パペットアニメと実写映画の融合。
人形劇パートと実写パートが完全分離せず。
二つの世界が共存する奇妙な世界。
アニメと実写の融合は過去にもあり。
個人的には映画「スペース・ジャム」が印象的ですが。
実在の人物を模したパペットアニメと実写の融合は初体験。
加えて3D映像、奥行きのある立体映像は新鮮でした。
実写の人物をパペット達が取り囲む。
パペット達の世界に実在の人物がポツンと佇む。
実写の人物達は光の反射含めてより無機質に。
パペット達は豊かな表情と佇いでより人間らしく。
二つの世界の境界線が限りなく薄くなる。
と同時に二つの世界の使い分けも意識的に行われており。
印象的な場面で突如無機質なパペット世界への切替がなされる。
不自然な自然さ、自然な不自然さが際立つ作品でした。
舞台となる新橋の描写も良い。
新橋の烏森口近辺を舞台として。
何処か懐かしさ、と同時に今の丁寧な描写もあり。
新橋に勤める身としてはグッとくる場面が多かったです。
特に或るパチンコ屋を挟んだ路地の雰囲気。
看板の出し方含めて非常にグッときました。
多大な時間と手間をかけて特殊な世界を自然に、意図的に不自然に構築。
新鮮な世界観を、作品を提示したことで好印象を抱いたのは確か。
手放しで評価、他の方々に勧めたい。猛プッシュしたい。
…のですが。
惜しむらくは話の展開。
中盤以降の展開が興醒めする程に酷い。御粗末。無残。
大物政治家に絡む話が、すべからく酷い。
大物政治家と愛人の関係性も酷ければ。
その関係性を描く愁嘆場も酷い。
オマケにその帰結も酷い。
何処に良さを見出せば良いのか。
話の出来の余りの酷さに思わず嘆息。
並行する新橋の仲間の面々の話も酷い。
新橋に生きる仲間達は全てを呑みこむ。
とは言え、全てを右から左に受け流し過ぎ。
過剰に演出される愁嘆場に対して嫌にアッサリしたモリクミの扱い。
そして事の原因とも取れる或る人物の無罪放免具合。
この人物が最後まで野放しになっていることに最後まで違和感が残りました。
個人的には二人分の骨折りと共に。
或る人物が冷たい声で無機質な処置を。
…という展開を望んでいたのですが。
変に気付いた雰囲気だけ残して風呂敷を畳み切れていない印象が強かったです。
あと特定の役者の演技、実写の演技が酷かった。
大物政治家・宗岡総一郎を演じる柄本明。
自由にさせ過ぎて話のリアリティを極端に下げている。
個人的に嫌いな役者ではないですが。
好きにさせた時の過剰な演技は作品全体を損なうこともしばしば…という劇薬役者。
本作でも好き勝手、野放しにした結果、悪戯けが過ぎて興醒めしました。
大御所扱いして皆が遠慮することで作品に関わる全員が損をする、という残念な結果になっていました。
あと伝説のSM嬢を演じる永島暎子。
彼女は純粋に演技が酷い。実写の演技は見るも無残。
酷いにも拘らず出番が多く興醒めする瞬間が多かったです。
新鮮な世界観を、非常に出来の悪い話が大いに足を引っ張っている本作。
主演のオダギリジョー、脇を固める夏八木勲、石丸謙二郎、風吹ジュン、青木崇高、佐藤江梨子が良かった分。
酷い役者は悪目立ちした印象を受けました。
あと本作品の前に流れる短編アニメも本当に酷かった。
劇場で誰一人笑っておらず前座の役割も果たしていない作品を垂れ流すのは如何なものか。
周りに誰も止める人がいなかったのか。
いや止める人がいれば、あの糞展開にはならないよな。
と鑑賞後、嫌に納得させられました。
個人的には映画「転々」をこの世界観で再度映画化して欲しいです。
少なくとも近年見たことが無い新鮮な世界観。
話の糞展開は別として。落胆する部分は大きいとは言え。
得るものは多いと思います。
オススメです。