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◆女の一生

古典らしからぬ清新さ 現代と通じる醜い世界への静かでしぶとい抵抗の姿勢
  1883年に刊行されたフランス自然主義文学の古典を映画化。そう聞いて思い浮かべるかび臭さや古めかしさをまんまとうっちゃる清新さでステファヌ・ブリゼ監督版「女の一生」はするりと現代の、とりわけ女性観客の胸にすべり込んでくるだろう。

  これみよがしの新しさをふりかざすわけではない。今では稀な1.33:1のスタンダード・サイズで撮られた映画はむしろ、四角く狭いフレームの端正さの中に"古風"な人生を囲い込む。19世紀ノルマンディの貴族の娘ジャンヌの、予め定められた枠を抜け出せない不幸と不運と不自由が目を撃つ。

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  修道院で教育を受け無邪気に理想の世界を思い描いていたヒロイン。彼女が愛する夫に息子に、あるいは親友と信じた乳姉妹や伯爵夫人、さらには母の過去にも裏切られ、それでもどこか夢見る子供のままに人を疑うことをせず、生の行路を全うする姿。それは一見、いかにも受身で古めかしく、ああそういう時代もあったのかと、遠くの景色を眺めるように呟いてみたくなったりもする。が、自分から何かを変えようと動くわけではないとしても、酷くて醜い世界に器用に順応することは退けて、正しい心で持ちこたえていこうとするヒロインの、静かでしぶとい抵抗(とみえない抵抗)の姿勢は現代を生きるちっぽけな存在とも通じるものとして、じわじわと迫ってくる。

  前作「ティエリー・トグルドーの憂鬱」で監督ブリゼは保身を捨て、漸く手にした仕事を手放し、そうすることで人としての尊厳を守るひとりを差し出した。世知辛い21世紀の現実をそうやってなんとか持ちこたえたトグルドー氏の世界とジャンヌのそれとはそう隔たってはいない。あくまでジャンヌの眼差しを芯に世界を切り取って原作とはまた別の、より親密な時空を獲得してみせる監督は、時を自在に飛ばしもする。冬の荒海をみつめるひとりの生を支える春の日の柔らかな光の記憶。それを繰り返し召喚して人生を耐える存在の近しさ、愛おしさ。常にそちら側の人を描いてきたという監督が選んだ主演女優ジュディット・シムラの、かそけくいとけない佇まいも効いている。

(川口敦子)


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