サウルの息子

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劇場公開日:

サウルの息子

解説

2015年・第68回カンヌ国際映画祭でグランプリ、第88回アカデミー賞で外国語映画賞を受賞したハンガリー映画。アウシュビッツ解放70周年を記念して製作され、強制収容所で死体処理に従事するユダヤ人のサウルが、息子の遺体を見つけ、ユダヤ教の教義に基づき葬ろうとする姿や、大量殺戮が行われていた収容所の実態を描いた。1944年10月、アウシュビッツ=ビルケナウ収容所。ナチスにより、同胞であるユダヤ人の死体処理を行う特殊部隊ゾンダーコマンドに選抜されたハンガリー系ユダヤ人のサウル。ある日、ガス室で生き残った息子と思しき少年を発見したものの、少年はすぐにナチスによって処刑されてしまう。サウルは少年の遺体をなんとかして手厚く葬ろうとするが……。ハンガリーの名匠タル・ベーラに師事したネメシュ・ラースロー監督の長編デビュー作。

2015年製作/107分/G/ハンガリー
原題:Saul fia
配給:ファインフィルムズ
劇場公開日:2016年1月23日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第88回 アカデミー賞(2016年)

受賞

外国語映画賞  

第73回 ゴールデングローブ賞(2016年)

受賞

最優秀外国語映画賞  

第68回 カンヌ国際映画祭(2015年)

受賞

コンペティション部門
グランプリ ラズロ・ネメス

出品

コンペティション部門
出品作品 ラズロ・ネメス
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(C)2015 Laokoon Filmgroup

映画レビュー

5.0いつまでも語り継がれるべき衝撃作

2016年12月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

怖い

あらゆる瞬間に息が詰まりそうになる。特に冒頭から延々と続く長回しで、人々がガス室へと送られていく様子、感情を枯らした人間がその手で無慈悲に扉を閉める無駄のない流れ作業は、本当にこの世の地獄と呼ぶにふさわしい。しかし本作の真の衝撃は、それらのアウシュヴィッツ=ビルケナウの生々しさよりも、すべてが干からびたはずのその地に僅かばかりの感情の雫が滴りおちるところにあろう。「あの遺体は息子ではないか?」というサウルの思いは半ば妄信、あるいは狂気に近いものがあるが、それでも絶望的な状況で生じた精神構造として、彼の最期の意志であり、尊厳であり、彼が突発的に織り成しすがろうとした物語性とも言えるのかもしれない。本作はかくも人類が体験した悲劇から一つの「個」を抽出し、限定的な視点を通してその全体像を捉えようとする。それを伝える技術力、チームワーク、意志の力もずば抜けている。決して万人向けとは言えないが、『シンドラーのリスト』と並んで語り継がれるであろう一作だ。

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牛津厚信

5.0当事者目線で描かれる生きる尊厳

2024年1月16日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

冒頭から引き込まれる、主人公サウルを中心とした長回し。「これは凄い映画だ…!」と思うと同時に、「こんな序盤が最大の見せ場だったらどうしよう?」と不安にもなった。
が、心配はご無用。この後もサウルと共に動くカメラの長回しが、圧倒的臨場感で観客をビルケナウ収容所の一員にする。
気持ちはもう新人ゾンダーコマンドである。

多くのゾンダーコマンドが最初そうであったように、我々に与えられる情報は少ない。急に連れてこられて、訳もわからぬまま陰惨な状況下で酷使される。
サウルの背中から覗く光景は、あまりにも強烈で残酷であるがゆえに、はっきりとした映像として記憶に残らない。
サウルもきっとそうなんだろう。はっきり見えてしまったら、心が壊れてきっと働けない。
サウルだけじゃない。他のゾンダーコマンドだって同じだ。
「今、自分は何をしている?」その問いに明瞭に答えてしまったら、すべては絶望の彼方に追いやられ、二度と這い上がってこられない底無しの沼に堕ちる。堕ちてしまう。

少し焦点のあっていない映像から、我々は読み解かなくてはならない。今の状況を。今の立場を。最適な振る舞いを。
間違えてはならない。目立ってはならない。心を暗くして、目を開かずに。

いったん映画の世界から離れ、第三者視点に立つと、己の無知を痛感する。何となく、虐殺された死体は埋めるものだと思っていた。ヨーロッパだし。
実際はサウルたちゾンダーコマンドの手で死体は焼却され、灰となったかつての同胞たちは川に撒かれた。そうなんだ、燃やすんだ。

日本的には、撒くのはアレだが、火葬が一般的なので死体を燃やすことを特別変なこととは思わない。だがユダヤ教は違う。審判の時が来れば復活し、善なるものは永遠の魂を手に入れる。
善なるものには肉体が必要だ。カデシュが必要なのだ。主を讃える祈りが、ラビが必要なのだ。

少年がガス室から生還したのを目撃したサウルは、少年に復活を見たのかもしれない。この善なるものの為に、どうしてもカデシュを行うという決意は、心を殺し、見ないように、聞かないように、死へのトンネルをゆっくりと進んでいたサウルにとって唯一の光だ。

サウルの後ろで、ずっと彼と視界を共有していた私に、サウルは何も語ってはくれない。想像するしかないけど、きっとそういうことなんだろう。
同胞を「部品」と呼び、その死をお膳立てし、復活を妨げ、いつかは自分自身もそうなる。
そんな世界から抜け出す為に、たった一人で、正面から激突するのではない、魂の勝利を目指して突き進むサウルの姿。

彼に感情移入するのは難しいかもしれない。でも否定は出来ない。一度しかない人生に高潔さを望むのは、きっと誰でも同じだから。

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つとみ

4.0未来へつなげたい思い

2023年6月13日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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こまめぞう

3.0自分の「証(あかし)」を残したかったのか。

2023年3月14日
Androidアプリから投稿
ネタバレ! クリックして本文を読む
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talkie