劇場公開日 2019年2月8日

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アクアマン : 映画評論・批評

2019年1月29日更新

2019年2月8日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー

繊細さとスペクタクルを巧みに繋ぐジェームズ・ワンの力に圧倒される

ヒーロー映画は何より出だしのトーンが重要となる。それも物語の起源を描く第一作目なら尚更のこと。本作はその点、無骨でマッチョなヒーローの主演作とは思えないほど優しく温かみに満ちた始まり方があまりに秀逸だ。灯台守と海底人との出会い。育まれる愛。そして新たな生命の誕生・・・。シガー・ロスの楽曲に乗せて紡がれる一連のシークエンスは鳥肌モノだし、ニコール・キッドマンの思いがけない起用法も実にお見事である。ほんの数分ながらこのクオリティに心底圧倒され「さすが、ジェームズ・ワン監督」と溜息を漏らさずにいられなかった。

やがて成長した息子アーサー(ジェイソン・モモア)はアクアマンとなる。超スピードで海に潜り、海洋生物を操り、銃弾を跳ね返し、海賊たちを一網打尽。その一方で彼は、地上人と海底人のハーフとしてのアイデンティティに悩みつつも、いつしか海底世界の暴走を止める希望の光となっていくーーー。

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聞くところによると、劇中二つの世界の狭間に立つこのアクアマンの姿に、マレーシア生まれでオーストラリア育ちのワン監督、それにハワイ生まれでアイオワ州育ちのモモアも自分自身を大いに重ねていたのだとか。恐らくその心がうまく共振したのだろう。結果的に本作は彼らが各々に体現してきた生き方のごとく、従来の型や常識を果敢に超えて突き進むバイタリティあふれる作品となった。それどころかヒーロー映画としての枠組みすら超越し、むしろ壮大なアドベンチャーと呼ぶ方が相応しいのではないかと思えてくるほどだ。

さらに、この映画には格闘、アクション、チェイス、家族愛、復讐、宿命、謎解きといったエッセンスが散りばめられ、海溝のクリーチャーの描写にはワン監督のホラー映画を思わせる節もある。いわば海というキャンバスを使って、この稀代のクリエイターのイマジネーションを全て集大成的にぶちまけたかのよう。それほど全身全霊を込めて臨んだからこそ、数あるDC映画の中でもとりわけユニークで、なおかつ破格の世界観を存分に解放させた仕上がりとなった。繊細なオープニングから超ド級スペクタクルのクライマックスまで、この気の遠くなるほど振れ幅の広いプロジェクトを掌握し、見事に乗りこなしたワン監督を心から賞賛したい。

牛津厚信

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