劇場公開日 2017年2月18日

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「恥はさらしても弁明と自己主張はするアメリカ民主主義の一端がここに」ウィーナー 懲りない男の選挙ウォーズ MPさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0恥はさらしても弁明と自己主張はするアメリカ民主主義の一端がここに

2017年2月11日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

笑える

見るからにシャープな風貌と独特のカリスマでオバマに続く民主党の顔として期待を集めていた連邦下院議員、アンソニー・ウィーナーだったが、彼の夢は無残にも潰える。SNSに下半身のエッチなセルフィを投稿する性癖があったばっかりに、妻がヒラリー・クリントンの右腕として高い信頼を得ていた敏腕スタッフだったばっかりに。セレブ妻の忍耐とサポートの甲斐なく、露出趣味とは遂に決別できなかったウィーナーはやがてFBIの捜査網に引っかかり、そのまさに"副産物"としてヒラリーの私的メール問題が浮上し、結果、アメリカは悪夢のようなトランプ時代を迎えることになる。つまり、ヒラリーの敵は文字通り身内にいたというわけだ。日本ではあまり報道されなかったが、ウィーナーのスキャンダルは当時連日全米のメディアを賑わせていたことが、これを見るとよく分かる。不思議なのは、ぼかしがかかったイチモツの写真がTVに映し出されたり、それを送りつけられた被害女性がもろ売名目的で取材を受けている最中に、ウィーナーが逃げ隠れせず、恥ずかしそうにしつつも堂々と正直に記者会見を開いたりしているところ。モニカ・ルインスキーとの"不適切な関係"を弁明するビル・クリントンも同様に、何処かの国の政治家やタレントとは違い、恥はさらしても一応自己主張はして大衆の判断を仰ぎ、メディアは偏重なしでまんま報道する、アメリカ民主主義の一端をそこに見たような気がする。あっという間に時は移りトランプ旋風が吹き荒れる今、少々タイミングを逸して公開されるドキュメンタリー映画は、個人と社会の関係についての為になる考察が成されていて、意外にお得感満載だ。

清藤秀人