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◆IT イット “それ”が見えたら、終わり。

キング原作の高い難度を超え、ホラー版「スタンド・バイ・ミー」の境地へと立つ!
  ここ約40年間であまり変わらないものといえば、「うまい棒」の値段と「スティーブン・キング小説の映画化」の高い難度だろう。いや、後者はそれなりにクリアされてたりもするが、評価の良い「キャリー」(76)や「シャイニング」(80)、「デッドゾーン」(87)などは個性派監督たちの技巧に救われているところが大きく、「スタンド・バイ・ミー」(87)や「ショーシャンクの空に」(95)あたりも傑作だがホラーではない。心底恐ろしいキング原作映画の成功、それをやり遂げてくれただけでも、この「IT イット "それ"が見えたら、終わり。」の製作者には「うまい棒」を一生ぶん差し上げるべきだ。

  平和な街に災いをもたらす悪霊ペニーワイズと、7人の男女たちとの対決を描いた「IT イット」は、モダンホラー文学の巨匠キングのキャリアを代表する長編だ。27年周期で現れるペニーワイズと彼らは2度の死闘を繰り広げ、原作ではその「少年時代の戦い」と「壮年時代の戦い」が交互して語られる。マンガ「20世紀少年」の原型といっていい、この戦いの錯時的な構成こそが、本作を恐怖と感動の一大エピックにしているのだ。しかし今回はそこから「少年時代の戦い」だけを取り出し、映画の規格に収めている。

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  経験則からいえば、これはもうキング原作映画の失敗を匂わすフラグだ。ところがどうだろう、少年時代に設定を絞ったことが奏功し、物語は"ジュブナイルもの"の直球的な面白さをズンズンと放っているではないか。身内の失踪や学校でのいじめ、親からのDVなどそれぞれ問題を抱えた子らが団結し、人間の弱みに付け入る怪物に対して勇気を振り絞り、自分たちを苛む存在を克服しようとする。こうしたイニシエーション展開が強靭なバネとなり、本作はキング原作の高い難度を超え、ホラー版「スタンド・バイ・ミー」とでもいうべき境地へと立つのだ。

  「排水溝から覗くピエロ」のトラウマ系アイコンで社会現象を巻き起こした、ペニーワイズ(ビル・スカルスガルド)の不快を煮詰めたような邪悪な存在感も、恐怖映画としての役割を果たして観客の悲鳴を誘う。さいわいなことに本作は全米での大ヒットにより「壮年時代の戦い」も製作されると聞く。だが、ここまで「IT イット」を極めたものが生まれてしまうと、蛇足になりはしまいか? 少年編と壮年編を二部構成にし、後者が擁護しがたい出来となったTVドラマ版「IT」(90)の轍は踏んでほしくない。オレが「うまい棒」あげるから、ちょっと考え直してみてくれ!

(尾崎一男)


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