劇場公開日 2017年12月1日

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パーティで女の子に話しかけるには : 映画評論・批評

2017年11月28日更新

2017年12月1日より新宿ピカデリーほかにてロードショー

“ボーイ・ミーツ・ガール”ものの枠にとどまらない、普遍的で大きな愛の物語

ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」のジョン・キャメロン・ミッチェルが、ニール・ゲイマンの自伝的短編小説をベースに生み出した、キュートでちょっとヘンテコな“ボーイ・ミーツ・ガール”ムービー。1977年のロンドン郊外のクロイドンを舞台に、パンクに夢中な高校生のエン(アレックス・シャープ)と、異星人の美少女ザン(エル・ファニング)の恋が描かれる。

2人が出会うのは、エンが友達と忍び込んだ奇妙なパーティ。斬新なデザインの服を着て、パフォーマンス・アートのような動きをしている人たちを、エンたちはアメリカ人旅行者だと思いこむが、実は彼らは異星人だった! リーダー的存在で口うるさいPT(ペアレンタル・ティーチャー)への反抗心から、ザンはエンと一緒にパーティを抜け出すが、ザンは48時間後には遠い惑星へ帰らなければならなかった。

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乱暴に言ってしまえば、これは「ローマの休日」のアン王女を異星人に置き換えた「ロンドンの休日」だ。大人への反発心を共有するエンとザンのストーリーに、体制への反抗や自由への欲求が原動力であるパンクほどふさわしいものはないだろう。最初は「パンク?」と初めて聞くワードにキョトンとしていたが、お仕着せの服にハサミを入れて脱ぎ捨てて、パンクバンドのボーカルとしてステージに立つザンの眩しい変貌ぶりには、エンならずとも目が釘付けに。

シャイで恋愛経験のないエンが、ザンの星独特の愛情表現(手で脇を撫でさせられる、足の指で鼻を撫でられるなど)に戸惑うシーンの童貞感や、エンとザンがツインボーカルで歌うことで一心同体化するシーンのエクスタシーも効果的だ。人間のセオリーに収まらない新鮮な恋愛描写が、すべてのことにドキドキした初めての恋愛の甘酸っぱくてほろ苦い記憶を呼び起こす。

ロンドン・パンクを渦中で経験したサンディ・パウエルによる衣装を筆頭に、エンが作っているミニコミ誌に登場するキャラクター“ウイルス・ボーイ”の扱い方、ザンを取り戻しに来た異星人たちと地球のパンクスたちとの噛み合わないやりとり、77年当時の楽曲とこの映画のために結成されたバンド“ディスコーズ”によるオリジナルナンバーが入り交じるサウンドトラックなど、本作の魅力を数え上げればきりがない。その実態は、“ボーイ・ミーツ・ガール”ものの枠にとどまらない、普遍的で大きな愛の物語。15年後のエンが目にする光景に、存分に驚いてほしい。

須永貴子

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