蜩ノ記

劇場公開日:

解説

第146回直木賞を受賞した葉室麟の小説を、「雨あがる」「博士の愛した数式」の小泉堯史監督のメガホンで映画化した時代劇。前代未聞の事件を起こした戸田秋谷は、10年後の夏に切腹すること、そしてその日までに藩の歴史である「家譜」を完成させることを命じらる。幽閉されたまま家譜の編纂を続け、切腹の日まであと3年となったある日、城内で刀傷沙汰を起こした藩士の檀野庄三郎が、秋谷の監視役としてやってくる。庄三郎は、秋谷が7年前の事件を家譜にどう記しているかを確認して報告し、また、逃亡するようであれば家族もろとも斬り捨てよとの密命を帯びていた。庄三郎は秋谷のそばで過ごし、その人柄や家族とも触れ合ううちに、秋谷が事件を起こしたことが信じられなくなり、7年前の事件の真相を探り始める。主人公・秋谷役は役所広司。役所とは初共演の岡田准一が庄三郎に扮し、第38回日本アカデミー賞では最優秀助演男優賞を受賞した。

2014年製作/129分/G/日本
配給:東宝
劇場公開日:2014年10月4日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第38回 日本アカデミー賞(2015年)

受賞

優秀助演男優賞 岡田准一

ノミネート

優秀作品賞  
優秀監督賞 小泉堯史
優秀主演男優賞 役所広司
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(C)2014「蜩ノ記」製作委員会

映画レビュー

4.0派手さはないが非の打ち所がない時代劇

2022年3月30日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、試写会

静謐な佇まい、美しい所作なども含め、非の打ちどころがない時代劇である。
派手さはない。されど、きちんと時代劇の脈々と受け継がれてきた系譜を、きちんと踏襲した素晴らしい作品。
原作は、第146回直木賞を受賞した葉室麟の同名小説。
これを、「雨あがる」「博士の愛した数式」の小泉堯史監督のメガホンで映画化したのだから、非の打ち所がないというのも納得できる。
役所広司演じる戸田秋谷は、前代未聞の事件を起こしたことにより、10年後の夏に切腹すること、その日までに藩の歴史である「家譜」を完成させることを命じられ、幽閉生活を送る。
あと3年となったある日、岡田准一扮する庄三郎が監視役としてやってくる。
それにしても、10年後に切腹を義務付けられた男が、どのような心持ちで1日1日を過ごしていくのかを、役所は説得力を帯びた静かな芝居で淡々と見せていく。圧巻としか言いようがない。

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大塚史貴

2.0やっぱり時代劇は分からん

2024年1月1日
PCから投稿
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プライア

3.5自分の為すべきことを見つけた男・家族の物語

2023年4月27日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

悲しい

単純

涙が止まらなかった。
 丁寧に作り込まれた、骨太の作品だと思う。役所さん、原田さん、堀北さん、岡田さん皆素晴らしかった。その中でも個人的には郁太郎と源吉が初々しく子どもらしく一番良い味出していた。岡田さんの殺陣が見事だった。
 試写会後お見送りに立って下さった監督に「すばらしい映画をありがとうございました」と本気でお礼を言った。

だのに、時間が経って複雑な思い・しこりがゴリゴリと…。
 秋谷は自死するわけではない、命を粗末にしているわけではないけれど、死を拝命することを受け入れている姿が、死を賛美しているような気がしてきて…しこりがゴリゴリ…。
  命って何だろう。そんなことを考える。

『明日への遺言』の監督の作品。
 『明日への遺言』も、死刑を覚悟で部下の罪を一身に背負いつつ、敵方がくれた助命のチャンスを蹴飛ばしてでも自分の信義を貫いた男を描いた映画。

この映画の主人公・秋谷と似ている。

自分の命をかけてでも、家族の悲しみ・苦しみまでに目をつぶってまでも、貫きたかったのは…?。自分の美学・生きざま。家族と共に生きる時間よりも、武士としての己を極める方が大事?理不尽な命令だけど、いずれ歴史がわかってくれるよ。その時恥をかかない生き方をしようと。

『明日への遺言』が法廷の中での論戦で、死をも辞さないが、主義を認めてもらって公平な裁判が行われて無罪を勝ち取ろうという可能性ゼロの賭けを仕掛けている主人公・岡田中将を描いているのに対して、
この映画では、秋谷や織江の葛藤はほとんど描かれない。娘・息子・庄三郎他が多少葛藤、行動するが、基本受け入れて耐え忍ぶ。

「一日、一日大切に生き、為すべきことを為す」

秋谷のような状況はなかなかないが、命の限りは誰にもやってくる。
 黒澤監督の『生きる』のような余命宣告。もっと突然やってくる事故・災害etc。そういう意味では我々の命は有限ではないのだ。
 そんな中で日々をどう生きるのかが大切なんだというメッセージを頂いたような気がする。

けれど、あまりにも美しくまとまっていすぎて、命を絶つのを承認しているようにも見える。
あまりにも死を受け入れる姿を美しく描きすぎていて、この映画を受け入れていいものか、心が乱れる。
 「武士道とは死ぬことと見つけたり」ということか。

原作未読。「これまでにない完成度」と浅田次郎氏に評された直木賞受賞作。
 だが、映画では、藩の情勢、主君を巡る陰謀?、如何にして秋谷が嵌められたか等のサスペンス系のネタは、ちらっと見せるだけでほとんど割愛、物語としての盛り上がりはない。
 ひたすら、風景の美しさを織り交ぜながら、家族の有様を淡々と描いていく。というか印象がそれしか残らない。

黒澤監督の後継者のように語られる小泉監督。
 黒澤監督の映画をすべて見たわけではないが、黒澤監督の映画にはもっと、人生・社会のダイナミズムが溢れている。人としての素晴らしさだけでなく、浅ましさ・欲・悲哀・滑稽さが溢れており、そこに強烈に魅了される。
 小泉監督の映画をすべて見たわけではないが、人の・社会のきれいな上澄みだけをすくって映画に映し出しているような。現代のお伽噺を綴っているような。だからか、素晴らしい映画だと思いつつも、後、一味足りないもどかしさが残る。

『明日への遺言』ではわずかな時間の中で決着がついてしまうが、この映画の秋谷と織江は10年の時があった。その中で、最期のお二人のシーンにたどり着いたのだろう。
 お互いのいたわり合い。確かな家族の結びつき、信頼。そんな印象のみが、風景の美しさ、所作の美しさとともに、心に沁みわたり、温かさと、それゆえの切なさが拡がっていく。

☆彡   ☆彡   ☆彡

≪蛇足≫
直訴計画、源吉が拷問死してから家老の元への殴り込みは、1つの見せ場だと思うのだが、凄味がない。緊張感がない。所作は綺麗なんだけど、職員室での教員と生徒の喧嘩、居酒屋の喧嘩のよう。
  ”愛”を中心テーマに据えたこの映画では役所さんが適役なんだろうけど、藤田まことさんか仲代達矢さん、山崎努さんの秋谷が観たかったです。無理だけど(T.T)。

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とみいじょん

3.5美しい日本を観る

2023年3月5日
iPhoneアプリから投稿

良い時代劇を観るといつも思う。
日本の美しい原風景、暮らしの中に根付く節度ある所作、人が心に何を持って生きるべきかなど、自分にとって大切なことに想いを寄せたくなる。
この映画もそうだった。派手なことは何もないけれど、男も女も自分を律して生きていることが、とても美しくみえた。
いい映画だった。

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ニョロ
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