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◆ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書

"20世紀の映像記録人"が描く、世紀を跨いで心に突き刺さる今日的なテーマ
  20世紀に起きた様々な出来事を映画にして後生に伝えることがライフワークだと語るスティーヴン・スピルバーグ。彼がトランプ政権誕生の瞬間に製作を思い立ち、たった1年で撮り上げたという最新作は、ベトナム戦争の最中に発覚したアメリカ政府による隠蔽工作を広く国民に告知しようとしたメディアの闘いを描きながら、狙い目は過去ではなくたった今。政治に対する抑止力としてのメディアの立ち位置をはっきり描いて、過去のスピルバーグ作品と同じく、そのテーマは世紀を跨いで人々の心に直球で突き刺さる。

  1971年、ベトナム戦争があらゆる意味で実は失策だったことを記した機密文書の存在を、まずはニューヨーク・タイムズがすっぱ抜いた。それを知ったホワイトハウスのお膝元であるワシントン・ポストは、さて、どうするか? 文書のリーク元からコピーを受け取り、独自の取材を展開しようとする編集主幹のベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)は、時のニクソン大統領が刑事告訴に踏み切ることを睨んだ上で、ある人物に記事掲載の是非について決断を委ねる。社主のキャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)だ。

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  歴代大統領と公私共に蜜月関係を続けて来たブラッドリーが、時代の変化に呼応するメディアのあるべき姿を、少しの諦めと懐かしさを感じつつ語りかけるのに対し、グラハムはあっさり掲載を即決する。夫亡き後、新聞社を引き継ぎ、無能で社交好きな女性オーナーと蔑まれ、差別されて来た彼女が、会社存続か良心かという二者択一を迫られた時、当たり前のように後者を選択するのだ。

  それは、男性主導の世界に身を置き、秘かに疑問と怒りを溜め込んできたグラハムの痛烈なしっぺ返し。メリル・ストリープのこの種の設定でありがちな力演でなく、肩すかしのように軽妙な演技が、男女平等という最も今日的な問題を、約半世紀昔から今も変わらぬ現在へと運ぶ大事な役目を果たしている。

  女性のさらなる社会進出と、国民には見えない政治や社会の裏側に隠れた事実を次々と暴いてきた新聞及び新聞文化へのエールが、当時使われていたタイプライターや電話機、印刷所内の機器やシステム等、優れた時代考証と共に描き込まれた本作。"20世紀の映像記録人"スピルバーグが今、扱うべきテーマは、他にもまだたくさんありそうだ。

(清藤秀人)


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