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◆アウトレイジ 最終章

今の日本映画で望みうるワルな老優たちの不敵な顔貌を舐め尽くすように見せてくれる
  前作「龍三と七人の子分たち」はジジイとなった元ヤクザたちが若い暴力集団に一泡吹かせる楽天的な老人讃歌ともいえるコメディだったが、やはり北野武監督の真骨頂はシリアスな<暴力映画>にこそある。「アウトレイジ」サーガの掉尾(ちょうび)を飾る本作は、初期の傑作「ソナチネ」を彷彿させるイメージが随所に散見する。

  冒頭、元大友組の組長大友ビートたけしが韓国・済州島でのんびり釣り糸を垂れている光景は、「ソナチネ」の組織同士の抗争で沖縄に隠遁し、ひたすら無聊(ぶりょう)をかこっていたビートたけしの組長に酷似しているからだ。どちらも寡黙で、全身から<死>に魅入られたような無常観、殺気を放っている点も見逃せない。

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  この「アウトレイジ」シリーズは、対立するヤクザ組織内外の裏切りと打算、そして、あさましいまでのエゴがむき出しにされた下剋上を活写した群像劇だが、今の日本映画で望みうるワルな老優たちの不敵な顔貌を舐め尽くすように見せてくれるのも大いなる魅力のひとつである。なかでも傲岸さと卑屈さが微妙なさじ加減で反転する花菱会の若頭西田敏行の可笑しさは特筆もので、対照的に補佐役の塩見三省など呂律がかなり怪しくなってしまい、惨めな老残の気配を色濃く漂わせている。その老ヤクザの虚の中心にいるのが大友なのだが、その大友が「古臭い恩義」のみで帰国し、花菱会、その下部組織である山王会を殲滅すべく徒手空拳の闘いを挑むのだ。クライマックスの銃撃戦は、サム・ペキンパーが西部劇というジャンルに止めを刺した名作「ワイルド・バンチ」を思わせる過剰なまでのハイ・スピードの大盤振る舞いで、むしろアイロニーとして映る。

  かつての東映実録ヤクザ映画への強烈なアンチ・テーゼとして出発したはずの北野武だが、本作のあまりにクラシカルな筋立てには、七〇年代の深作欣二の傑作群に酷似した匂いを感じないわけにはいかない。花菱会会長の大杉漣の末路など実録路線の終焉をつげた「北陸代理戦争」への明快なオマージュというほかない。

  「アウトレイジ 最終章」の全篇をおおいつくす言い知れぬ空無感、寂寥感は、ヤクザ映画というジャンルそのものが息絶えていく瞬間を凝視しているからではないだろうか。

(高崎俊夫)


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