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◆ポップ・アイ

旅人の脳裏をふとかすめた陽炎のような風景が、この映画には映る
  日本に住んでいたらまったく誰も思いつきもしないと思う。タイを舞台にした象と旅する男の物語である。いや、タイに住んでいたとしても果たして思いつくのかどうか。監督はフィリピン人で、一時期タイに住んだことがあるという。旅人の視線と言ったらいいだろうか。仮住まいの人だからこそ思いつくことのできる物語。タイの空気や人々の生活や時間の流れに触れ、タイの人なら当たり前のこととして何も感じないことに驚き感動し、監督の中で何かが動き始める。「象だ、象と旅する男の物語を作ろう!」。バカみたいな思い付きだが、だからこそ語ることのできる物語がある。旅人の脳裏をふとかすめたかすかな影、いや、陽炎のような風景が、この映画には映る。

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  男は中年を過ぎ、いよいよ人生も引退の時期に差し掛かっている。妻との仲も気が付くと昔のようではない。何かをどこかで間違えてしまったのかもしれない。もしかするともっと別な人生があったのかもしれない。やり直したいのではなく、あれではなくこれを選んでしまったことの小さな寂しさが、男の胸を少しだけ重くする。そんな、もはや達成されることはない可能性のかけらが「象」となり、彼の前に姿を現したのではないか。

  だからなのかこの象と旅をしなければならないと、男はやみくもに思う。説明不能なその思いに、男自身も戸惑っているように見える。もちろん観客だって戸惑う。だがそれでいいのだ。タイの空気とゆったりとした時間の流れがわたしたちをその旅に誘う。象の歩みはゆったりしているが、歩幅が大きいので案外早いのだということもわかる。ゆっくりだが早い。まさにこれこそ人生の時間そのものではないか。

(樋口泰人)


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