劇場公開日 2015年3月28日

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ジュピター : 映画評論・批評

2015年3月24日更新

2015年3月28日より丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほかにてロードショー

多様なアイデア満載のSFをラブストーリーに帰着させるエロチックなケミストリー

ウォシャウスキー姉弟にとって「マトリックス」シリーズ(99~)以来のオリジナル・ストーリーを謳う本作は、SF映画の枠には収まらない様々な世界観とアイデアを満載して観客の前に提示される。シカゴで家政婦として働くヒロイン、ジュピターの日常は笑いと世知辛さが相半ばするラブコメ・タッチだが、彼女の前に宇宙から飛来した傭兵、ケインが現れて以降は、一転、壮大なファンタジーへとスイッチ。ジュピターが人類の救世主と判明し、宇宙を支配する巨大王朝と対峙(たいじ)する物語の展開部分でも、宇宙基地外では「スター・ウォーズ」張りにスペースシップ同士の空中戦が展開する中、王朝のカテドラルでは「シンデレラ」並みにプリンセスラインのウェディングドレスを着たジュピターが政略結婚へと誘われる、といった具合に。

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アクションシーンの極め付きは、撮影スタッフが“シャドウ・チェイス”と呼ぶ冒頭の約10分間を費やしたケインのジュピター救出劇@シカゴ。ジュピターを小脇に抱えたケインの“反重力ブーツ”が作動し、宙に浮いた2人がビルの谷間をすり抜け、刺客をギリギリでかわしていく場面のグルーブ感は本編中でも白眉と言えるもの。実際にはヘリコプターにスタントダブルが乗り、背景をグリーンスクリーンで処理したスタッフの労作なのだが、ケインを演じるチャニング・テイタムもアクションをスタントの動きと連動させるために、苦手なインラインスケートを特訓して空中遊泳シーンに挑んでいることを、一応付け加えておこう。

俳優陣も多種多彩だ。地球を我が物にするためジュピター抹殺を目論む王朝の実力者、バレム役のエディ・レッドメインは、喉で声を押し殺して欲望と狂気に取り込まれた暴君を怪演。架空のキャラクターを演じるのは自由である反面、実在の人物を彼なりにコピーした「博士と彼女のセオリー」以上の造形力が必要だったはずだ。今回も鍛え上げた上半身をしっかり露出し、寡黙で禁欲的な戦士に扮してフェロモン満開のテイタムと、彼に熱視線を発射しまくるジュピター役のミラ・クニスが演じる、守る側と守られる側のなかなか一線を越えられないエロチックな関係も、実は演技的な味わいどころ。2人が醸し出す際どいケミストリーが、イメージが拡散し続ける映画をラブストーリーに帰結させる繋ぎの役目を果たしている。

清藤秀人

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