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◆キング・アーサー

スピーディーで小気味良い語り口が、英雄伝説に新たな息吹を与える
  アーサー王といえば、ローマ軍が撤退し混乱期(6世紀の中頃)にあったブリテン島に彗星の如く現れて平安をもたらした伝説の英雄。実在したのかどうかは未だ不明だが、そこには語り次いだ人の数だけ創意工夫があり、こと映画作品に絞っても切り口はリアルなものからファンタジックなもの、さらにはコメディやミュージカルまで実に多彩だ。しかしガイ・リッチー監督の描く中世のダークエイジは、いずれをも凌ぐ奇想天外さでスクリーンを席巻する。その度胸の良さに笑みがこぼれっぱなしの2時間。

  彼は握りしめた手綱を自分にグッと引き寄せ、あくまで自己流の語り口でこの題材を乗りこなそうとする。冒頭こそ「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのような破格の戦闘シーンで幕をあけるも、次の瞬間に場面はリズミカルなビートへと様変わり。ロンディニウム(現在のロンドン)へと流れ着いた幼子アーサーが成長し、やがてスラムで殴り殴られ、それでもなお逞しく生き抜いていく姿を小刻みな編集で一気に紡ぎ上げていく。これぞリッチー節。そのスピード感はもとより、自分の運命にまだ気づかぬ主人公と仲間たちがこの街で右往左往する様に「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」(98)や「スナッチ」(00)に息づくキャラたちの元祖を見る思いがした。

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  一方、恐怖によってしか人心を掌握できない暴君ヴォーティガンは、いつの日か自分の前に聖剣エクスカリバーを手にした青年が立ちはだかることを予期している。そうやって極度の不安に駆られ、その人物を先んじて見つけ出そうとすることで逆に運命を手繰り寄せてしまうという皮肉。かくも不可解な役どころをジュード・ロウが哀しい瞳で怪演し、彼の邪悪な力が増せば増すほど、チャーリー・ハナム演じる青年アーサーの覚醒の度合いも増していく。この対比によって浮き彫りになるカードの表裏のような関係性もまた、ガイ・リッチー作品ならではの興味深い手法だ。

  剣と弓と魔術が入り乱れてのバトルシーン、大自然を馬で駆け抜ける壮観な映像、路地裏での決死の攻防、さらにアーサーが聖剣を手にする時にみなぎる超常的パワーの映像表現もすこぶる楽しい。合言葉は「敵を作るより仲間を作れ!」。そう、本作は上から目線ではなく、同じ目線で語りかけてくる生来の気の良さがある。お堅い歴史劇は苦手という方にも打ってつけの、一風変わった軽妙さとダイナミズムを併せ持った作品といえよう。

(牛津厚信)


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