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◆渇き。

小松菜奈の魅力が牽引し、日本映画の職人技が満たす「ただものじゃない何か」
  中島哲也は女優を輝かせる監督だ。「下妻物語」が深田恭子、「嫌われ松子の一生」が中谷美紀、「告白」が松たか子の映画だとしたら、本作は小松菜奈の映画だろう。彼女の魔術的な可愛さが「映画の推進力」となって、観ているぼくらは2時間のエログロ話につき合うはめになるのだ。彼女が魅力的でなかったとしたら、説得力は皆無だったろう。そういう意味では、小松の起用で映画は80%成功している。

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  原作は「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した深町秋生のベストセラー・ミステリー小説「果てしなき渇き」。元刑事で今は警備員をしている主人公・藤島昭和(役所広司)が、別れた妻から行方不明になった娘、加奈子(小松菜奈)の捜索を依頼されるという話だ。この男、ギラギラした野獣のようで、タバコをスパスパ喫い、よくギトギトと汗をかく。その新陳代謝に比例するかのごとく次から次へと事件に巻き込まれ、その暴力性を加速させて映画は凶暴になっていく。おびただしい血しぶきが飛び出るのだが、完全に野獣になった主人公は無敵なのだ、もう漫画のように。おそらく来年の演技賞を総なめにしそうな役所の怪演にニンマリしてしまう。目を背けたくなる残虐シーンにはきまって唐突に劇画調アニメが挿入され、暴力性を若干弱めている。

  残り20%はストーリー性のカタルシスが担うべきところなのだが、お世辞にも本作は「後味が良い」とはいえない。肝心の娘探しのストーリーが尻切れトンボのようになっていて、見せるべき帰結が弱く、どうも釈然としないのだ。

  だが、日本映画の現在を見渡したら、撮影(阿藤正一)や編集(小池義幸)は最高水準の技術といえる。この仕事がもたらすリズムはすごくて、「ただものじゃない何か」を観た充足感で満たしてくれる。それだけに、この難しい企画にゴーサインを出した映画会社には、素直に拍手を送りたいのだ。

(佐藤睦雄)


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