劇場公開日 2018年1月19日

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ジオストーム : 映画評論・批評

2018年1月9日更新

2018年1月19日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー

あらゆる厄災全部乗せの脱知性ぶりが観客をトリップに導く!

その異形な様相は「予算のかかったアサイラム映画」というべきかーー。かつて破壊王ローランド・エメリッヒ監督とタッグを組み「インデペンデンス・デイ」(96)や「GODZILLA ゴジラ」(98)を製作したディーン・デヴリンが、経験値を活かして自ら演出を手がけたデザスター怪作だ。エメリッヒが失くしたものを彼が見事に継承しているというか、地球がありとあらゆる災害に見舞われ、まるで国民の祝日を1月にすべて集めたような特盛内容には呆然とさせられる。

西暦2019年、温暖化による異常気象が世界各地を襲い、地球に脅威をもたらしていた。国際社会はこれに対抗するため、気象制御衛星「ダッチボーイ」を開発し、人類を存亡の危機から救いだしたのだ。

だが数年後、そんなダッチボーイのシステム異常によって、アフガンの砂漠やリオのビーチが一瞬にして凍る異常事態が群発する。システムを開発した科学者ジェイク(ジェラルド・バトラー)は原因究明のため宇宙ステーションに向かうが、そこで誤作動の裏にある恐ろしい陰謀を知る。はたして彼はそれを阻止し、システムの暴走を収めることができるのか!?

映画はこうした世界崩壊の序曲をド派手に鳴らし、ダッチボーイが次々と都市を破壊するシーンが圧巻だ。香港では高熱の影響によって街がおぼろ豆腐のように崩壊し、ドバイの超高層ビル群を大洪水が呑み込む。日本も巨大な雹が東京に降り注いだりして、他人事だとヘラヘラ笑ってられない。

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そこへきてドラマは究極の兵器にもなりうる、そんな気象制御システムをめぐる政治サスペンスを繰り広げ、展開の激変ぶりがハンパじゃない。その目まぐるしさがもたらす「置いてけぼり感」と「中毒性」たるや、観ているこっちの頭がおかしいのではと思えるほど高濃度だ。CGの発達によって破壊描写に死角のない今「災害ジャンルはこうあるべき」とグイグイ迫る、そんな演出の圧力が凶暴を極めている。

いつも脳筋ヒーローを演じるジェラルド・バトラーが超天才科学者に扮し、アンディ・ガルシアが米大統領という、悪い冗談みたいな配役もトリップ感を増大させる。いや、ああ見えてバトラーは俳優を志す前は弁護士だったので、むしろこういった役にたどり着くのが遅かったくらいだが、こうしたミスマッチもマグニチュード10級の衝撃となって観る者を激震させるのだ。

まさに人類は、本作と出会うために生まれてきたといっていい。とりわけ際立ったその脱知性ぶりは、同じSFでも「メッセージ」(16)や「ブレードランナー 2049」(17)の高尚さに疲れた者が観ると、きっと居場所を実感できることだろう。

尾﨑一男

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