葛城事件のレビュー・感想・評価
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恐怖は日常のすぐ隣
だいたいどんな時も旦那と一緒に晩御飯を食べながら、やいのやいのと楽しく映画を観ているのだが、「葛城事件」は違った。
画面に映し出される葛城家の不気味な不協和音に、心の底からこみ上げてくる言い様のない不安。
ついさっき食べ終わった今日のご飯。なんてことのない野菜炒め、ご飯、味噌汁、昨日の残りの煮物。そういうありふれた「普通のご飯」はただの一度も登場しなかった。
それだけで、この家庭が「普通なんかじゃ決してないんだ」と雄弁に物語っている。
その一方で、彼ら個人は世間からそこまで逸脱したような人物でもない。よくいる偉そうな親父、よくいる天然ボケなオカン、よくいる気弱な兄貴、よくいる引きこもりの弟。
その「大したことない人々」感が、いつか自分の家族も葛城家のようになるのではないか?と思わせる。
怖すぎて思わず旦那にすり寄りたくなるほどに。
「俺が一体、何をした」というコピーに対して、むしろ親父は「何をしなかったのか」を描いているようだ。
それは「相手を思いやること」だったんじゃないかと思う。いつでも自分のベストを重んじて、嫁が、息子がどう感じるかは二の次。
それは血縁の上に胡座をかいた怠慢であり、甘えなんじゃないだろうか。
彼の罪は彼が精算するしかない。彼が考える、最も厳しい方法で。
とりあえず、葛城家のようにならないように、まずは旦那を思いやろう。
家制度の呪縛。
あまりに悲しく可笑しいとてもよくできたホームドラマ。こんなことを言うと語弊があるかもしれないけど、すごくおもしろかった。三浦友和氏の演技を筆頭に役者さんたちの演技は皆さん素晴らしかったし、演出も全く違和感なくてお見事な作品。結構笑えた。
凄惨な無差別殺人が起きる土壌は日本にどこにでもある普通の家庭だった。
葛城家の主である清はいわゆる昭和の頑固おやじ、横柄で無神経なところがある。長男の結婚祝いの食事の席では店員への執拗なクレームで場の空気を気まずくさせて、あげくに妊婦の前で平気でタバコを吸う。
息子のしつけは妻にまかせっきりで、息子がふがいないと妻を殴りつける。お前が甘やかすからだと。けして息子を直接𠮟ろうとはしない。本当は自信がないのだ。所詮親の金物店を継いだだけの甲斐性なし、しかし自分は一家の大黒柱。だから父親としての威厳を守りたい。万が一にも息子から反論されたらと恐れている。横柄な態度もすべては虚勢でしかなかった。自分は一国一城の主なのだ、だからそんな自分が妻や子供たちに弱いところは見せられないと。
昭和の男たちはたいていこうではなかったか。この映画を見てドキッとする人間も多いのでは。
妻の伸子もある意味典型的な昭和の女性。適齢期になり、世間体を気にして好きでもない男と結婚する。人生の選択肢が限られたこの頃の女性にはこんなことがよくあったはずだ。そしてある時気付く、こんな男、初めから好きじゃなかった。なんでここまで来てしまったのかと。ある意味この二人は犠牲者といえるかもしれない。
家父長制的な意識がまだ色濃く残る時代、男とはこうあるべきだ、父親とは威厳を保ってなければいけない。そして女性は多くが主婦になるしか選択の余地がない。そんな人間同士が結婚して、大半は妥協して何とかやってはいけるのだろうが、最悪この家族のような末路を迎えることもある。
稔の死刑を知らされた清は順子にとびかかる。俺が死刑囚になったら家族になってくれるのかと。家族をすべて失い、一国一城の主でなくなった清。父親としての威厳を保つ必要がなくなった彼がただのオスに豹変した姿がとても無様で滑稽だった。それでも人間ですかと順子は清をなじる。
子供たちの成長を願い植えたミカンの木で清は首を吊ろうとするが、死なせてはもらえない。なぜこうなったのか、生き続けて考えろということだろう。
本作は一見どこにでもあるような家庭を舞台にその家族が崩壊してゆく様をみせることで観ている自分たちの家族もこうなっていたかもしれないと感じさせるのが実にうまい。
かつて日本は欧米列強に対抗するため、天皇制の国家体制を敷いてそれを支えるために家制度を導入した。しかし無謀な戦争に突入し、かかる国家体制は崩壊。民主化により家制度は廃止されたが、それ以降も男系の氏の継承という形で家制度の名残は残った。
この家族に訪れた不幸はそんな名残が引き起こしたともいえるだろう。「家」、「主人」、「嫁」、そういった型に個人をはめ込み、個々の人間の個性を尊重せず、その人らしく生きる権利を奪ってきた。国家統一の名目で個々の人間の尊厳を奪った家制度はいまの日本でもその意識が色濃く残っている。
子供は同じ家に生まれてもその個性はそれぞれ異なる。手のかかる子、かからない子、その子の個性に応じた教育なり、接し方をしなければならない。
葛城家はどうすればよかったのか。清はどうすればあんなことにはならなかったのだろうか。次男の稔は子供の頃から手のかかる子だった。しかし躾は妻に任せっぱなしで、子供との会話はほとんどなかった。
もし清が父親としての威厳などかなぐり捨てて、腹を割って一人の人間として息子と向き合い、息子の個性を認めて尊重してやればあんなことにはならなかったのではないか、そう思えてならない。
いまやLGBT、夫婦別姓など多様性が求められる時代。にもかかわらず、相変わらず家制度にこだわる為政者たちはそんな個人の生き方の尊重などできない。家制度が失われれば国家が滅びると本気で思ってるようだ。
さすがに一般人の間では徐々に意識も変わり、最近では友達親子なんて言葉がはやるように人々も家父長制的な家族運営には無理があると気づいたんだろう。天皇を国家元首とした国家運営に無理があったように。
民主化され個人の人権意識が高まった現代においては一方的な家長による支配では家族はやっていけない。人間は弱いものだ、父親であってもその自身の弱さを認めて互いのその弱さを補い合って支え合う、家族が共に生きる意味はもはやそこにしかないのではないか。
ちなみにこの作品のモデルとなった小学校襲撃事件の加害者は下級武士の家系の生まれで、その父親は教育勅語を重んじていて、自分の子供たちへの暴力が絶えなかったそうだ。
稔と獄中結婚した順子のモデルとなった女性は死刑廃止活動家として非常にまじめに加害者を更生させようと努力していたそうだ。本作での彼女の立ち位置はいまだに解釈が難しい。愚かな女性として描いてるのか、あるいはこの家族とは対照的な存在として描いているのか。ただ実際の彼女に対して加害者の男は感謝の言葉を残している。これはやはり彼女が加害者の男を一人の人間として尊重して接した結果なのかなとも思う。謝罪の言葉は引き出せなかったが。もう少し時間が欲しかったと劇中同様この女性も述べていた。
どちらにしろ演じた田中麗奈さんは素晴らしかった。まったく興味ない俳優さんだったけどこんなに魅力的だったとは。
日本のには沢山あるような家庭
日本人には沢山あるような家庭。ひと昔前の日本の親父はこんなのが沢山いた気がする。それが大量の中年引きこもりを産み、家族に良さが見つけられない人を作り、少子化に繋がっていたりするのかなと思ったり。
家族全員おかしいのだが、一番怖いってかキモいのは田中麗奈の演じていた女が一番キモかった。
実際大阪の事件の犯人にも獄中結婚の話があって、それをモデルにしたのだろうが、ああいう人間がもっとも理解できない。
見てて一番気持ち悪かった。
鬱が好きな人に一番おすすめ
初めて見た日は数日間、やるせない暗い気持ちを引きずりました。
数日間引きずるほどのショックを与えてくる展開の映画が好きなので、以来定期的に見ています。(定期的に見るものではない気がしますが…笑)
葛城一家崩壊のすべての原因は、父が自分のもつ家族に対する理想や愛を押し付け続けたことにあります。
愛し方を間違え続けている、それに長いこと気づかなかったからこんな結末になってしまった。
抑圧され続けた家族達も、もはや反抗を諦めてしまっていましたことも原因ではありますが、やはり一番悪いのは父ですね。
でも、愛する息子たちの成長を願って植えたミカンの木を見る父のその目は、間違いなく家族への愛に満ちた優しい眼差し。それが本当に見ていて辛かった。
そしてこのシーンが映るタイミングも、家族崩壊の全てを見せられた後であったことも尚更辛い。
星野にも拒絶され、父が本当に一人ぼっちになった時。
家族一人一人の名前を呼ぶ父の姿も本当に苦しい。
もう誰も帰ってこない現実、絶望を思い知らされる場面でした。
葛城清を見ていると、私の父も、自分が気に食わないことがあると大声で怒鳴ることがあり、私や母がそれに萎縮してしまい自分の気持ちを言えず、ただ頷き続けるしかないことがあったことを思い出し、少しだけ近しいものを感じました。
父が家族を愛していることも分かっているし、正しいことを言っている時もありましたが、自分はそれでもこう思っていた、という気持ちを言えずただ怒鳴り続けられるのは辛かったです。
そんなことを思い出しながら映画を見ていました。
「愛がなんだ」で若葉竜也を知り、痛々しいぐらい真っ直ぐな仲原を演じていたのに、その印象を引きずらず今回は我儘で弱い稔をしっかり演じていて、改めて役者はすごいな…と感じました。
附属池田小事件を描くにはこれが限界
これをこの事件のノンフィクション映画として見始めないと、最後までしっくりこないでしょう。
なにかのパクリか、こういうストーリーあるある映画になり下がる。
とにかく三浦友和さんの好演が際立つ。
こんな家族が世の中にいるんだと怖さや悲しさが心の中を錯綜する。
この事件。
当時私の住んでいた隣の市で起こった。
それだけに同世代の子供を持つ親として震撼した記憶は残っている。
この事件の経緯はネットに散在しているので知りたい方はそれを読めば映画で描ききれなかった理由が分かります。
想像を超えた酷い人物像。
そこまで描くと上映出来なさそうです。
胸糞悪いとか暗いとか厳しいレビューが散見されますが、これ以上の事が実際に起こり、そういう家族がいたと言う事実。
もはや感想を述べると言うものではない気がしました。
被害に遭われた方々及び関係者の方々には心よりお悔やみを申し上げます。
附属池田小事件がモチーフとなっている割には連想できない
何かが元ネタなのだろうなとは思っていたが池田小事件は連想できない。
母親は加害者を生んだ時から嫌っていたはずだし、父が抑圧的という設定は、実際には警官の家系でそういう面もあったという点は似ている。
国内映画でこういうネタを扱う際にはなぜか朝鮮系の俳優がよく見られる。
あまり良い意図は感じない。
濃厚
終始重く、人間の心の内を描いた邦画らしい作品だった。邦画は好きだけれど、これはあまり自分の好みではなかったなぁ。観ている時も、観終わった後もモヤモヤとし、ある意味メリハリがない。それだけ重厚な作品なのだとも感じるが、自分にはもう少し緩急のある作品の方が合っていると感じた。
『特別』ではない事の恐怖
高圧的で自分の価値観を押し付ける父親
優しいようで、問題の本質からは目を背けつづける母親
家を建て、子供の成長を願い蜜柑の樹を植える
そんな幸せで希望に満ちた時間は確かにあった。
大きなきっかけがあったわけではない。
どこで間違ったのか誰が悪いのか
誰にもわからないまま少しずつ崩壊していく、、、
葛城家の出来事は我が家でも起こり得たかもしれない
そんなザラザラした感覚に襲われる映画。
付属池田小事件の宅間守とその家族がモデル
赤堀雅秋監督作品初鑑賞
俳優として数々の話題作に出演しているが役者としての記憶は殆どない
加害者の家族側にスポットライトを当てた作品と言えば『誰も守ってくれない』を思い出す
あれが星5つならこっちは星3が妥当
死刑囚の次男役に若葉竜也
自殺する長男役に新井浩文
父親役に三浦友和
母親役に南果歩
次男の嫁役に田中麗奈
長男の嫁役に内田慈
皆さんの芝居は良かった
それだけで観る価値はある
特に良かったのは死刑反対を訴える活動家でついには獄中結婚までしてしまう馬鹿な女を演じた田中麗奈
いらないという意見もあるが実際に宅間守と獄中結婚した人がいるらしいし彼女は絶対に必要
時系列がやたら行ったり来たりする構成はあまり好きじゃない
なぜかBGMが内容に合わない素敵な感じ
自殺し損ねて食べるインスタントラーメン美味しそう
宅間守とその家族をモデルにした作品だが小学校での殺戮は再現してない
地下鉄の通路だろうか連続通り魔事件で被害者の多くは大人で特に女性が多かった
最初に刺されたのは男子高校生っぽいが
この作品を観た人のなかには忠実に再現しなかったことに不満な方がいるかもしれない
しかしそんなことができるわけがない
『コンクリート』という作品がお蔵入りになったこともあるし配慮しないといけない
長男が自殺し次男が死刑囚になり母が精神疾患になったのは全部父のせいだという発想は甘え
家族主義を全否定しても意味がない
なんでもかんでも環境のせいにするのは自立した大人がやることじゃない
結婚したくてもなかなか出来ず悩んでいる中年男性の皆様に朗報
これは最終兵器奥さん
死刑囚になれば森達也のような女と結婚できます
死ぬ間際に一度でいいから結婚したかったと後悔する前に是非チャレンジしよう
あのいかりやにもあの高木ブーにもあの宅間守にも嫁がおるわ
宅間守なんて4度も結婚してるわ
不健全で最悪
でも言うほど狂ってないんです。普通の家族だったんです。どこかで歯車が一箇所おかしかっただけ、それだけで、もしかしたら私の家族だってそうなりえたんじゃないかと思ってしまいました。
母が家出をして最初のアパートでわかめラーメンを私に作ってくれたんです、映画でも保がお母さんにわかめラーメンにお湯入れてもらってるんです。ゾワっとしました。
叔父の遺言はレシートの裏じゃなかったけれど、実はひとりぼっちで闘っていたことに、遠くの私たちや兄である父は気づくことができませんでした。
これは私たちの物語かもしれないんです。
正直、稔がいう「狂ったイノシシなら事故」という主張も、お父さんがいう「じゃあ俺が三人殺したら家族になってくれるのか」も、言ってることがすごくよくわかるんです。頭がおかしい人の発言とは思えなくて、ただ、普通の人はもしそう思ったって殺人も自殺もしないってだけで、本当は簡単にわたしたちだって、そっち側の人間になるんじゃないか、すごく身近な家族なんじゃないかと思わされました。
(ちなみに我が家は全員心身共に健康でハッピーな日々を過ごしております。)
若葉竜也くん目当てで見たんですが、三浦友和の映画でした……
私のような小娘が三浦友和の演技に言及するのも烏滸がましいですが、三浦さんの演技が大好き!
尤もらしいが散漫。
意欲作風の凡作。
バラバラと詰め込まれる不幸要素、役者巧演、気のきいた説明台詞で点描されるキャラは立たず、物語はブツ切りのまま、可哀想で巧いね、だから何?で終わる。
撮る動機の希薄さゆえか。
尤もらしいが散漫。
面白いけど、二度と見たくない
見てる最中の胸糞悪さや、居心地の悪さが凄いです。終始目を逸らしたくなる展開の連続でした。
三浦友和の演じる傲慢な父親役は、特段珍しくもなく、どこにでもいるような昭和の頑固ジジイです。
父親役と次男役の口調や論法がそっくりで、正論を言う割に的外れ、デカイこと言う割に行動が伴ってないなど、父親の悪い部分がしっかりと継承されていて細かなディティールにも計算され尽くした胸糞悪さが散りばめられているなと感じました。
また田中麗奈の役どころが最後まで謎でした。死刑反対したいがために赤の他人と獄中結婚、という自己犠牲に酔っている行動がひたすら不気味。
ラストシーン、父親は思い出の木で首吊りをしようとしますが失敗。この親父には、死ぬ資格すらないと言いたげに物語は幕を閉じます。
登場人物の心の声はよく聞こえてくるが、共感は一切出来なかった。
現代の日本の家庭の鏡のような映画ではなく、ごくごく一部を抜き出した映画。
内容を集約すれば、人の気持ちを一切理解しようとせずに、絶対的に自分がただただ正しいという固定観念に囚われた一人の父親の悲しい生き様と末路が痛々しく描かれている。
映画中に漂う終始、不穏な嫌な感じが毒々しくて、決して楽しい気持ちにはならない。
基本的に狂人ばかりが出て来て、ほとんど考えが理解出来ない登場人物ばかりなのだが、役者の表情や演出から、おそらくこんな事を口には出さないけど考えているのだろうなという、心の声が聞こえてくる感じがこの映画の独特の魅力ではあると思う。
しかし心の声が聞けたとて、やっぱり理解は出来ないし、共感も全く無い。
ただただ自業自得であり、それが不幸につながる様を見ているのはとても苦しく、更に被害者遺族が一切出てこないのは説明不足というよりは救いのように感じられた。
一体この映画から何を得ればいいのかという事を考えると解らない。
狂人を理解せよという事なのだろうか。
おかしな人っていうのは全部が全部おかしい訳じゃなくて、どこか一部が本当に凄くおかしいんだっていうのをどこかで聞いたなという事をこの映画を観ていて再認識した程度だ。
思ったよりメッセージ性があった
とにかく重くて重くてという話かなと思いきや、家族だったあの頃の描写が切なく、何より三浦さんが最高です。上手すぎます。
何故どこで狂ってしまったのか、誰でも起こり得ることだなと。
_φ(・_・三浦友和怪演 すげー迫力
三浦友和怪演 すごい迫力、他の共演者も演技派。
息子 弟が通り魔殺人死刑囚と兄貴 自殺者 もうぐっちょぐっちょ。
妻は精神に異常をきたし最悪。自分も死のうとしたけど、、、、、。
何があっても人は生きていこうとするのか、、、生かされるのか、、、。
いい映画を見た。テーマは陰な話だがなんだか力が湧く。
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