劇場公開日 2015年7月18日

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Mr.タスク : 映画評論・批評

2015年7月14日更新

2015年7月18日より新宿シネマカリテ、シネクイントほかにてロードショー

笑いと恐怖が歪なままに共存する、ケビン・スミスの新境地

ケビン・スミスは、初期の傑作「チェイシング・エイミー」を筆頭に、自閉的なオタクが抱える病理を屈折したダークな笑いで表現できる稀有な才能の持ち主だが、新作「Mr.タスク」ではさらに濃厚なホラー風味が加わった。

ポッドキャストの運営者ウォレス(ジャスティン・ロング)は、取材先のカナダで立ち寄ったバーのトイレの張り紙を読み、興味を覚えて、森の中の屋敷に住む車椅子の老人ハワード(マイケル・パークス)を訪れる。奇想に満ちた回顧談にふける老人は、実は狂気に囚われたシリアル・キラーで、ウォレスを監禁し、両足を切断して、「セイウチ」に改造する外科手術を施そうとする。

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冒頭、延々と果てのないウォレスとテディ(ハーレイ・ジョエル・オスメント)の軽薄きわまりない饒舌には辟易させられるが、舞台がカナダに移るや、一転、画面は「フリークス」から「サイコ」を経て「悪魔のいけにえ」に至るおぞましくも美しい古典的な怪奇ものの断片的なイメージが乱反射し始める。そして恋人アリー(ジェネシス・ロドリゲス)とテディ、酔いどれ探偵ギー・ラポワンテ(奇矯なメイクの某ビッグ・スターが演じている)が加わった追跡劇は、緊迫感あふれるサスペンスとは似て非なるグロテスクな不条理劇の様相を呈するのだ。

誇大妄想狂であるハワード老人と、かつて「クマのプーさん」に涙したイノセンスを持っていたウォレスが、二匹のセイウチと化して対峙するクライマックスは、あらゆるモラルを越えた、畸形的なメランコリーをたたえており強烈な印象を与える。笑いと恐怖が歪なままに共存し、カタルシスとは一切無縁の苦い後味を残す、ケビン・スミスの新境地である。

高崎俊夫

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