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◆素敵なダイナマイトスキャンダル

末井の尋常ならざる表現活動の原点。映画は普遍的な<母恋い>の物語へと帰結する
  かつて伝説の雑誌「ウィークエンドスーパー」「写真時代」のカリスマ編集長として70〜80年代を疾走した末井昭の自伝的エッセイの映画化である。

  冨永昌敬監督は末井昭の脱力感と微かな狂気がないまぜとなった独特の文体、語り口を作品に生かすべく、時には主人公のナレーションをはさみ、時系列をゆるやかに行きつ戻りつしながら、昭和末期に狂い咲いたサブカルチャーの時代の盛衰をたどっていく。

  時おり、末井昭と驚くほど酷似した表情、飄々とした存在感をみせつける柄本佑がなんともいい味を出している。若き日の末井が客気に駆られ、聞きかじった反体制的な言辞を弄するシーンなど、あの時代を通過した者にはこそばゆいようなリアリティを感じることだろう。

  喧噪に満ちたエロ雑誌編集部のディテールや撮影現場での被写体の女たちとの丁々発止の攻防もユーモラスかつスピーディに活写されており、ミュージシャン菊地成孔が当時の最大のスターたる写真家・荒木経惟を一見、野放図に、戯画化すれすれに演じているのも御愛嬌だ。

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  末井昭の抱えるどんよりとした虚無と倦怠が透けて見える瞬間もある。そのクライマックスが全裸で赤いペンキを頭から被ってストリーキングをやらかす場面である。ここでの柄本佑の狂ったような、なにかとてつもない解放感にあふれた表情、身体表現が素晴らしい。

  冨永監督は、七歳の時、母親が隣家の若者と山中で抱き合ったままダイナマイト心中を遂げるというショッキングな出来事が末井昭の尋常ならざる表現活動の原点にあるという視点を決してはずさない。ときにはリアルに、ときにはシンボリックにこの心中シーンがリフレインされるのだ。妻を演じた前田敦子は原作以上に魅力を放っているが、末井と愛人との道行きから山中をさまよう母親(尾野真千子)へとつながるシーンに象徴されるように、映画は、普遍的な<母恋い>の物語としての帰結をみせる。バブル崩壊後、末井昭にとって啓示的なラブストーリーが始動するが、それはまた別の物語である。

(高崎俊夫)


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