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◆ライオンは今夜死ぬ

アルトマン的で"カーニバルのような"映画が生き生きとそこに息づいていく
  8年ぶりの新たな快作「ライオンは今夜死ぬ」を放った諏訪敦彦監督。そのFacebookのお気に入り欄、映画の項目にロバート・アルトマンが挙げられているはうれしい驚きだった。なにしろ「H Story」でベアトリス・ダルと組んで以来、彼の歩みは、フランス映画との絆の深さこそを印象づけてきたのだから。しかも今度の新作ではヌーヴェルヴァーグの申し子ジャン=ピエール・レオーを迎え、虚実皮膜の設定や映画の記憶を手玉にとりつつ伝説のスターとがっぷり四つの取り組みをみせているのだ。

  そんな諏訪のお気に入りがアメリカン・インディーズの父アルトマンというのはいかにも意外だった。が、意外の感は、俳優たちが予め定められた脚本の筋道からふらりと飛び出し解き放たれていく様に「これこれ、この素晴らしい無秩序」と満足気な現場のアルトマンをめぐる挿話を思い出すとあっけなく脇に追いやられる。即興演技を基本とする諏訪の映画、とりわけ"こども映画教室"仏版のワークショップを通じて選ばれた子供たちと、今なお子供の魂を失っていないレオーとが、南仏の光の下に解き放たれた新作で射抜くのもまさに"素晴らしい無秩序"、その輝きに他ならない。

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  廃墟のような屋敷で出会った"くそじじい"(などと子供たちは畏れ多くもレオーを呼ぶ)と幽霊の映画を撮ろうと夢中の小さな映画作家たち。屋敷で愛する人の亡霊とまみえながら、子供たちの映画作りに巻きこまれていく俳優ジャン/レオー。そこには現実と非現実の境い目も年齢の差も取っ払われた無法地帯が逞しく健やかに生起していく。街で子供たちの尾行を察知したジャン/レオーは広場で待ち受け子供たちにりんごを投げつける。大人らしい手加減など知らぬとばかりの投げっぷり。子供たちと本気で向き合う"わけわからないがすごい爺さん"との出会いはしかし、お定まりの老人と子供の心温まるお話に収まっていったりはしない。予定調和をまんまと覆すその素敵に無茶苦茶な時空。それをコントロールするよりは放任することで引き受ける監督諏訪の姿勢はまさにアルトマン的で"カーニバルのような"映画が生き生きとそこに息づいていく。映画を共に作ることの真の悦びに染まったその時空は観客にも大人しく鑑賞するよりは活き活きと共に生きることを求めて、やわらかに開かれている。

(川口敦子)


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