。今やエリオはオリヴァーで、オリヴァーはエリオである。夏が終わる頃、エリオは永遠に自分の一部だったものを失い、新しい彼になっていく。そのエリオを包む父親のパールマン教授を演じたマイケル・スタールバーグがいい。彼はエリオの恋を裁くような真似はしない。パールマンが最後にエリオに話すシーンは感動的だ。これはどのような初恋も祝福されるべきだという、ジェームズ・アイヴォリーから若い世代へのメッセージなのだ。そして劇中のエリオと同等に、この作品ではティモシー・シャラメという新しい才能がとても大事にされている。たった今しか観られない彼の輝かしい魅力に満ちた、主演デビュー作だ。

(山崎まどか)


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