ヴィオレット ある作家の肖像

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ヴィオレット ある作家の肖像

解説

「セラフィーヌの庭」でセザール賞最優秀作品賞を受賞したマルタン・プロボスト監督が、新しい文化が胎動した1940年代後半のパリ文学界を背景に、実在した女性作家ビオレット・ルデュックの半生を描く。作家、哲学者として知られるボーボワールと出会い、その才能を認められたビオレットは、処女作「窒息」を出版。カミュ、サルトル、ジュネらに絶賛され、当時のパリ文学界に大きな衝撃を与えた。しかし、女性が自身の生と性などを赤裸々に描くという衝撃的な内容は、当時の社会には受け入れられず、ビオレットは深く傷ついてしまう。傷心の中、パリを離れてプロバンスに移り住んだビオレットは、自身の集大成的な作品「私生児」の執筆に取りかかる。主役のビオレット役にエマニュエル・ドゥボス。ビオレットと生涯にわたり友人関係を続けたボーボワール役にサンドリーヌ・キベルラン。

2013年製作/139分/PG12/フランス・ベルギー合作
原題:Violette
配給:ムヴィオラ
劇場公開日:2015年12月19日

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(C)TS PRODUCTIONS - 2013

映画レビュー

3.5ラストを含め、価値観が問われる。

2016年2月18日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

予告から、感情のぶつかり、悲劇の幕切れを予想したが、本編はかなり異なる感触だった。特に、南仏に流れ新作に取り組む後半。陽光溢れる自然に埋もれるようにして、ヴィオレットが内省的になり、自身の内側を掘り下げていく。ふつふつと水面下でたぎる感情のほとばしりが、何ともスリリングだった。
ラストはハッピーエンドか否かは、観る人によって異なるように思う。そもそも、私には、ヴィオレットの方がボーボヴァールより美しく思えた。確かにヴィオレットはぽっちゃりとして野暮ったいけれど、生き生きとして魅力的。対するボーボヴァールは痩身だけれど、知的というより貧相な印象を受けるところもあった。ヴィオレット役のエマニュエル・ドヴォスは、付け鼻で醜さを表したらしいが、日本人の私にはピンとこず…。本国フランスならば違うのか? 美醜の基準は、国や文化はもちろん、個々人でも差がある。二人の対比の捉え方は、観る人により異なりそうだ。(個人的には、二人の女優さんが役をひっくり返した方がよかったかも?と思った。少なくとも、ボーボヴァール役は、もう少し迫力や魅力が欲しい。)
果たしてヴィオレットは、ボーボヴァールのおかげで成功を掴んだのか、はたまた、彼女の論の実例として利用されたのか。書くこととの出会いはともかく、ボーボヴァールの出会いは、ヴィオレットにとって幸せだったのだろうか? 観終えた今も、ぐるぐると考えている。
また、このような題材が取り上げられ、描かれるのは、女性の幸せの捉え方や歳の重ね方への価値観が多様化し、答えが見出せずにいる「今」らしいなとも思った。家庭から出て、社会的名声を得る。そんな男性的成功は、女性の絶対的成功とは言えない。どこか満たされず、それならばと「次」を模索し続けるよう自他にじわじわと迫られる。そんな現代の若くない女性(いわゆるアラサー、アラフォーと呼ばれる人たち…自分含め。)の姿が、彼女に重なった。
また、母との愛憎合い混じる関係も一筋縄でいかず、余韻が残る。エンドクレジットでヴィオレット方が先に亡くなったと知り、子に先に逝かれた母へ思いをはせずにいられなかった。予告の印象にとらわれず、まずは観てほしい作品だ。

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cma

3.5ボーヴォワールが言う「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」という瞬間なのかもしれない。

2016年1月22日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

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kthyk

4.0書くことで孤独を強める作家のジレンマ

2016年1月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

第二次世界大戦末期、フランスの田舎町に作家のモーリス・サックスとひっそりと隠れ住んでいたヴィオレット・ルデュック(エマニュエル・ドゥヴォス)。
ゲイであることで迫害されていたモーリスとは偽装の夫婦関係を続け、生活はヴィオレットが闇商売をすることで支えている。
私生児として生まれ、自分の容姿にコンプレックスを抱き、男女どちらにも性的欲求を抱くヴィオレットは、自分自身を嫌悪していた。
モーリスは、そんな彼女に、自分のことを書け、と自らの出来事を小説にすることを薦めるのであった・・・というところから映画は始まる。

その後、モーリスは彼女のもとを去り、戦後、完成した小説を持ってパリに出たヴィオレットは、作家で編集者のボーヴォワール(サンドリーヌ・キベルラン)と出逢い、それまで書いていた小説を『窒息』として出版することになる。

映画は、ヴィオレットが係わった男性や土地の場所を小見出しにした「章立て」の形式をとっていて、それぞれがぶっきら棒といっていいほど説明もなく始まるので、はじめの2章ほどは物語の背景や人物設定などがわかりづらく、内容を理解するのが難しい。
しかしながら、それらの舞台背景がわかってくると、俄然興味深く観られるようになりました。

処女作『窒息』はカミュやサルトルなどの大物作家に絶賛されれるものの、女性によるその赤裸々な心情吐露は大衆には受け容れられず、ヴィオレットは劣等感に疎外感に苛まれていく。
ここいらの描写は、ひりひりするほど痛々しい。
大物実業家のジャック・ゲラン(オリヴィエ・グルメ)や作家のジャン・ジュネなどの賛同者が増えれば増えるほどほど疎外感は増してしまう。

この複雑な感情をエマニュエル・ドゥヴォスが見事に表現していて、この映画のいちばんの見どころ。

マルタン・プロヴォ監督がみせる画面は暗いシーンが多く、ときには何が映っているのか判別が出来ないほどだが、それが故に、終盤、ヴィオレットが見つける安息の地・南仏プロヴァンスの小村が明るくまばゆく輝いて見える。

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りゃんひさ

4.0アナザーなミッドナイトインパリ

2015年12月25日
iPhoneアプリから投稿

休日の午前は、フォースの導き届かぬ!壮年で埋まるも実はお洒落なデートムービーか。
BARの場面ではタイムスリップ中のオーエンウィルソン探してみたり、ゲランの創設者役でかのダルデンヌ組のオリビエグルメ!登場には例のハンソロ並みに愉快。
コレはボーヴォワールサルトルジュネゲランに支えられた面妖かつエキセントリックな彼女の「異能譚」。
「書くことにのみで救済される自己」はお腹いっぱいに描かれ、そのヘヴィサイドへのバランスも良く2時間半近い尺も長さ感じない緩急も良し。
フラット寄ってみたらコレは今年の最上級な一本。

ミッドナイトインパリ見直したくなった。

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ikalabo
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