劇場公開日 2018年2月10日

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「哀女」悪女 AKUJO 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0哀女

2018年6月26日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

興奮

女暗殺者を主人公に、これぞ韓国映画!とでも言うべきハード・アクション。
とにかくその、アイデア、見せ方を凝らしたアクションの数々に圧倒させられる。

まずは、開幕早々。ヒロインが約50人の刺客を次々ブッ殺していくシーンから始まるのだが…、
これをヒロインの目線=主観映像で撮った大胆&ユニークさ!
主観アクションは最近ちらほら見かけるが、それでも作品の掴みとしてはばっちり。いきなり引き込まれる。
続くは、日本刀アクション。そのバトルをしながらの、バイク・チェイス。ノーCGだと言うこのシーンがマジスゲェ…。
半裸姿のナイフ・アクションも刺された時の痛々しさ含み激しい。
そしてクライマックスは、走るバスに飛び移り、斧を片手に殴り込み。一体どう撮ったんだ?…と思うくらい、映像もスゲェ…。
合間合間に、ガン・アクション、肉弾戦。
容赦ないバイオレンス。
アクションは世界一とふんぞり返っているハリウッドに見せてやりたい。幾らハリウッドとは言え度肝を抜かすだろう。
たっぷりの予算を投じ、迫力やスケールはハリウッドかもしれないが、激しさや迫真さはやはり韓国!

壮絶なのはアクションより、ヒロインのドラマの方。
幼い頃に父親を殺され、犯罪組織に育てられたスクヒ。
その組織の若頭と愛し合うようになるも、敵対組織に殺され、復讐を果たす。
その直後国家情報院に身柄を拘束され、政府直属の暗殺者になる事を強いられる。
妊娠しており、娘を出産する。
ある条件と引き換えに、娘と郊外のマンションで暮らし始め、隣人の男と出会い、恋に落ちる。しかし、この男は…。
男との結婚式当日、ある任務が。ターゲットは何と…!

常に裏社会や巨大権力の下。
特に、国家情報院の冷徹で非人道的な任務や訓練にはゾッとさせられる。
やっと掴んだと思ったささやかな幸せも…。
任務の果てのまさかの事実も…。
血生臭い残酷な運命に翻弄され続ける生き方から逃れられないのか…。
ラストシーンでスクヒが見せた“笑顔”に戦慄…!

今年劇場公開もしくは新作レンタルの韓国映画の中でも、特に期待してた一本。
堂々のBEST!…とは残念ながらならず。ちと難点が2点。
まず、過去と現在が交錯、人間関係などちとややこしい。ちょいとこんがらがってしまった。
それから、恋愛パートが急に別の映画になったかのようにトーン変わり。恋愛パートはヒロインの悲劇を描く上で必要不可欠なのだが、何だかチープな韓国メロドラマを見ているようだった。
(よって、現時点で今年見た韓国映画のBESTは『新感染』か『MASTER』)

スクヒ役のキム・オクビンの熱演は称賛モノ。
激しいアクションの数々をほぼノースタントでこなし、ヒロインの複雑な内面も体現し、そして勿論美しくもあり、色んな意味で魅了される。

監督は、スタントマン出身で、『殺人の告白』でデビューしたチョン・ビョンギル。
『殺人の告白』ではどんでん返しサスペンスの中にも秀逸なカー・アクションを披露してくれたが、本作では前述の通り、監督の“こんなアクションが撮りたい!”というアクションLOVEがてんこ盛り。
また監督が『ニキータ』が好きらしく、本作のベース。ヒロインがウェディングドレス姿でライフルを構えるシーンに、似たシーンは無かった筈なのに継承や敬意を感じ、とりわけ印象に残った。

韓国映画らしいハードなアクション!バイオレンス!
暗殺者として、シングルマザーとして、一人の女として、哀しく過酷な運命…。
監督の思い入れたっぷりのアクション・ドラマに、胸震わされる。

近大